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それは流石に気が付く。

聖女とは。創造神であり、人を慈しむ女神・アルヘイラの愛娘である。比類無き浄化の力を持って世界に平和を齎し、弱きを助くる心優しき少女である。清廉であり貞淑。慈悲深くまた愛情深い。世界に混沌が蔓延るとき、女神アルヘイラによって遣わされ、それを治める存在である。


さて、女神アルヘイラはこの世界における唯一の神であるが、大陸にある5つの国によって、その様相を変える。例えば、豊穣と繁栄を司り。或いは、美と愛を歌い。はたまた、勝利と栄光を約束し。癒やし、施し、安寧を見守る。


それら女神たる奇跡はつきること無く語り継がれ、寝物語に伝説に、生まれ落ちて露と消えた後も共にある。敬虔なる信者達は、教会に身を置き、女神を讃え、祈りを献げ、教えを説き、その身を少しでも女神の側に置けるようにと、励むのだ。


「聖女様が現れた?」


「まさか、本当か。」


「なんということでしょう。この命ある今、女神様の愛娘にお会いできるとは…っ!」


「ああ、創造神アルヘイラ様、感謝致します。」


その日、教会本部は蜂の巣を突いたような大騒ぎだった。大陸一の精度を誇る鑑定力を持ち、民衆から絶大な支持を持つ青の教皇、ウォンカ・ペルトス様が聖女様を発見なさったとの一報が齎されたからだ。


すぐさま魔道士達により各国の教皇が集められ、会談の席が設けられた。


「女神アルヘイラ様に誓い、嘘偽り無く発言するように。」


赤の教皇、ミトラ・ミストラ様の言葉に、ウォンカ様は三日月の卓に座る四人の教皇様方を眺め、揚々と頷いてみせる。


「先日、小国ライハの王より、『いと尊き方の鑑定を頼みたい。』との手紙を受け取り、参上いたした。」


「ライハ…。あの国は最近代替わりしたばかりでは?」


「ええ、確か。」


「うむ。神官二名を供に向かった所、ライハの若き国王は『聖女召喚』を行っておった。」


「なんと…!?『聖女召喚』は禁術のはず!」


憤る教皇様方に、お付きの神官達も騒めいている。当たり前だ。『聖女召喚』といえば聞こえはいいが、この世界とは異なる『異世界』と呼ばれる場所より不特定の人間を、本人の承諾なく呼び寄せる…いわば拉致・誘拐の術なのだから、現在教会では人心に背く行為として禁止されている。それでも昔、その召喚は各国で数多く試された。聖女としての召喚成功はまさに一握り程度だったと聞く。それでも、権力者たちは召喚を止めなかった。それは、呼び寄せられた異世界人は、大なり小なり必ず『異能』を持っていたからだ。


それらは例えば、小魔法を撃てば大魔法の威力を持って敵を打ち。食事を作れば食べた者を癒したり。回復魔法で死者の蘇生を可能としたり。など、神の御業として遜色のないものだった。しかし、代償は必ずある。呼び出されたことによって精神を病む者、命を絶つ者、惨い扱いを受け殺される者。その力でもって、粛清として国二つを滅ぼした者もいた。果たして、安息と幸せを手に入れたものは、どれほどいたのだろうか。


「静粛に。」


ミトラ様のお声にみな我に返り、水を打った様に静まり返る。それを髭を撫でながら眺めていたウォンカ様は、ミトラ様から続きを。との言葉を受け、口を開いた。


「結果から申せば、召喚は成功なさった。呼び出された女性は聖女様としての力に申し分なく、鑑定の結果、『大聖女』であることも確認済みじゃ。」


「大聖女…、」


「…しかし、どうする。禁術を行ったライハは罰せねばならぬ。たとえ『大聖女』様をお呼びした功績を鑑みても、だ。」


そう、功績。いまこの世界は、聖女召喚を禁じたことにより本来の帰結に向かっていた。つまり、魔力が霧散し魔物が現れ、魔物を倒すために魔法を使い、その魔力が霧散する悪循環から抜け出せなくなっていた。高位神官達による浄化も間に合わず、魔物の影響により寄る辺を失くした子供や職を失う者が増え、結果冒険者として身を立てる以外になく。生きる為に魔法を使いその魔力で魔物を発生させる。自分の首に、自ら手をかけゆるゆると締め上げているのだ。


そんな折に現れた、大聖女。存在が公表されれば、どれほどの騒ぎになる事か。民衆の心を一度に掌握することも、地位や権力を手に入れることも安いだろう。そう、望めば国さえ統べて手に入れられる程。


