第88話 聖樹の森
酒場でキャラバン隊の人達と別れた私達は、リズシーレさんの家に向かっていた。
すっかり夜になっていたが、リズシーレさんの家で準備を整えてから、聖樹の森に向かっても十分朝には間に合うぐらいの時間だ。
リズシーレさんの家に到着した私達は急いで装備品など準備を整えて、リズシーレさんの部屋に行った。
「リズシーレさん。じゃあ、今から聖樹を取りに行って来ますね」
「ああ、気をつけて行っておいで。もし、ノユンに会ったらよろしく伝えて欲しい」
「分かりました。それじゃ、行ってきます」
リズシーレさんの家を出た私達は、森の中に入り、周りに人がいない事を確認して、イスネリにワイバーンの姿になってもらった。
私達はイスネリに乗り込み、イスネリがインビジブルをかけて、空へと舞い上がった。
そして聖樹の森の方角に向かって、私達は飛んで行った。
ー◇◇◇◇◇◇ー
陽の光が地平線から覗きだし、夜が明けてきた。
私がイスネリに尋ねる。
「イスネリ。大丈夫? 疲れてない?」
「大丈夫ですの。わたくしは二、三日くらいでしたら寝ずに飛べますの」
「あんまり無理しないようにね。疲れたら言ってね」
「はいですの」
私は手元にリズシーレさんに見せてもらった地図を書き写した紙を出し、現在地を確認した。
…私達がリズシーレさんの家を出た時間から計算したら、もうそろそろ見えてきてもいい頃なんだけど…。
私はイスネリに聞いてみる。
「イスネリ。もうそろそろ見えてきてもいい時間なんだけど、何か見えたりしない?」
「うーん。ちょっと待ってくださいの」
イスネリが前方の方を見て、目を凝らして見る。
「あっ! おそらくあれですの。所々木が光ってる森が見えましたの」
「ホント? 距離はどのくらい?」
「あと、二、三十分ぐらいで着けると思いますの」
「分かった。ありがとう」
…えっ?結構な速さで飛んでるけど、二、三十分先の距離まで見えるの?
イスネリのその視力に驚きながら、アイシャとイスネリの背中で器用に寝ているクウネに声を掛ける。
「もうすぐ着くみたいだから、準備しようか?」
「はい。分かりました」
「…う、うーん。はーい」
ま、準備と言ってもアイシャは高くて怖いから目を瞑ってるし、クウネは寝起きだから起こすだけだけどね。
そうしてしばらくすると、私にもその光る木がある森が見えてきた。
そしてイスネリに話す。
「じゃあ、イスネリ。少し低めに飛んで近付いていこうか」
イスネリは頷くと、その速度を保ったまま高さを落としていった。
森の木よりも少し上ぐらいの高さをイスネリは飛んで行く。
「アイシャ。このぐらいの高さだったら、もう大丈夫だと思うよ」
「はい。あ、そうですね。このぐらいでしたら」
私にそう言われたアイシャは目を開けて、周りを見回した。
そしてイスネリの背中に乗る私達にもハッキリと光る木が見えた。
「おおー、あれが聖樹だね!」
「本当ですね。ここからでもちゃんと光っているのが分かりますね」
私とアイシャ、クウネがイスネリの背中から身を乗り出して前を覗き込む。
その瞬間、
ヒュンッ! ヒュンッ! バシッ! バシッ!
「きゃーーっ!」
イスネリの体が大きく傾き、私達は空中に投げ出された。
「お嬢様っ!」
私と手を繋いでいたアイシャが私の体を抱き締め、私とアイシャは森の中に落下した。
私は落ちながら、アイシャに抱き締められた時に森の木の枝が鞭のように伸びて、空中に飛んでいるイスネリを攻撃しているのが見えた。
イスネリはその攻撃を受けて、体勢を崩して、私達を落としてしまったようだ。
「アイシャ! 大丈夫?」
私とアイシャは木にぶつかりながら、地面に叩きつけられたが、アイシャが私を抱き締めて守ってくれていた。
「…うっ、お嬢様が思ったより軽くて良かったです」
「そんな事言ってる場合じゃないよ! 大丈夫なの?」
「私は大丈夫です。それよりイスネリとクウネは?」
私は傷もなかったが、アイシャは落ちる時に私を守って、体が枝にかなりぶつかったので、腕や足に切り傷ができていて、服も少し破れていた。
幸い、地面が柔らかかったので、衝撃によるダメージは二人ともあまりなかった。
私が周りを見回して、二人の姿を探す。
すると、森の中から声が聞こえた。
「やぁー!」
クウネの声だ!
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