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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー83 この変態っ!

 コンコン。


「入っていい?」


 訓練はつつがなく終了して今は夜。

 僕は約束通り小見山の部屋を訪れていた。


「いいよ。入って」


 しっかりと返事を聞いた上で扉を開けた。



 中には当然、小見山の姿がある。


 なぜか満面の笑みを浮かべて壁際にあるソファーから手招きしている。

 それからぽんぽんと隣を叩く。

 横に座れという意味だろう。

 拒む理由も特にないのでそのまま座る。


 いや、女子の隣に座るってだけでも普通は躊躇うのか?

 なんか感覚がおかしくなってきたな。


 全面的に純恋のせいだろう。


 僕は悪くない。




「それで……なんであんなに必死だったんだ?」


 僕が隣に座った時から両手を足で挟んでちょっとだけ俯いている女性を思いやって、できるだけ穏やかに尋ねる。


 しばしの沈黙。

 ちょっと気まずい。


「あ〜……えっと……」

「優人くんって城が落とされた日に紗夜を……誰かを助けた?」


「……え?」


 突然のことで何のことか一瞬わからなかった。


「だからあ、あの日誰かを助けたの?」


「助けた」


 確かに助けた。

 誰かは覚えてないけど確か2、3人。

 それからプラスで純恋と遥香。


「私のこと、助けた?」


「それはどういう意味で……」



 助け忘れてたってことか?

 見つけた人は全員助けたと思うんだけどな。

 見落としてたのか。



「私のこと助けたのってもしかして優人くん?」


 ああなるほど。

 でもあいにく誰を助けたかなんて覚えてないんだよね。


「どんな感じで助けたっけ?僕忘れたみたいで」


「………」


「小見山?」


 何故か押し黙った。

 眼前でひらひら手を振ると漸く意識を戻してくれた。


「いや、その……」


「どうした?言いにくかったら言わなくてもいいけど……」


 そんなに言いにくいような場面で助けたんなら覚えてると思うんだけどな。

 現に姉妹のこと覚えてたし。


「襲われそうになった」


 ポツリと呟いた。


「いや、そりゃあみんな襲われそうになってるだろ。だから助けたんだし」


「違うってば!なんで分かんないのっ!襲われてたの!男の人に!ハイ!察して!」


「ごめん。分からん」


 ピュアで天然記念物な優人である。

 因みに本気で分かってない。


「だからっ……その……えっちなことを……されそうに……ね?」


「なるほど、そういうことか」


「わざと言わせたでしょっ!」


 わざとではなく単にピュアで純粋なだけだ。

 今日、優人の知識に隠語が追加された。

 紗夜のせいである。


「ああ、あの子か」


 これならちゃんと覚えてる。

 結構服がめちゃくちゃにされてて、下着が丸見えだった子だ。

 一番扱いに困った子。




 紗夜は見られてないと思っているが実際はがっつり見られていた。

 それはもうホントに。

 誤魔化す余地もないほどに完璧に。



 まあ、ブチギレ真っ最中だったので一ミリも欲情しなかったが。


 もし意識が正常だったらそれはそれで大変だっただろう。



 だが優人は馬鹿ではない。

 わざわざ下着の件は口に出さない。



「下着見えてたんですか!?ふぇ!?えええええええええええええええぇぇぇ!?」


 あれ?

 間違って口に出しちゃってたのか。

 やっちまった。

 失敗だ。


「いや、冗談だ。でもちゃんと覚えてる。ありがとうって言ってくれたのも小見山さんだよな」


 本当はこれを言うつもりだったのに。

 妙なことを口走ったせいで変な空気になったじゃないか。



「どう見ても冗談じゃなかった。紗夜怒ってるからね?



 一人称が『紗夜』だからか、全然怖くない。

 寧ろ小動物的な可愛らしさがある。



 だからこそちょっと反応が気になった。


「それから、これも覚えてる。水色だったよな」


 何を、と言わなくてもちゃんと伝わる。


「あっ、あっ……ああぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!」


 ほらちゃんと伝わった。

 以心伝心だね。



 だが、このままにしておくのも忍びない。

 それに、誤解されたいわけではない。


「大丈夫だ。誰にも言ってない。だからそんなに落ち込むなよ」


 勿論わざとだ。

 こんなことを言って慰めにならないことくらいわかってる。


「もう知らないっ!!すぐに忘れてっ!!!」


 そんな上目遣いをしながら怒っても効果ないぞ。

 それに、あの時の格好よりも今の格好の方が扇情的って分かってんのか?




 今の小見山は風呂上がりなようで、藤色の薄いワンピース型の寝巻きを着ている。

 まあ、布が薄いと言っても涼しそうってくらいで肌が透けて見えているわけではないので健全な衣服ではあるのだが、サイズが若干違うのか、襟元から二つの膨らみが見えそうだった。


 頬がほんのりと紅く更に、髪がしっとりと濡れていることも大人の女性っぽさを醸し出している。


 さてどうしよう。

 言ってあげる方が親切か、知らないフリをしている方が親切か。


「どこ見てるのっ!」


 あーあ。

 やっちゃった。

 バレちゃった。

 がっつり見てたのバレちゃった。


「見たよね」


 何を?なんて聞かなくても分かる。

 だが敢えて、


「何を?」


 敢えて聞く。


「分かってるでしょ。正直に言ったら今日は一緒に寝てあげる」



 こいつ妙なの呪いでも受けたか?

 どいつ(純恋)こいつ(小見山)もなんで添い寝したがるんだ。



「それで、なんで僕が小見山を助けたことが今日のことに繋がるんだ?」


「誤魔化したよね」


「何のことだかさっぱりです」


「そんなに紗夜って魅力ないの?女の子が一緒に寝よって言ったら男の子は応えないといけないんだよ?」


「そんなルールは知らんな。それから、魅力比べなら純恋としてこい」


「魅力なら純恋ちゃんにも負けてないよ」


「それはどうだか」


 いつまで立っても本題に入れなかった。




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