「ほっほっほ。それについては、大聖女様に確認致しましょう。なかなか話の分かる、面白い方であった。」


「なんと。一体どのような?」


興奮した様子のデュヴァル・オルタンシア様に、ふむ、と一息置いて伝えられた言葉を、皆頭に叩き込む。


語られた大聖女様の為人は、『伝説として語り継がれる聖女』とは程遠く。かといって、悪徳を働くこともなく、淡々と仕事をこなすごく普通の大人の女性であった。うんうんと相槌をうちながら、熱心に話を聞き、時折質問を挟むデュヴァル様。興味深そうに話を聞くミトラ様。悪人ではないとの言葉に安著の息をつく、緑の教皇ルール・クローズ様。ニコニコと笑っている黄の教皇ゴルドラ・G・ドール様。


各々含みのある反応に、ウォンカ様も頷き、最後に。と続ける。


「大聖女様は、ご自身の意志で女神・アルヘイラ様と対面を可能としておりますので、その意味を十分ご理解した上で、身の振り方をお決めくだされ。」


「なん、なんだと?!」


「アルヘイラ様をお呼びすることができる…っ!?」


「まて、その言い様であるならば、ウォンカ殿はアルヘイラ様にお目通り叶ったというのか!」


ざわめきが一瞬にして静まり返り、一斉にすべての視線がウォンカ様へ向けられる。それに臆すこともなく、いつもの様に笑いながら髭を撫で、揚々と頷いて見せた。それを確認すると、皆気の抜けたように椅子にもたれかかり、大きく息をつく。


「さて、女神アルヘイラ様は尊き大聖女様に騎士を就けられました。小国ライハの若き王は、大聖女様と共に召喚された『修道女』の少女を『聖女』として扱っておりますの。そして、知らぬこととはいえ召喚した『大聖女』様を城から追い立て、庇った騎士団長すら首を切り追い出しておる。」


「なんだと!」


「それが本当なら…、いえ、真実なのでしょう。召喚は禁術ですが、召喚された者はした者が責任を負い、この世界での生活を保障する決まりです。それすら怠っているというのであれば、…処罰は免れないでしょう。」


「それだけではありません!『修道女』ごときが『大聖女』様を語るなど言語道断!今すぐ首を跳ねアルヘイラ様並びに大聖女様へ許しを請うべきです!」


憤慨し憤るデュヴァル様と紫の神官達を、ルール様と緑の神官達が宥めている。


「落ち着きたまえ。大聖女様がそれを望んでいるのならば、すでにウォンカ殿が手を打っているはずだ。それがないという事は、お望みではないのだろう?」


「ほっほっほ。そうですな。」


ウォンカ様の返答に、ぐっ、と眉間に皺を寄せつつも口を噤み、渋々大人しくなるデュヴァル様。…このお方は、こと聖女様への信心が本当に厚い。まるで忠犬のようですらある。


「ひとまず、報告会は以上としましょう。近いうち、大聖女様と我々での面会の場をお繋ぎいたします。ウォンカ殿、それでよろしいな?」


「問題ありますまい。」


「それでは、今日の所はここまで。」


有無を言わさぬミトラ様の言葉に、各自疑問や疑惑を秘めたまま、大聖女様との対面を待つことになるのだった。





「そんなところですな。」


「気がおもぉい…。」


ほっほっほ。と笑いながら、教会本部での成り行きを説明する私とウォンカ様に、げんなりとしたお顔の大聖女様。その親しみやすく気安いお姿に、本当にこの方は何というか…、『大聖女』であるという事を忘れそうになる。


「地位とか権力なんていらないよ面倒くさい。天下統一なんて現実見えてない奴がするんだよ。国とかもっと要らない。」


そんなことよりウォンカ翁が持ってきてくれたこれの方が、美味しくてもっと欲しい。そう言いながら、来る途中で私が買ったお茶菓子に舌鼓をうって笑っていらっしゃる。まるで子供の様な言動をなさる方だが、この間正装された際には、その神聖さに圧倒されるほど。それこそ伝説に出てきても可笑しくない程の『聖女』となっていたのだから、女性というものは不思議で、…恐ろしくなる。


「まぁいいや。『聖女様へのお布施』はしっかり貰ってますから。その分ちゃんと働きますよ。」


罰が当たりますから。と続ける大聖女様に、女神アルヘイラ様はそんなことはなさらないのでは?と思わず笑ってしまう。この教会に滞在していただいている間、身の周りに起こった出来事は、些細なことも含め詳細に連絡してくださるのだから、ありがたい。もともとそれとなく窺い、各教皇の出方を知ることができれば。と思っていたのだが…。本当に話が早いというか、察知する能力が高くていらっしゃる。


