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ポンコツ貴族令嬢が最強スキルをゲットしたので、自由を求めて家出する。~家出令嬢の冒険譚?~  作者: 十目 イチ
キャラバン編

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第73話 空中歩行

 速度を上げた五台の馬車がガタガタと揺れながら、崖に挟まれた道を駆けていく。


 私は必死に座席に踏ん張り、クウネとイスネリも私の両側で踏ん張りながら、私の腰辺りを掴んで支えてくれる。


 前方を見た私にも渓谷になった崖の中腹で、弓をこちらに向けて構えている野盗達が目に入った。



 アルメダさんが叫ぶ。


「ラフィーネ! 奴らは駝竜を狙ってくる! 絶対に当てさせんな!」


 私は激しく揺れる御者台から腰を浮かせて、両手でそれぞれクウネとイスネリの肩を掴んだ。



 イスネリが叫ぶ。


「撃ってきますの!」


 アルメダさんが言った通り、数本の矢が私達が乗る馬車の駝竜めがけて飛んで来る。



 どこに飛んで来るか分かっていたら、落としやすい!



 私は飛んで来た矢を念動で操り、野盗に向かって撃ち返した。


 野盗達は自分が放った矢が返ってくるのを見て、慌てて身を隠したので、野盗には当たらなかったが、奴らの初撃は失敗した。


 すぐに野盗達は次の矢を構え出した。



 アルメダさんが再び叫ぶ。


「次が来るぞっ! ラフィーネ!」


 更に速度を上げた馬車が野盗達に近付いていく。



 野盗達の二射目が私達めがけて飛んで来る。


 再び私は念動で同じように野盗を狙って矢を撃ち返した。


「うおっ!」

「ぐあっ!」


 撃ち返した矢の何本かが逃げ遅れた野盗に当たった。



 私達の乗ってる馬車が野盗がいる崖の下に差し掛かり、崖の両側から挟み撃ちされる格好になったが、野盗達はまだ弓を構えられず、私達はその間を駆け抜けていく。


「抜けたか?」


 アルメダさんが身を乗り出し、後方の馬車の位置を確認する。


 私も両脇をクウネとイスネリに支えられながら、後ろを振り返る。


 野盗の矢はまだ飛んできていない。



 よしっ! 抜けた!



 そう思って前方に振り返ると、クウネが叫ぶ。


「前に岩を落とそうとしているヤツがいるー!」



 アルメダさんも私も前方を見ると、崖の中腹から野盗が数人がかりで岩を押して、私達の馬車に落としてぶつけようとしているのが見えた。



 アルメダさんが叫ぶ。


「まずい! あれを落とされたら、どれかに当たっちまう!」


 私は念動でその岩を動かないように念じたが、重いうえに野盗が触れている。

 私の念動は重い物も生き物が触れている物も動かせないっ!



 私は咄嗟に叫ぶ。


「イスネリっ! バックラーを全部前に投げて!」


 イスネリは私の体を片手で掴みながら、足元にあった革袋からバックラーをもう片方の手で一枚づつ前に放り投げた。


 私はそのバックラーを操り、その野盗が押す岩に向かって等間隔に空中に並べる。

 クウネに向かって叫ぶ。


「クウネ! 跳べる?」


 私の意図を理解したクウネは御者台からバックラーに向かって跳んだ。


 一歩目、二歩目、三歩目…バックラーを橋渡しにして、クウネがまるで空中を走るようにして、岩を落とそうとしている野盗に迫る。



 それを見たアルメダさんが警笛を数回、大きく吹いた。


 最後方の馬車にいるミレニアさんが馬車の屋根を伝って、私達の馬車にあっという間に乗り込んで来た。



 アルメダさんがミレニアさんに叫ぶ。


「ミレニア! クウネに続け!」


 ミレニアさんは腰から二本の剣を抜いて、前を跳ねるようにして空中を走るクウネを見て、同じようにバックラーに向かって跳んだ。



 えっ!? 跳べるの? ホントにっ!?



 ミレニアさんもクウネの後に続き、野盗達に近付いていく。



「やぁーー!」



 先に岩にたどり着いたクウネが野盗が押す岩に渾身の拳を入れる。


 ドガッ!



 岩に大きな亀裂が入ったが、砕けない。


「避けて!」


 ミレニアさんが叫び、クウネは岩に一撃を入れた後、崖を滑り降りる。


 入れ替わるように岩まで跳んで来たミレニアさんが空中で自分の体を軸にして激しく回転した。


「だぁーー!」


 ガガガガッーー!


 駒のように回転しながら、ミレニアさんの二本の剣が交互に何回も岩を斬る。


 ミレニアさんの二本の剣が黄色く光ったように見えた。


 ゴゴォーン!


 岩は破裂したように細かく飛び散り、押していた野盗達は後ろに吹っ飛んだ。



 崖の傾斜部分に着地したミレニアさんは、そのまま崖を滑り降りてクウネに追いつく。


 そしてミレニアさんとクウネはある程度の高さまで降りてくると、私達の馬車に向かって跳んだ。


 私の乗っている御者台でアルメダさんとイスネリが、跳んで来た二人を受け止めた。



 すかさずアルメダさんが警笛を吹いて、五台の馬車はその速度を徐々に落としていく。


 振動が少なくなり、私は周りを見回したが、視界に野盗の姿は写らなかった。


 どうやら私達は野盗の襲撃をしのいだみたいだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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