夏の風物詩『霊感テスト』
初めての短編ホラーです。
「「「カンパーイ!!」」」
ようやく20歳になった夏休み、私は大学の友人達と5人で宅飲みをしていた。
「アヤちゃん、誕生日おめでとう! これ、私からプレゼント!」
「わ! ありがとう、ミホ。嬉しい! あけてみてもいい?」
つい数日前に誕生日を迎えた私のために、親友のミホが誕生日プレゼントを用意してくれたらしい。
ミホが「いいよ、あけてあけて」と言ってくれたので開けると、
「あれ? これって……ミホと同じピアス?」
「そう、お揃いだよ?」
箱の中には、ミホが髪をかき上げて見せたものと同じシルバーのピアスだった。
私は内心「またか」と思いつつも、
「ありがとう! 大事にするね!」
「ふふ、どういたしまして」
笑顔でお礼を言ったけど、もう、これで3回目だ。
――正直、うんざりなんだよね……。
大学に入った頃、ミホと仲良くなってショピングモールでお揃いのキーホルダーを買ったのがきっかけだった。
その後、プレゼントは決まってお揃いのものにされたけど、私はそういうのが苦手だった。
なんだか強制されてるような、ただ私がそういう性格なだけなんだけど、ミホも悪気があるわけじゃないから指摘はしてこなかった。
「えー、いいなー。てか、ごめんねー。私なんにも用意してなかったよー」
「なになに、アヤちゃん誕生日だったの? 言ってよー、俺だっておもしろグッズ用意したのに」
そういえば、同期のユリとダイチくんには誕生日を言ったことなかったかもしれない。
私は2人に「気にしないで」と伝えた。
「俺は用意したよ」
横を向くと、ユウヤくんが小さな袋を持っていた。
「え、ほんと?」
「うん、あげる」
小さな袋を受け取り、
「……あけてみていい?」
「うん」
中には香水が入ってた。
「え! これ今超人気のブランドじゃん! どうしたの!?」
ユリが身を乗り出してユウヤくんに聞いた。
「あー、うちの姉貴がショップの店員でさ、無理言って1つ譲ってもらったんだよ」
「え、大丈夫なの? 後で怒られたりしない?」
「一応、店長の許可は取ってもらってるから大丈夫だよ。それに、アヤめっちゃ欲しがってたろ?」
――覚えててくれた!
何気ない会話の話題の1つだったのに、ユウヤくんは忘れないでいてくれた。
もちろん私の誕生日も。
それが私にはすごく嬉しかった。
「うん……ありがとう。大事に使うね」
「ん、どういたしまして」
――やった!
私は、ユウヤくんから貰った誕生日プレゼントを大事にバッグにしまい、初めてのお酒を口にした。
「あ、意外とおいしい!」
「だろー? アヤちゃん、もしかしたら結構酒豪になるんじゃね?」
「あはは、そんなことないよー!」
「ちょっとー、お酒デビューしたばっなの子に、あんま飲ませないでよー」
これまでは律儀に年齢制限を守っていたので、飲み会でもいつも私だけジュースだった。
今日はそんな制限もないし、味も意外とイケるということがわかったので、潰れないようにだけ気をつけて飲もうと決めた。
大学の話やバイトの話、恋バナから最近あったことまで一通り話し尽くした辺りで、
「なあ、そういえばアレ知ってる?」
ダイチくんが少し声のトーンを落として、みんなに問いかけた。
「アレってなんだよ」
「そーそー、アレだけじゃわかんないよー」
「アレだよアレ、『霊感テスト』ってのだよ」
一瞬静かになり、
「……お前そんなの信じてんのかよ」
「ほんとだよー。そういうのってさー、だいたい迷信だからねー」
すぐに、ユウヤくんとユリに否定された。
私もそういった経験は今までないので、霊感なんてものはないと思う。
いや、むしろあってほしくない。
霊感があるということは、幽霊が見えるということなので、ホラーが得意じゃない私にとってはないほうが幸せだ。
「別にいいだろ、暇つぶしなんだし。ねえねえ、アヤちゃんはどう思う?」
「んー、霊感テストはやったことないけど、私にはないと思うなぁ。ミホはどう?」
「え? えーと、私もアヤちゃんと一緒……かなぁ」
ミホが私の顔をちらりと見た。
「えーなんだよー。とりあえず、1回みんなでやってみようぜ!」
「そんなにやりたきゃお前からやってみろよ」
「そーだそーだ、ダイチからやってみろー」
「はー、わかったよ。でも、次はお前達もだからな!」
ユウヤくんとユリに煽られたダイチくんが1番手でやることになった。
というか、この流れじゃわたしもやることにならない?