「じゃあ、最後にアルたん呼び出して、『聖女』の能力が証明できればいいの?」


「それが一番わかり易いでしょうな。『鑑定』も『眼』も、滅多に使えるものはおりませんのじゃ。神聖力は高ければ感じ取ることも出来ますが。」


「あんまり上げ過ぎて聖物が出たら困っちゃうからかぁ。わかりました。」


あっけらかんと、そんなに軽く話す内容ではないんですが。できて当然、当たり前のことを当たり前にこなしているだけ。そういった雰囲気に、空恐ろしくなる。なるほど。こういった積み重ねで、伝説というものは出来上がっていくのですね。


「じゃあ、ご馳走様でした。また何か協力できることがあれば、お手伝いしますね。私もウォンカ翁が私を害さない限り、協力しますので。」


にっこり笑う大聖女様のお召し物は、さし色に青が使われていて。世話係に付けた神官三人が選んだもので、もしまたこのような機会があれば、今回と同じ人選を頼みたい。との申し出を頂く程、信頼できる間柄になったようだ。


「シンジョウ、」


「あ、そうだった。」


ライハの騎士団長から、大聖女の騎士となったバルト・ゼ・ロックス。この男は、随分と人生の振れ幅が大きいというか…。ウォンカ様の後をついて回っていた、小さな子供の頃を思うと感慨深いものがあるな。


「これ、実験で作ったので。どうぞ。」


渡されたのは、何か模様が織り込まれた細く短い紐だった。青色のそれを受け取ったウォンカ様は、一拍ののちに突然大笑いされて。その様子を見た大聖女様も、悪戯が成功した子供のように悪い顔で笑っていらっしゃる。


「これは随分過分な物を頂いてしまったのう。」


「やっぱり成功するんだ…テンプレばんざーい。でいっか。」


予想通りの反応だったのか、肩を竦めて笑った後、私ともう一人の神官にも同じものを渡してくださったので、失礼のないように受けとる。見ればやはり、青い糸を束ねて編みこんでいるようだ。


「大怪我すると、勝手に千切れて治してくれるよ。」


「…はい?」


「題して!テンプレ回復ミサンガ!」


手首とか足首とかに付けてね!とウィンクを飛ばされ、眩暈がしてきた。そんな、事実ならとんでもない代物だ。同じ効果のある魔道具を買うとしたら、家が建つ金額を払わねばならない。おもわず壊れた玩具の様にウォンカ様を見れば、孫を見る様な優しい眼で大聖女様を見ていて。


「じゃ、渡すものも渡したし、アルたんとお話して出発しますか。」


にこにこ楽しそうに笑いながら聖門へ向かう大聖女様は、ロックス殿へダンジョンの話を聞きながらくるくると表情を変えている。


「ウォンカ様。こちらはどういたしますか。」


「うむ、そのままお前達で持っていなさい。大聖女様もそれをお望みじゃ。」


穏やかに笑うウォンカ様へ頷き、手首に結べばほの青く光り、溶ける様に光が消えた。


「今代こそ、聖女様には幸せになって頂かなければ。」


光に透かした水の様に輝くそれに見惚れ、ウォンカ様の小さな呟きは、聞こえていなかった。


教会聖門。ここは祭事や神事に使われる、神聖な場所である。広く整えられた空間は青々とした草は萌え、周りには木々が騒めいて心地よい風が吹いている。その場に、初日とほぼ同数の高位神官、および5人の教皇が、祭事と同じように整列していた。内心誰しも、私を含めた皆が気持ちの高ぶりを押し殺していることだろう。いくら教会で生活し、女神アルヘイラ様を信仰していたとしても、お声を聴くことすら一生に一度なく、大変な名誉である。というのに。これからお声はおろかお姿まで拝顔叶うというのだから、浮足立つのも仕方がなかった。


初日の少年の様な恰好から、女性らしい軽装の大聖女様は、服装で何が変わるわけでもなく、終わり次第出立するから。との理由で、軽装のまま身を整えられて、聖門にあらわれた。


広い広場の真ん中に立つ、巨大な白亜の門。神の住む間と人の住む世を繋ぐとされる、繊細な彫刻が施された門は固く閉じられ、開くことはないという。その門の前に大聖女様は進み出でて。正面に並び立つ我々、何より最前に並ぶウォンカ様へちらりと目配せをすると、ふんわりと美しく微笑まれた。


