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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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プロローグ フェルテの胸中

久しぶりに読み直したかがみの孤城、やっぱり最高。普通に泣いた。皆さんもぜひ手に取ってみてください。

<ヴァイスターク王国第三都市フレーデン領主・フェルテ視点> 



 ゴトゴトと馬車が揺れる。



 街道をイシュタリア侯爵家の家紋がついた豪奢な馬車が4台走っていた。

 豪奢とは言っても金銀ギラギラというわけではなく、常識の範囲内で豪華というわけである。


 だがしかし、豪華なのも当然だ。

 貴族の、それも上級貴族に分類される侯爵家の馬車が質素でいいはずがない。



 貴族社会は『所有物の価値=貴族としての価値』というような世界なのだ。

 侯爵家ともあろう者が貧相な物を使っていたら他の貴族の格好の嘲笑の的となる。


 たかだか馬車の見た目で人間の価値が判断される貴族社会もどうかと思うが、貴族にとっても、そのたかが馬車のせいで自らの弱みを晒すわけにもいかないのだ。



 それが連なりに連なって今の貴族社会がある。



 つまり、他よりもいい物を、他よりも美しく、華やかに……と追求して、それが連なって今の『持ち物の価値=貴族としての価値』の構図を生み出しているのである。


 正直、どの貴族にとっても、調度品で資産が飛んでいく現状には辛いものがあったが、今更辞めることなどできるはずもない。



 結果が今の社会である。



 そんな世の中に対して小さくため息をついた彼ーーフレーデン領主・フェルテはふと、これから起こるであろう騒ぎに思いを馳せ、更に大きなため息と共に頭を抱えた。







 今は既にロルニタ帝国との戦争は終わっており、褒賞を与える式典のためにヴァイスターク王国の王都に馬車を走らせているところだ。

 後ろに連なる3台の馬車に勇者が押し込んである。

 なんとか押し込んだが結構な鮨詰め状態である。


 まあ、当然だろう。

 いくら大きめの馬車を屋敷の倉庫から引っ張り出して使ったとは言っても、20人近くを一箇所に押し込んでいるのだ。


 しかも女性と男性を同じ馬車に一緒に入れるのはあまりよろしくない。

 結果的に女性と男性で分け、更に男性を分けることでなんとか詰め込んだ。

 無慈悲かもしれないが物を押し込むように強引に押し込ませてもらった。

 勿論、押し込んだのは私ではなく私に支持された騎士だが。


 因みにフェルテはというと、一番豪奢な馬車に1人でゆったり占拠している。



 勇者たちは全員『領主だから』という言葉に丸め込まれて、あれよあれよという間に詰め込まれて出荷中だ。

 領主の馬車に乗せてくれ、という言葉は黙殺された。


 だが、適当にやりすぎたのが不味かったのだろう、時々護衛の騎士が馬車を覗くと人数が増減していることがある。

 言わずもがな、優人の仕業だ。


 つくづく嫌な野郎だ。

 鮨詰めにされたからと言ってこんな反抗の仕方はないだろうが。




「まあいいだろう。王都に着いた時に揃っていてくれればそれでいい。今回はそれで我慢しようではないか」


 ポーカーフェイスで自分を落ち着かせて更に腕を組んで他のことについて思案する。


 が、何を考えても難問だらけだ。

 そもそもこの国には問題児が多すぎるのだ。


 しかも上位身分の者にも数人、問題児が存在する。


 本当に頭が痛い。

 国王アルトムートの腹違いの弟ーーつまりは王の義弟という立場でそれなりに身分が高かったため、領主としての仕事があるにも関わらず、仕事が山積みになっている。


 アホみたいな量の仕事があるのに、それを対処できるだけの能力があるのが非常に皮肉だ。

 今回だっていつもの馬鹿みたいな仕事量にプラスアルファで勇者の管理と帝国侵攻の準備を押し付けられた。


 だが、やり遂げた。



 これが秀才、フェルテの大いなる悩みである。



 今日は王との面会の3日前である。

 本来、礼儀としてはもっと早く来るべきなのだが、ここは身分が幸いした。

 それに早く行きすぎたら王に仕事を手伝わされる。


 本当ならもっと遅く……大体2日前くらいの到着が望ましいのだが、勇者がいるのにそうするわけにはいかない。


 勇者がいるということは、彼らの衣食住をどうにかしなければならない。

 おそらく城の客室が与えられるだろうが、自分の目で確認しないとどうにも落ち着かない。


 問題児の王と問題児の優人が万が一鉢合わせたらとんでもないことになる。

 それに、他にも勇者には問題児が多い。



 どこにでも転移して自由奔放に歩き回る優人。

 ローデリアで夜中にこっそり優人に会いに行こうとしていた綾井純恋。

 姉に絶対服従で、姉の行動を知りながら黙認していた綾井遥香。

 ランニングという名目で毎朝城を無断で抜け出している万能問題児の出原。

 召喚初日から規則を破ってスキルで部屋を粉砕したという噂の西田。

 スキルの再演(コピー)という目的で他の勇者を追いかける無自覚ストーカーの宮原。

 それから、優人と同じ転移能力を持っているんだから、どうせ問題児であろう榊。


 最後のは酷いとばっちりである。



 ま、こんな感じにパッと思いつくだけでもこれだけある。

 じっくり考えたらもっと見つかるだろう。


 正に、問題児の魔窟だ。



「何故私の周りにはこんなにも問題児が集まるのだろうな」


 長年の疑問である。

 もしかすると私に問題があるのかもしれない。


 あったところで、だが。



 まあ良い。

 考えても仕方がないことは初めから考えない。

 これに限る。

 私は出された書類をこなすだけだ。



 別に王のことは嫌いではない。

 むしろ好ましいと感じている。


 私程度が賢い領主と呼ばれているのだから彼は当然、賢王だろう。

 私が書類の処理が得意なのと同じように、彼は周りに仕事を振り分ける天才だ。

 彼は仕事を振り分ける天才であるのと同時に、勘がいい。


 どんな窮地でも致命的な過ちを犯さない。

 自身に選択肢が用意されたならば、必ず最善のものを手に取る。


 だからこの国は土地が広いだけの国からここまで成長した。

 当然、彼の力は周りの力に依存する部分がある。

 だが、彼には人を見る目があった。



『賢い王には自然と賢い臣下が集まる』



 この言葉はあながち間違いではない。

 確かに今の王の周りには賢い者が集まっている。


 今のヴァイスタークは間違いなくこの大陸で最も暮らしやすい国と言えよう。



 そんな国を生み出した(義兄上)を敬わないわけがない。

 彼が彼だからこそ私は今日も手を貸す。

 この国の平和の根源は間違いなく彼だ。



 そこまで考えてから、これから久しぶりに会うであろう義兄の顔を思い浮かべてフェルテは小さく微笑を浮かべた。



なろうでなろう以外の小説を推すのもどうかと思ったので、なろう作品のおすすめものせときます。有名どころだと本好きの下剋上で、マイナーなのだと異能学園の最強は平穏に潜むとか好きです。こちらもぜひ読んでみてください。どちらもちゃんと完結するので。

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