第67話 ちょっと物思いに更けました
私達はお昼ご飯を食べ終えて、キャラバン隊の皆と後片付けをしていった。
キャラバン隊の皆はすごいテキパキと動く。
その様子を見ている私の横でアルメダさんが呟いた。
「やっと、サマになってきたな。みんな」
…?
「どういう事なんですか? アルメダさん」
「あ、ああ。それはな…」
アルメダさんがこのキャラバン隊について話してくれた。
元々、こういった行商で遠征に行く場合はいくつかの隊で組んで行くのが一般的で、人数も三十人以上になることもよくあるらしい。
けど、アルメダさんのキャラバン隊は女性ばかりで、ラドズさんの所の物資輸送も兼ねているので、一緒に行商に出てくれるキャラバン隊が全然いないそうだ。
なのでアルメダさんは自分達だけの単独での行商をしっかり成功させる事にこだわっている。
女性だからナメられる、頼りなく思われる。
商人の世界ではそういった事が頻繁にあるそうだ。
そういえば前にロザミーさんも同じような事を言っていた。
ましてやアルメダさんには資産家であるラドズさんという後ろ楯もあるせいで、余計にそう見られているとアルメダさんは言った。
「だからな、ラフィーネ。今回は絶対にあっしらだけで、しっかり行商を成功させたいんだ」
アルメダさんはそう言うと、くるっと振り返り、先頭の馬車の方へ歩いていった。
その後ろ姿からはアルメダさんのものすごい決意が私にも伝わってきた。
私もその決意に答えないと…。
気を引き締めなおして、私も馬車に向かって行った。
午後からの行程も順調に進み、日が傾く頃に一日目の夜営地点に到着した。
街道から少し外れ、見晴らしの良い所に五台の馬車を半円を描くような形で停めて、その中心にテントを設営する段取りになっている。
馬車を停めた後、キャラバン隊の人達は手際よくテントを出して、どんどん設営に取りかかる。
私達、護衛担当はジャーバさんに呼ばれ、一ヶ所に集まった。
そしてジャーバさんが、夜間の見張りの段取りの確認をしていく。
護衛担当の私達は二人一組で、三時間交代で夜間の見張りにつく。
その順番の確認だ。
「じゃあ、事前の打ち合わせ通り、最初はミレニアとラフィーネさん、次がアイシャさんとオレ。最後はクウネちゃんとイスネリさんの順でいいか?」
分かりました、と全員が返事をする。
そしてジャーバさんは更に続ける。
「そしてこれが警笛だ。全員分あるから渡しておくな」
ジャーバさんは手に持った革袋から笛を出し、一人一人に渡していった。
この笛は敵を見つけた時に吹いて、キャラバン隊に危険を知らせる笛になっている。
「クウネ! 今は吹いちゃダメだよ!」
笛を受け取ったクウネが今にも笛を吹きそうになっていたので、私は慌てて止めた。
ジャーバさんは大きな声で笑って、
「今吹いてもいいけど、後でキャプテンにめちゃくちゃ怒られるぞ」
「そ、それは怖そうだから、我慢するー」
「その方がいいぞ。それじゃ、夕食後に集まって、見張り場所の確認するから、もう一回オレの所に来てくれ」
護衛担当の打ち合わせが終わり、私達もテント設営の手伝いに向かった。
無事にテントの設営も終わり、皆で夕食を食べて、後片付けをした後、私達はジャーバさんの所に集まった。
そこへアルメダさんもやって来た。
そして私達に話し掛ける。
「じゃあ、夜間の見張り、よろしく頼むな。間違ってても構わねえから、ちょっとでも異変を感じたら、すぐに笛を吹いたらいいからな」
そしてジャーバさんも私達に声を掛ける。
「キャプテンの言うとおり! 護衛の役割はキャラバンに危険な物を近付けさせない事! とにかくいち早く皆に知らせるという事を最優先に頼むよ!」
アルメダさんはジャーバさんの頭をはたくと、
「じゃあ、よろしくな」
そう言い残して、テントの方へ歩いて行った。
見張りをする持ち場を確認した後、私とミレニアさんはジャーバさんからフードとランタンを借りて、持ち場の方に移動した。
他の四人は休む為にテントの方へ歩いて行く。
「…それじゃ、私はあっちの方だから…」
そう言ってミレニアさんも自分の持ち場に歩いて行った。
一人になった私は近くにランタンを置いて、フードを頭から被り、地面にペタッと座って地平線を眺める。
そうして静かな地平線を見ながら、色んな事を思う。
こないだまで家で特にする事もなく、過ごしていたのに今は冒険者になって、こうやって夜の草原で一人で見張りをして過ごすなんて、想像もしなかったな…。
お父様やお母様、ギオールお兄様、グミール。今頃はどうしてるかな?
まさか私がこんな所で冒険者してるなんて、みんな思いもしないだろうな…。
しみじみとそんな事を考えて、夜は更けていった…。
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