瞬間、身体に突風が突き抜けるかのような衝撃が襲い、驚き耐える。周りの者達も驚き呆然と大聖女様を見ては、言葉を失っていた。聖門が、開いていた。白亜の門に絡まるように光が走り、開いた扉の向こうは真白に潰れて、なにも見通すことができない。ゾクッと、鳥肌が立ち身体が震える。


風に騒めいていた木々は恐ろしいほど静寂を保ち、だというのに大聖女様の黒髪は、軽やかに風に遊ばれている。この場に満ちる、重々しくも清らかな空気。大聖女様から発せられる神聖力に、誰からともなく膝をつき、女神アルヘイラ様へ祈るように、手を組んでいた。


そんな私達を一瞥して、両の手を空中へ差し出すと、


「アルヘイラ。久しぶり。」


《うふふ、楽しんでくれているかしらぁ。》


その手を取りながら、女神・アルヘイラ様が、ご降臨なさった。天から降り注ぐような、頭の中に直接響くような声に、息を飲む。


「そうだね。今のところ半々かな。」


《あらぁ、そうかしら。私から見ると、とっても楽しそうだけれど?》


「覗きは良くないと思うなぁ。」


美しい金糸の髪。全てを見透かすような金の瞳。慈愛に溢れる唇は弧を描き、白い陶器の様な肌は、絹の様な薄布を纏っては神聖力に靡いている。あまりの神々しさに、言葉を失う。しかし魂の底から、この方がこのお方こそが、女神・アルヘイラ様なのだと理解する。歓喜に震え、ぼたぼたと涙が溢れては萌える草々に落ちて行った。


《貴方達も、久しぶりねぇ。》


ふわり、とこちらへ身を向け、ロックス殿とウォンカ様へ視線を送る。


「お久しぶりでございます。無理をお聞き入れ下さり、大変ありがたく感謝いたします。」


頭を下げ、祈るように傅くウォンカ様と、大聖女様の隣で膝を着き礼を尽くすロックス殿に微笑んで。


「まぁ、見ていたなら知っていると思うけど、アルたんの信者さんがね。会いたがってるから呼んじゃった。」


大聖女様の言に、そう、と、空気に溶ける様な声が、


《かわいい子たち。貴方達の祈りは、ちゃんと私が受け取っているわ。いつもありがとうね。》


そっと頭を撫でる様に、通り抜けて。腹の底から湧き上がってくる感情に、唇を噛んで耐えようと試みるも、ボロボロと涙が後から後から流れ落ちては頬を濡らしていく。まるで母の胸に抱かれる赤子に為ったかの様な、慈愛と安心感に包まれて。周りからもすすり泣く声が上がっては消えていく。


《それじゃあ、リン、またねぇ。》


「うん、また。」


くすくすと笑い声をあげて、大聖女様と笑いあうと、アルヘイラ様は門をくぐる様に消えてしまった。そして、瞬き一つで、まるで今までが夢であったかのように、聖門の扉は閉ざされていて。ただ濡れた頬と、胸に満ちる充足感だけが、アルヘイラ様の存在を証明していた。


そんな私達を見渡すと、大聖女様は低く落ち着いた声で、


「さて、君達の疑問は解けたかな。私が聖女(上司)として君達に命令することは、一つ。『仕事はするからほっといて。』だ。君達の政治や派閥争いはどうでもいい。私に過分な力があることも、それにより何がなせるかもわかっているつもりだ。ただ、私はその力を使う心算がない。私の身に、何(・)か(・)がある場合を除いてね。アルヘイラに頼まれているし、聖女へのお布施はきちんと受け取っている。その分の仕事(浄化)はしっかり果たすよ。それは君達の本(・)来(・)の(・)望(・)む(・)こ(・)と(・)だろう。個人間の争いに、私を巻き込む、あるいは私の名前を出した場合、相応の覚悟があると受け取る。見ているから、気を付けるんだよ。」


そう、警告してきた。全てわかっている上で、昨日までの事はなかったことにしてやる。これから身の振り方を弁えない場合、持っている力でもって処罰する。そして、嘘偽りは、大聖女様の後ろ盾である、女神アルヘイラ様によって暴かれる。それはつまり、教会からの追放。もしくは、死を以ってしても清算されることのない罰を与えられることとなる。神の手によって。そう、仰っているのだ。


跪いたまま、誰も一言も発することなく、大聖女様のお言葉を噛み締めていた。中には恐怖に青褪め、震えるもの。うっとりと恍惚とした表情で見つめるもの。面白いと言わんばかりに笑って頷くもの。困ったように笑う者。三者三様の反応に、満足げに微笑んだ大聖女様は、


