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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第一章 ようこそ、異世界へ
10/266

1ー9 懸念

 刀をひとしきり調べた優人は一旦それをマジックバックにしまい、ステータスボードを開いた。

 レベルアップの確認のためだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 《ステータス》

【梶原優人】


 種族 原獣種


 LV314


 HP:2826

 MP:11304

 攻撃:2198

 防御:2512

 体力:3454

 速度:1884

 知力:169

 精神:2326

 幸運:29




 スキル……進化【天候】


 称号

 星神の加護 狂戦士


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「かなりレベルアップしてるな……格上と戦えばそれだけレベルアップも早いのか……?」


 朝の時点では250レベル程度だったはず。

 仮に勇者としての補正がかかっているとしても、いきなり50レベルアップはインフレのしすぎだと思う。


 聞いた話だと999レベルで原獣種が真獣種に格上げされるはず。

 この様子だとあっという間に最上位の神獣種になれてしまいそうだが、その辺りはどうなっているのだろうか。


 疑問を抱きながらもステータスボードを軽くタッチし、次々と詳細を確認していく。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 星神の加護


 星神から加護を得た証

 魔力量成長率上昇

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 狂戦士


 自分より獣種1つ以上格上の者と何度も戦闘を行った者に与えられる称号

 HPが低下すると攻撃のステータス値が上昇する。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 読み終えて、優人は一つ頷いた。


 読んでみた限りだと、どちらも使えそうな称号だ。


 称号が能力を持っているのに違和感があるが、そういうものだと理解した。

 浮かぶ疑問全てに答えを求めても、疑問が多すぎて答えが追いつかないのだから。




 そろそろボードを閉じようかと思った時、ふとスキル欄が目に入った。


「スキル【天候】。……あれ、僕のスキルって【天候操作】じゃなかったっけ……?」


 詳細を確認すると、確かにスキルが変化しており、能力が強化されていた。


「天候の操作に加えて、自然現象の一部の操作が可能……なるほど、操作が加わったか」


【天候操作】は天候を変えるのみだったはず。

 雨天時なら水を操れるといった能力のようだが、どの程度まで操作できるかは要検討だな。


 そう考えながら顎に手を添え、数日前の記憶を探る。

 そして、結局詳細鑑定の結果を見せてもらえなかったことを思いだし、これなら詳細鑑定の結果見せて貰えばよかった、と僅かに肩を落とした。


「だけど、進化条件を満たすごとにサブスキルの格が上がるって書いてあったから、【天候操作】がサブスキルで、さっきの戦いで【天候】に格上げされたってことか?」


 疑問を解消すべく、素知らぬ顔で側にあったコップを手に取り、水を出そうと手のひらに魔力を込めた。


 しかし、予想に反して何も起きない。


 すぐにその理由に辿り着き、優人は意識を窓の外へ向けた。


「【天候操作】」


 そう呟いた瞬間、外の景色が暗く澱んだ。

 遠くで雷鳴が轟き、晴れていた空が急速に分厚い雲に覆われた。

 そしてパラパラと雨粒が落ち、数秒後には豪雨となった。


 窓ガラスを叩く雨音を聞きながら、優人は視線をコップに戻した。

 そして再び水を出そうと魔力を込めると、今度はあっという間にコップが水で満たされた。


 ……すごいな……本当に天気と水を操作できてる……!


 ここではできないが、練習を積めば風で敵を飛ばしたりウォーターカッターの要領で攻撃することもできそうだ。


「いいじゃないか。これで戦闘にスキルが使える」


 訓練で威力や細かい使い方を調整しなければ実戦には使えないだろうが、手札が増えたのは単純に嬉しい。

 自然現象という系統も、なかなか良さげだ。


 優人は今度こそステータスボードを閉じて、立ち上がる。

 いつのまにか鈍い痛みは消えていた。


「さて……明日からが楽しみだ」




 ***




 さらに数日が経った。

 過酷な訓練は毎日続き、優人はジェラルドから刀の取り扱いを学ぶようになっていた。

 一人だけ刀を使う優人を羨む勇者は何人かいた。

 しかし優人は誰よりも訓練を重ねることで反論をねじ伏せた。


 そして時間の経過と共に、新たな称号も加わった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 不屈の精神


