第46話 その角、いただきます!
私は鞄から三日月を全て出して、周りに浮かせた。
さらに落ちているイスネリの槍を、念動でクウネの手元まで動かしてクウネがそれを受け取る。
アイシャがイスネリに乗ったまま、私に向かって叫んだ。
「ダメです! お嬢様! 無茶はいけません! イスネリに捕まってくださいっ!」
「それが難しいんだよ! コイツがその時間をくれそうにないよっ!」
そう話している間にもヘルバッファローは再び、勢いをつけて、その巨体に似合わない凄い速度でこちらに突進してきた。
「ゴブゥァー!」
「来たよっ! クウネ!」
私は三日月をヘルバッファローに向けて放った。
キィーンッ! キィンッ!
「ウォォーッ!」
咆哮を上げて、ヘルバッファローは激しく首を振って飛んできた三日月を弾く。
数本の三日月がヘルバッファローの体に突き刺さったが、突進の速度は落ちない。
「やぁーーっ!」
クウネがヘルバッファローの突進を横にかわしながら、手に持ったイスネリの槍を思いっきり振った。
ガキィーーンッ!
槍はヘルバッファローの角に当たり…いや、ヘルバッファローがクウネの動きを見て、角で槍を捌いたように見えた。
横に回り込んだ形になった私は、ヘルバッファローの横っ腹目掛けて三日月を放った。
ヒュンッ…! グサッ! グサッ!
「!? ボフゥォッ!!」
数本の三日月が体に突き刺さり、ヘルバッファローが怯んだ。
ヘルバッファローは私の方に振り返り、私に向かって突進してくる。
私は三日月をヤツの足元に目掛けて放つ。
ビュンッ! ビュンッ! グサッ! グサッ!
「グブォォー!?」
ドスゥッ! ズザザーー!
前足に二本の三日月が刺さり、ヘルバッファローはバランスを崩して前のめりに勢いよく転倒した。
それを見たアイシャが叫ぶ。
「今です!イスネリ!二人を掴んでください!」
「了解ですのっ!」
イスネリが低く滑空して、私とクウネの方に近付いてくる。
私はクウネに向かって叫ぶ。
「クウネ! 一旦離れるよっ!」
私とクウネはヘルバッファローから離れるように走り出し、伸ばしたイスネリの足に飛び付いた。
私とクウネはイスネリの足にしがみついたまま、滑空して数十メートルほど移動した所で、イスネリの足から降りた。
振り返るとヘルバッファローは倒れた場所から移動していなかったが、こちらを睨み付けているのが分かった。
イスネリが着地して、アイシャが降りてきた。
「お嬢様、クウネ、大丈夫ですか?」
「うん、私達は大丈夫。ねえ、アイシャ。角だけでも何とかならないかな? あとちょっとで折れそうなんだけど…」
アイシャが私にそう言われて、ヘルバッファローの方に振り返る。
「うーん、気持ちは分かるんですが、真正面から正攻法で行くのはかなり危険ですね」
皆でヘルバッファローを見つめていると、イスネリが話し出した。
「わたくしが火炎ブレスを使いますの」
「あ、イスネリは火炎ブレス使えるんだったね。威力はどのくらいなの?」
「正直、あのモンスターは一回のブレスでは倒せないと思いますの。もしかしたら無効化されるかもしれませんの」
「そっかー。でも、やる価値はあるよね。イスネリは滅多にこの姿で戦えないし、もし効かなかったとしても目眩ましにはなるから、その瞬間に私がもう一回あいつの角を狙ってみるのはどうかな?」
作戦は決まった。
アイシャとクウネは動いて、ヤツの注意を引く。
回避に専念すれば、ヤツの攻撃はかわせない速度じゃない。
私はイスネリの背中に乗り、イスネリが火炎ブレスを出した瞬間に、ヤツの角にめり込んだままになっている三日月を狙って攻撃して、角を切断する。
イスネリの背中に乗った私が皆に声を掛ける。
「じゃあ、アイシャとクウネは、あいつに近付き過ぎないようにね。 イスネリはブレスで無理に倒そうとしなくてもいいからね」
皆、ヘルバッファローの方を見つめたまま、頷いたので、私が声を上げる。
「よしっ! 作戦開始ーっ!」
イスネリの両足にアイシャとクウネがしがみついて、イスネリが低い高さで飛び出した。
それに気付いたヘルバッファローは明らかにお怒りモードで、体勢を低くして、こっちに向かって突進してきた。
ふふんっ! 悪いけど、その角、サクッといただくよっ!
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