「それじゃあ、行ってきます。」


それだけを告げて、馬を引くロックス殿の元へ歩いて行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「今日のひとこと!慣れないことをするもんじゃない。」


ジジ君に座って、ゼロさんに寄りかかる。メンタルがね、疲れたのだよ!ご想像ください。大神官とか高位神官って、沢山修行したり、徳を積んでるんだよ。つまり、年齢層が高いわけだ。平均年齢50代なおっさん達総勢200名余りが、声を圧し殺して歓喜に咽び泣く様を。特等席で見ていたわけだよ。


そしてさらに、親とそう変わらない歳の方々に、偉そうに命令と脅しをかけて、すたこらさっさとオサラバしてきたのだ。や、遣り辛いことこの上ないわい!でもやらないと、暗殺者とか向けられたら困る!怖い!それよりはマシだと思って、めっちゃ頑張った。褒めて頂きたい。ので、ゼロさんに癒されようと寄りかかってるなう。いや、緊張してたから、脱力しているのもほんとだけれどね。


ゼロさん抵抗しないからつい。


「で、なぜにゼロさんはそんなに赤面しているのか、聞いてもいい奴かい?」


横座りにも慣れたから、ゼロさんを見ながら会話するのもお茶の子さいさいだぜ。ふっふー!教会から十分離れた辺りから、じわじわ赤面し始めて、いつツッコむか悩んでたんだよね。そろそろいい?


「…いや、その。見られていたのか、と思ってな。」


ぼそぼそと覇気なく呟くゼロさん。おお、なんだね。何か恥になるようなことしちゃった?こっそりやらかしちゃった?それをアルたんに見られてたかも…ってことだよね。それはそれは。気になってついソワァ…ってなるけれど、いやいやちゃんとプライベートはそっとしておくよ!


「でもアルたんは、楽しんでるって言ってたから大丈夫じゃない?」


ゼロさんにも声をかけてたし、怒ってるわけではなかった。なら心配しすぎなだけだから、きっと大丈夫だろう。まぁ、私の見解ですが。


「…楽しんで…、そう、なのか。」


片手で顔を押さえて目をそらしてても全く問題なくジジ君操るのだから、器用だよなぁ。そんなことを考えながらゼロさんを見ていたら眼があって。なんぞや?と首を傾げたら、眼を塞がれた。


「なにゆえ!?無罪を主張する!」


「んん゛、五月蠅い。ちょっと待て。」


あんまりにも死にそうな声で言われるから、優しい私はちゃんと待って差し上げるんだぜ。しかたないなぁ。そんなことより、これから向かうダンジョンですよ。怪我するの嫌だし、やっぱり怖いから、特製ミサンガを編んでみた。職業系転生によくあるよね。で、試しに作ったら大成功だった。やったぜ。


案の定、回復系しか付与できないんだけどね。仕方ないね。ないよりマシ。ううぬ。所詮チートに成れぬ雑魚という事か。今のところ、虎の威を借る以外にしてませんからね私。…切ない。ほろっと来ちゃう。


「んぅ?」


そんな明後日な方向に頭を働かせていたら、口になにか押し当てられた。驚いて肩が跳ねると、すぐに何もいなくなって。え、何々怖い怖い虫?ゼロさん?おもわず人の視界を奪い続けているゼロさんの手を剝がそうと、手を伸ばしたら、先にゼロさんの手が離れて行った。外の眩しさに目がチカチカするでヤンス!


「…え、なんでさっきより顔が真っ赤なんだい。」


手が離れて行ったと思ったら、耳まで真っ赤なゼロさんがいた。赤面症かい?それとも体調不良?熱中症?どれだね。というかさっきのなに。ついにゼロさんの耐久値が無くなって、呼吸止められて始末されるのかと思ったわ。一瞬だけな!


「…そのうち知らされるんですかね。」


報連相大事だと思うよゼロさん。聞いてる?なかなか面白いからいいけれどね。確証ないとやり辛いから早めにお願いします。といっても、実際そうなら私もどうしていいのかわからないんですが。言わんけど。


なんだかこのむず痒い感じも、楽しんでるからこのままでもいいかなぁ。なんて。




ゼロさんの本名構成は、孤児で本名ロックス。

バルトはウォンカさんがくれた名前。その後功績を立てて、貴族の養子に入った時に適当に付けられた名前がゼ。家名はもらえなかった。


『ゼロックス』って馬鹿にする意味を含んで呼んでいる人もいたよ。

シンジョウはギルドカード見た時にフルネームを知ったよ。

ゼロさんはシンジョウにゼロさんって呼ばれるのは、愛称みたいなものだと思ってるから気にしてないよ。

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