 何度も同じ相手に敗北しても勝利を諦めない者に与えられる称号

 HPが低下すると防御ステータスが上昇

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 だが、優人が興味を向けたのは称号ではなかった。


 「やっぱりMPの成長速度がやばいな。一つだけ大きさ違う。大体1.5倍か?」


 称号・星神の加護の影響によってMP、つまり魔力量は他と比べ物にならない速度で増加しており、この数日間の訓練で4万近い値にまで成長していた。

 サブスキルが変化し、【天候】を積極的に戦闘利用をしたい優人にとって、魔力量の増加の恩恵は大きく、より大規模かつ連続的なスキルの使用が可能になっていた。


「それに、レベル自体の上昇速度も異常だな。5日あれば種族が変わるぞ」


 初の訓練日の時に300レベル台だったはずが、数日で700レベルまで達している。

 王女の言葉通りなら999レベルからさらにレベルアップすると真獣種にランクアップして、レベルが1にリセットされるはず。


 この異常なレベルアップは少し気になったので、一度、これが普通なのかジェラルドに聞いた。

 彼によると、この世界の住人は生まれた時がレベル1で、原獣種ははいはいでもレベルアップするらしい。

 しかし勇者の場合は召喚時点がレベル1で、召喚直後から厳しい訓練をしているのでこうなるのは当然とのこと。

 一般人が大体真獣種で一生を終え、魔獣を狩って生計を立てる冒険者や、勇者は真獣種のさらに上のランクに当たる幻獣種まで至るのが普通なようだ。

 

 ステータスの確認を終えて優人はボードを閉じ、柔らかいパンを頬張った。

 たまに奇妙な食事が出てくるが、味は地球と変わりなく、食事の味で苦労することはなさそうだ。


 その時、扉が勢いよく開き、騎士を伴ったジェラルドがズンズンと食堂に入ってきた。


「お前ら、明日からは迷宮探索だ!訓練で言ったもの、ちゃんと準備しとけよ!」


 これだけ言ってジェラルドは踵を返した。

 最低限のことしか言わない相変わらずの性格に優人は顔を顰めた。


「おぉおおおおお!やっと実戦か!もうだりぃルールなんて気にせずスキル使えるんだろ?最高じゃねえかよ!!」


 そう言って西田が勢いよく立ち上がった。

 その衝撃で机が揺れ、橙色のスープが飛び散る。

 数滴が優人の袖に付着し、シミを作る。


 ……机を叩くな。スープを散らすな。汚いだろうが。


 優人は無言で袖を拭いながら、冷ややかな視線を西田に向けた。


 ……それからコイツはなんで自由にスキルを使えると思った?こいつは馬鹿か。


 瞳をキラキラさせる西田と対照的に、優人は苛立ちを抑えるようにこめかみを抑えた。



「でもさぁ、迷宮って魔物とかいるんでしょ?危なくない?私だけ残ってちゃダメかな?」

「そうそう。男子だけで行ってきたら?」

「いや、普通にダメだろ。自己中かよ」

「なんで私たちが戦わないといけないのよ……! 斬ったり殺したりなんて無理に決まってるじゃん! 男子だけで戦えばいいじゃん!」


 最近気になっていたことだが、少し勇者内で亀裂を感じる。

 だからと言って優人に自分からどうにかしようと動く気はないが、後々面倒なことになりそうだと考えていた。

 優人は、この状況をなんとか出来そうな蓮斗を見るが、蓮斗は苦笑いを浮かべて肩をすくめた。

 中に入りたくないんだという蓮斗の気持ちを察して、優人は再び食事に手をつける。


 ……貴族連中と直接話してないみんなは感じてないようだけど、この世界、少なくともこの国の貴族は甘くない。僕は全員強くなるべきだと思うな。


 召喚直後の火柱や、あの尋問を見る限り、この世界は殺しが珍しいことではなく、犯罪もかなり起こっているはずだ。

 嫌でも最低限身を守れる力は身につけなければ、いつか死ぬかもしれない。

 勇者だからと国が守ってくれるとは思わない方がいい。


 その時、肩に小さな衝撃を感じ、隣を見る。

 隣にいた蓮斗が指差す方を見ると、いつの間にか皿からパンもスープもなくなっていた。

 どうやら考えている間に無意識に全部飲んでしまったらしい。


 ……とはいえ、まだなんとかなるか。


 優人は再び視線を口論をしているクラスメイトに向けた。

 ちょうど、二つの人影が口論の場に向かっているところだった。


「そろそろやめてください。勇者同士で争ってどうすんですか。明日は迷宮に行くのは決定なんですから、せめて明日に影響がない程度に収めてください」

「そうですよ。みんなで仲良くしましょう?危ない世界なんだからみんなで力を合わせないと。私たちは勇者なんだからきっと生き残れます!」


 学級委員長の宮原拓人(みやはらたくと)と、クラスのアイドルとされる綾井純恋(あやいすみれ)


「やっぱり姉さんはすごいよ。みんな姉さんの言葉で落ち着いた」


 純恋の背後に忍び寄り、その耳元で甘えるように囁く影があった。


「やっぱり姉さんは私たちのリーダーだね」


 はにかんだ笑みを浮かべるその少女は、彼女の双子の妹、綾井遥香(あやいはるか)だ。

 

 ……この3人がいれば、もうしばらく問題は大きくならないか。


 懸念が杞憂に終わって欲しい。

 優人はそう願った。


次回【平和の在処】

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