正直、勘弁して欲しいけど、空気悪くするほうが嫌なのでやらざるをえないなと覚悟を決めた。
「よーし、んじゃ、やり方を説明するぞ。まず、本番は最初から目をつぶって今から言うことをやるぞ」
ダイチくんが聞いた『霊感テスト』の方法を説明し始めた。
1.自分の家の玄関を思い浮かべ玄関の前に立つ。
2.家に入り、順番に家の窓を1つずつ開けていく。
3.1番奥まで行き、窓を開け終わったら玄関に戻る。
4.同じように、今度は窓を全部閉めていく。
5.3と同様に奥まで閉めたら、玄関に戻ってくる。
「んで、その途中に誰かと会ったり廊下ですれ違ったり、気配だけでも感じたら霊感があるってことらしいぜ」
「あー、なんか俺それ聞いたことあるかも。ちょっとやり方違った気もするけど」
「まあ、結構有名らしいし、いろんなやり方があるらしいな。ま、とりあえず、これでやってみようぜ!」
「はいはい、ダイチからねー」
私も似たようなものを聞いたことはあったけど、当然、そんなものをやったことはない。
「んじゃ、俺から逆時計回りで順番な」
「えー、次、私じゃんかー」
「早いか遅いかの違いだから別にいいだろー」
えーと、ユリの後がミホで私は4番目か……それで、ユウヤくんが最後ね。
「よーし、んじゃ始めるぞ……ふぅー……」
ダイチくんは息を整え、目を閉じた。
喋りながらやるものではないので、さっきまでの笑い声が嘘のような静けさになる。
もう、少し遅い時間なので外も静かだ。
どれくらい時間かかるんだろう、ダイチくんを見ながらそんなことを考えていると1分もしないうちに、
「お」
「え、なにかいたの?」
私がそう聞くと、ダイチくんは目を開けて「なんもなかったわ」と笑った。
「早くね?」
「いやだって、俺が今住んでるとこワンルームだし」
「……なんだよそれ。ひとり暮らしのほうが有利じゃん」
ユウヤくんが愚痴る。
そういえば、ユウヤくん以外はみんな地方出身だから、ひとり暮らしをしている。
私もユリもワンルームだし、ミホは1部屋多い1LDKだけど大差ないだろうし。
たしかに実家から大学に通ってるユウヤくんは、部屋数も多いだろうし大変な気がする。
「まー、それはしょうかないって。ルールでは、今住んでるとこが対象らしいし」
「あーそっかー。ユウヤは実家だっけー?」
「そうだよ。まあ、俺昔からそういうの全然感じたことないし、なんもないだろうけど」
「私も霊感ないし、きっと大丈夫だよ、ユウヤくん」
「うん、ありがとう」
ユウヤくんがそう言って微笑んでくれた。
私も微笑み返す。
「よーし、そんじゃ次は……ユリ!」
「いや、そんな溜めなくてもわかってるしー。まあ、どうせ私もワンルームだからすぐでしょー」
ユリはそう言うとさっさと目を閉じた。
「んー……玄関開けてー……窓を……」
「ユリ、声出ちゃってるし……」
どうやら、ユリはダイチくんが言ってた手順を声に出して確認しながらやってるみたいだ。
「……で、玄関に戻ってー……はい、終わりー」
「ユリ、全部声出てたよ。どうだった?」
ユリのなんでもない表情から、たぶん問題なかったんだろうなと思いつつ私が聞くと、
「なーんにも。やり方思い出すほうに集中しちゃって、気にする余裕もなかったー」
なんともユリらしい結果だ。
なんだったら、霊感があったとしても気にしなそうな性格だし、私もあれくらい度胸があればなと思う。
――いや、度胸とはちょっと違うかな?
