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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー87 騎士団の力

「僕が洗脳関連のヤツを片付ける。蒼弥か紗夜どっちかついてきて」 


「紗夜が行くよ。出原くんと九重くんが一緒にいて」 


「わかった」


「いいよ。それじゃあ結界壊すね。我願う 我に破壊の力を与えよ」


 硬質な、ガラスが砕けるような音が一体に響き、それと同時に城壁を飛び越えて空飛ぶ生き物に乗った奴らがわらわらと出てきた。

 エルリアでもフレーデンでも見たから間違いないだろう、騎士団だ。


「俺らが戦う。2人は魔術具のところに行って」


「じゃあ任せた。大丈夫だろうけど、気をつけて」


「さっさと行ってこい。綾井姉の魔力切れで浄化が途切れたら、いくらスキルがあっても俺らが負けるぞ」


「ああ、行ってくる。敵勇者に気をつけろよ」


「頑張る頑張る」


「紗夜、飛ぶよ。【空間転移】」



 視界が歪み、次の瞬間には帝城の大門上空まで移動している。

 重力に任せて落下を始めながら、これからのことについて考える。


「紗夜。このまま最速で城に侵入する。基本的に僕が全部対応するからそこでじっとしていてくれればいい」


「そっ、それはわかったよ。だけど……」


「最速って言っても壊して進むわけじゃないから安心して」


「違っ、そうじゃなくてっ……手伝わなくていいの?きつくない?」


「いいよ。きつくなったら言うことにする」


 そう言ってから背中からイルテンクロムの翼を広げ、紗夜の両腕を掴んで一緒に減速する。



「殺せ!」

「敵が落ちてきたぞ」

「気をつけろ!勇者かもしれんぞ!」

「魔法準備!」

「打てっ!!」



 門の上から火球っぽいものがこちらに向かって一斉掃射される。

 最短距離で一直線に飛来するソレを空気の盾で軽々防ぐと、術式を構築。


「【モノリス】。それから【空間固定】」


 鑑定の魔術具はどこかで無くしたようで、使えない。

 そのため敵の正確なレベルはわからないが、どうせ自分より低いだろうと思って格下にのみ効果がある空間固定を行使する。

 案の定、全員その場で金縛りにあったかのようにガッチリ固定される。


 そこまでは計画通りなのだが、


「抵抗が大きいな」


 想定の2倍くらい、抵抗が大きい。

【空間固定】は対象との彼我の差によって、スキル維持に必要な魔力量が変化する。

 勿論、レベル差が近いほど必要魔力量が増加する。



 幻獣種の僕からすると結構なレベル差があると思っていたので魔力が減る場面として換算してなかったが、この速度で減るんだったら計算し直さないといけない。



 奏は今回は他者(ひと)には浄化できなかったと言った。

 スキルはレベルに伴って出力が上昇するとは言っても目に見えての変化はそれほどない。

 ならば、洗脳の魔術具は相当強力だ。



 強力な魔術具の破壊にはその魔術具が保有する魔力量を大きく超えた魔力を含んだ攻撃が必要だとフェルテは言っていた。

 魔術具を壊す役目を持つ僕はできるだけ魔力を温存する必要がある。



 それなのにこの減り具合。



 このまま出会い頭に縛っていったらいずれ魔力が減りすぎて魔術具を壊せなくなる可能性がある。


「不味いな……」




 この国の騎士団のステータスレベルの平均をフェルテから聞いてない。

 それを僕は、気にする必要がないからだと解釈した。

 エルリア王国の国王が、スキルを持っていない一般の貴族のレベルは低いと言っていたからだ。


「この国が強いのか?……それとも……嘘だったのか?」


 どちらもあり得る。

 あの王ならやりかねない。


 勇者内に反逆者が出た場合、国の本当の実力を明かしておくのは得策ではない。

 既に勇者の過剰召喚という異常事態が起こっているのだ。

 勇者の叛逆という異常事態が続けて起こっても不思議ではない。


 あの王なら大きすぎる戦力の制御のために嘘をつくことくらい簡単にやるだろう。



 仮に召喚時点で勇者を超える戦力を騎士団が持っていたとして、正直にその戦力を伝えてしまうと、勇者がその戦力を超えた時に歯止めになるものが何もない。

 だが、本当は実力があったというのなら、叛逆思想を持っている者にわざと叛逆させて、それをねじ伏せることで未知数の実力を見せつけることができ、残りの勇者への(くさび)とできる。


 ここからは慎重にいこう。

 こんなことなら奏に頼んで念話でも繋げておけばよかった。


「紗夜、気をつけて。想定外が起こってる」



 一言、こちらの顔を心配そうに覗き込んでいる少女に忠告をしてからゆっくりと一歩を踏み出した。



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