2ー91 終結
後々説明しますが、【絶対領域】って結構めんどくさいです。
「純恋、紗夜。ちょっと回復の時間を稼いでほしい」
「いいですよ」「いいよ」
混雑した思考の道が片付き、いくらか取れる選択肢が見えてきた。
何で忘れていたんだろうと思わず自分を殴りたくなる。
「まずは、【日蝕】」
白い世界の中で水が舞っている。水の流れをうまく利用して防いでいるようだが、おそらく長くは続かない。
それまでに手を打つ。
……紗夜はまだ【モノリス】がある。あれがなくなるまで対処はいい。純恋は本当に時間稼ぎだけだ。今も浄化が続いていることを考えると、これ以上の働きは期待できない。ーーいや、してはいけない。やはり、僕が壊すしかない。
それなら、
「……【離界天墻】」
これしかない。
莫大な魔力を消費する絶対防御の補助スキル。
狙うは短期決戦。
「【十字衝】」
星剣、【十字衝】。
その効果は術式の付与。
「付与、【超新星】!!」
本来周囲を破壊し尽くすこの技のエネルギーを剣に与えることでロスエネルギーなしに術式を運用できる。
終わらせてやる。
全部、何もかも。
「ぁあああああああああアアアアアア!!!」
直撃ーーいや、また板かっ!
同時に術式が霧散し、板も壊れる。
恐ろしい勢いで新しい板が組み上がり、新たなぼうぎょじんを敷く。
「いい加減っ!諦めろ!!」
剣が閃き、壁が生まれ、破壊と再構築が繰り返される。
1分、2分と時間だけが過ぎていく。
「あぁぁぁあああああああああああああああああっ!!」
何度も、何度も剣を振るう。
全部、一撃で壊れる。
でもまた再生される。
傍目では硬直しているように見えるかもしれないが、じきにこの均衡も崩れる。
魔力が残り僅かになっているのだ。
紗夜が力を使えば魔力の問題など、どうにでもなる。
でもそれは平時の話。
戦闘慣れしてない紗夜はおそらくもう限界。
純恋も同じく、さっき見た時は脂汗を垂らしていた。
結界と浄化、それぞれの維持のために2人とも相当無理をしてるんだろう。
紗夜が倒れ、結界が消えれば純恋の負担が増えて共に洗脳される。
それが起こらないように頑張ってくれている。
ならば僕は。
「が、あ、あぁぁぁああああああああああああああああっ!!」
全ての力をこの一瞬に。
「ぁぁぁああああああああああアアアアアアアっ!!!」
終わらせる。
もう誰も、悲しませない。
この悲劇はここで終わらせる
あの魔術具が残れば、生き残ったこの国の勇者たちが世に出され、この国は再び魔境と成る。
それはさせない。
もう終わりにしよう。
「うぁぁあああああああああああああああああ"あ"あ"っ!!!」
獣のような咆哮をあげて再び剣を振るう。
今まで剣に付与した術式しか使ってない。
だから剣を振るう前にーー
「【スターズ】」
ーー剣を囮にしたこの攻撃は入る!
六つに光球が板を砕く。
……やっぱりだ。板に強度はない。あの板は……一撃で壊れる代わりにどんな攻撃でも受け止める板だ!
今ある板はゼロ。
発生が早いとは言え、まだ生成できないハズ。
間に合うっ!
そして刃は忌まわしき魔術具を捉える。
ガシャアアン
あっけないほど簡単に、大きなガラス細工を砕いたかのように、簡単に割れた。
「壊れた、のか?」
あっけない。
でも、壊れた瞬間、頭痛が消えた。
間違いなく壊れた。
「終わった……」
「よかった……」「何とか……本当にギリギリになりましたね」
勝った。
僕の勝利だ。
ーーいや、僕らの勝利だ。
たった一文字の違い。
違いはそれだけ。
でもその一文字が大切だった。
じゃあまずいうべきはこの言葉。
「ありがとう。みんな」
第二章も後二話!明日は蒼弥視点です。