「なんだ、ユリも俺と同じで霊感なしかよ。じゃあ次は……ミホ!」
「だから溜めなくていーしー」
「う、うん、わかった」
ミホはビクビクした様子で頷いた。
私と一緒で、この子もホラー系は苦手なはずだ。
本当はやりたくないだろうけど、
「それじゃあ……やってみるね」
ミホが目をつぶった――と思ったら、
「あっ」
「「え?」」
何か思い出したかのように目をすぐ開けたミホに、ユウヤくんと私の声が被った。
「な、なにか……いた……の?」
恐る恐る私が問いかけると、
「あ、ううん。手、繋いで欲しいなって……」
「え、手?」
「うん……ちょっとは怖くなくなるかなって」
ミホはそう言うと手を差し出した。
私は「いいけど……」と手を繋ぐ。
「ありがとう、アヤちゃん!」
「ううん、私の時もそうしてて」
「うん!」
ミホは笑顔で返事した。
まあ、私もちょっと怖いし、手を繋いでいたほうが気が紛れるかもしれない。
「びっくりしたー、いきなりなんかいたのかと思ったわ。ミホちゃん演出うますぎでしょ!」
「そ、そんなんじゃないよ! 私はただ、怖かっただけで……」
「はいはい。まー、もう1回いってみよー」
「う、うん」
ミホが再び目をつぶる。
今度はルール通りちゃんとやってるのか、目は開けなかった。
ミホもひとり暮らしをしているけど、私よりも1部屋多い1LDKだ。
今までよりは時間かかるかもしれない。
それに、部屋数が多い分、なにかいる可能性も上がるのかな……そうなると、ちょっとユウヤくんか心配だなぁ。
私が横目でちらりとユウヤくんを見ると、
「――!」
――目が合っちゃった……! しかも、微笑みかけてくれた!!
今、私は確信した。
私はユウヤくんのことが好きなんだ。
頑張ってるミホには悪いけど、霊感テストの結果よりも大事なものに気づけた。
私は、ユウヤくんに微笑み返した。
「――ん、終わったよ」
「ミホ、お疲れー」
「その感じだと、なんもない感じ?」
ダイチくんがミホに尋ねる。
「うん、全然」
「全然かー。なんか意外とないもんなんだな。んじゃ次は――」
「アヤねー」
「おい!」
「それ別におもしろくないしー。どうせ何もなさそうだし、さっさと終わらせて別のことしよー」
「お前な……まあ、いいや。んじゃ、次はアヤちゃんね」
ユリに名前を呼ばれて、心臓がトクンと跳ねた。
さっきユウヤくんと目が合った時の胸の高鳴りとは、まったく別物だ。
ユリは何も起きないことに飽きちゃったようで、またお酒を飲み始めた。
「頑張ってね、アヤちゃん」
「うん、ありがと」
「てかさー」
「ん?」
ふいにキョロキョロと部屋の中を見回したユリは、
「もし、アヤが違和感とかあったらさ――今、ここになにかあるってことー?」
「ぁ――」
さっきまでの浮かれた気分が一気に醒めた。
今日の飲み会は私の家なんだから、当然、ユリの言うとおりだ。
想像してしまったせいで背筋がゾクリとし、ミホと繋いだ手を無意識に強めた。
「アヤちゃん……」
「大丈夫だって。どうせ、アヤもコイツらと同じでなんもないって。だって、今、俺は何にも感じないし。だから、気楽にやればいいよ。てか、なんならもう終わりにしようぜ」
「ユウヤくん……」
ユウヤくんが助け舟を出してくれるけど、
「ううん、せっかくみんなやってるし……頑張ってみるね。ありがとう」
その優しさで勇気も出たし、今のこの幸せな気分なら向かうところ敵なしだ。
「無理するなよ」
「うん!」
私は目を閉じて、まずはこの部屋の前の玄関を思い浮かべた。
特に何も感じないけど……怖いからさっさと終わらせちゃおう。
――まずは、玄関を開けて……。
私の家もワンルームなので、玄関を入って真っすぐ行けば1部屋あるだけの単純な部屋だ。
入って右手にキッチン、左手にトイレとバスルームが分かれている。
どちらも窓はない。
真っすぐ歩くイメージで奥の部屋に入る。
……うん、変な感じはないね。大丈夫。
私はそのまま正面にある、ベランダに繋がる窓を開けた。
この家にある窓はこれだけ、両隣に挟まれた部屋だから他に窓はない。
そのまま玄関まで戻り、今度は窓を閉めに行くためまた奥の部屋に行き、さっき開けたばかりの窓を閉めた。
……ふぅ、良かった。早く玄関まで行っておしま――。
――ゾワリ。
振り返った瞬間、視界には入らない場所から何かを感じた。
何かはわからない。
でも、たしかに何かがいると感じた。
――怖い怖い怖い!
動機が早くなる。
目を開ければそれで終われるのに、なぜかそんな気にならない。
何かが気になってしかたない。
私は心の中で深呼吸をし、ゆっくりと何かを感じた場所を見た。
――え……。
そこには、何もなかった。
ただ、棚があって小物が置いてあるだけだ。
写真立てや小物入れ、ぬいぐるみに本など、至って普通のものだ。
それに、さっきまであった何かの雰囲気も今はもう消えてる。
――なんだったんだろう……わかんないけど、早く終わらせよう。
私は玄関まで急いで移動する。
その間に変なことはなにもなかった。
「ふぅ……」
「アヤちゃ――」
「アヤ、大丈夫か!?」
「へ?」
私が目を開けると、ユウヤくんが心配そうな顔でそう言った。
「アヤちゃんが苦しそうだったから声かけたのに、返事がなかったんだよ。心配したぜー」
「そーそー。もしかして、何かあったのー?」
全然気付かなかった。
集中してたせいかな……みんな心配そうにしてる。
「あ、うん、ちょっとだけね……」
「アヤちゃん、何があったの?」
私の手を繋いだままのミホが聞いてくる。
「よくわかんないんだけどね、そこの窓を開けて玄関に戻って、また窓を閉めてね。あとは玄関に戻って終わりって思って振り返ったら……なにか変な感じがしたの」
「変な感じ?」
ユウヤくんが首を傾げた。
「うん……なんていうか、ゾワゾワって……。でね、頑張ってそっちの方を見たんだけど――」
私が棚に視線を移すと、全員がそっちを見た。
「ただの棚……だよなぁ?」
「うん、ダイチくんの言う通り、これとなんにも変わらなかったよ。振り返った時にあった変な感じは、もうすっかりその時にはなくなってたの。だからそのまま玄関まで戻って……」
「今に至るってことか」
私はユウヤくんに「うん」と返事した。
「んー、なんかあるー? 別に変なものないと思うけどなー」
ユリは棚に近付いて、
「あれー? これってミホの家にもあるやつー?」
ぬいぐるみを手に取った。
「あ、そうだよ。お揃いで私がプレゼントしたの」
「へー、あんたらほんと仲いいねー」
ユリは、ぬいぐるみをムニムニと変な顔にしたりして遊んでいる。
「まあ、ただの勘違いだったんじゃないか? 今も何も感じないし、きっと大丈夫だよ」
「うん、ありがとうユウヤくん」
「そーそー、そんじゃ最後はユウヤな! 大トリ期待してるぜー?」
「うっせー、どうせなんもねーよ。あー、てか俺1人だけ実家とか、いったいいくつ窓あるんだよ……」
ユウヤくんがうんざりしたようにため息をついた。
「頑張ってね、ユウヤくん」
「おう、サンキュ」
「ユウヤ、ちゃんとやんなよー。やったふりとかズルしちゃダメだぞー」
「わかってるっつーの」
ユウヤくんはゆっくりと目を閉じた。
家に遊びに行ったことはないけど、普通の家ならけっこう窓の数は多いはずだ。
全員、ユウヤくんが終わるのを静かに待った。
しばらくそんな時間が続くと――、
「ん」
ユウヤくんの声が漏れた。
それは、何かに気付いたみたいな反応だ。
「……なんだ?」
ユウヤくんが小さな声で呟いだ。
「おいおい……マジでなんかあったのか? それともドッキリか?」
ダイチくんがユウヤくんのそんな様子を見て言った。
笑ってはいたけど、明らかに強張った表情だ。
「ユウヤはそういうのしないタイプだと思うけどなー」
私もユリの意見に賛成だ。
今まで、ユウヤくんがそういう悪ノリみたいなことしてるの見たことがない。
私がちょっと心配になってくると、
「ぇ……え? は? なんで……」
ユウヤくんはなにかに戸惑い、息遣いが荒くなったいく。
額に汗もかいている。
「ねぇ、もういいよね? 終わろ?」
私はみんなに確認するように聞いた。
「お、おう、そうだな。おい、ユウヤ、もう終わっていいぞ」
ダイチくんがそう言っても、
「――く、来るな! なんでお前そんなの持って……!」
声が大きくなっていく。
きっと私のときと同じで、外の声が聞こえてないのかもしれない。
私はユウヤくんの肩を揺すって、
「ユウヤくん! もう終わりだよ! 目を開けていいんだよ!」
と、呼び掛けた。
「――はっ」
「ユウヤくん! 大丈夫!?」
ようやく目を開けたユウヤくんは、まるで全力疾走したかのように汗びっしょりで、息を切らしていた。
「ハァ……ハァ……ごめん、もう大丈夫」
「どうしたの? なにか……あったの?」
私が恐る恐る聞くと、
「いや……うちってさ、昔の家でけっこう横にでかいんだけどさ、1本の廊下でそれぞれの部屋と繋がってるんだよ」
ユウヤくんは自分を落ち着かせるように、ゆっくりと説明してくれた。
「それでさ、1番奥の部屋の窓を閉めたから、その廊下で玄関まで戻ろうとしたら……」
「し、したらなんだよ?」
ダイチくんが震えた声で問いかけた。
「後ろにさ……その、いたんだよ」
「だから何がだよっ」
「ダ、ダイチくん」
「ちょっとダイチうるさいー」
「わ、悪りぃ……」
ダイチくん、けっこう怖がりなのかな……なんでこんなの提案したんだろ?
私はちょっと疑問に思いつつ、ユウヤくんが再び口を開くのを待った。
「あー、いやさ、笑わないでくれよ? 悪気があるわけじゃないからな?」
そう言って、ユウヤくんは――、
「その、ミホがいたんだよ……包丁持って、さ」
ミホに視線を向けた。
「――へ? え、私? なんで?」
一斉に集まる視線に、ミホが戸惑いをあらわにする。
「いや、それはわかんないんだけどさ……とにかく、ミホがその包丁を持って追っかけてきてさ。またその時のな……ミホの表情が笑ってるんだけど、状況が状況なだけに怖くてさ……」
ユウヤくんはその時のことを思い出したのか、ぶるっと身震いした。
そうとう怖かったんだろうなぁ、でも……、
「ひどいよー! 私そんなことしないもん……」
「だからごめんって!」
ミホは、ショックを受けた顔でユウヤくんを非難した。
たしかに、これはユウヤくんが悪いと思う。
勝手に頭の中に登場させて、しかもそれが恐ろしい相手だなんて……もう!
「ユウヤくん」
「え、なに?」
「なにじゃないよ。女の子にそんなこと言っちゃだめでしょ!」
「いや、俺はあったことを言っただけで……」
「それでも! もうちょっとオブラートに包んで伝えてくれなきゃ」
「う……すまん……」
「そうだぞー、ユウヤにはデリカシーがないぞー」
「そうだそうだ、もっと言ってやれ! 女心がわかってないぞこいつは! そんなんだから彼女できないんだぞ!」
「う、うるせー! それは余計だ!」
その場が明るい笑顔に包まれる。
なんだかんだ、最後には笑って終われたし、意外とこの『霊感テスト』を満喫できたかもしれ――
「――なんだ、このゲーム当たるじゃん」
ゾワリ。
みんなはまだ笑ってる。
私がそっと声のほうを見ると――、
あ
目が合った。
ミホはニタリと笑った。
あのぬいぐるみ、早く捨てなきゃ。
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