第37話 仮面の男
翌日、私達はポイズンリザード駆除クエストの受注書を持って、朝一番にその村に向かう馬車に乗り込んだ。
お昼前には到着するとの事なので、馬車の中で今回の作戦をおさらいしておく。
ポイズンリザードは村の家畜を襲うそうなので、私達は待ち伏せして、迎え撃つ事にした。
ポイズンリザードが現れたら、殺さない程度に攻撃して、逃げた所をアイシャとクウネが追いかけて、巣穴まで誘導させる。
巣穴を特定したら合流して、四人でその穴に入って、中にいるポイズンリザードを全滅させるという作戦にした。
ただ、この作戦の難点は巣穴の規模や、ポイズンリザードの数がわからないので、巣穴に踏み込んだ後が厄介な所だ。
だけど、それについてはイスネリが
「巣穴が分かれば、わたくしの火炎ブレスで洞窟の中すべてを焼き払えば、すぐ終わりますの」
…火炎ブレス…。ワイバーンだもんね…。
一応最終手段として周りをよく確認した上で、お願いしようかと思う。
そうして私は依頼のあったセヌタ村に到着して、村長さんの所を尋ねた。
村長さんは冒険者が女四人で来たので、初めは冗談かと思ったようだが、いつものアイシャの威圧感と私の『万物念動』を見せる事で、とりあえず信じてくれた。
村には主に豚と鶏が家畜として飼われていて、飼っている家の柵の全てに、すでに鳴子が付けられているそうだ。
ポイズンリザードが柵の中に入ろうとすると、どの家でもすぐに分かるようになっているとの事だった。
私達は村の中央にある集会場で待ち伏せをする事にした。
ここならどの家の鳴子が鳴ってもすぐに駆けつける事ができる。
私達は集会場の窓を全て開け放って、鳴子の音を聞き逃さないように静かに待機した。
私は矢と新しい三日月を出して、宙に浮かせて待機してると、その様子を見ていたイスネリが話し掛けてきた。
「それにしても不思議なスキルですの。そんなに操ってて、混乱したりしないんですの?」
「うん、結構練習したからね。初めの頃は頭が痛くなったりしたけど、最近はほとんどないかな?」
「そうですの。ドラゴン族でもそのようなスキルを使っているのを聞いた事がありませんの」
「そうなんだ。なんか三百年以上授かった人はいないって、弟が言ってた」
そんな会話をしていると、遠くで鳴子の音と家畜の激しい鳴き声が聞こえてきた。
「出たみたい。みんな行くよ!」
私達は音のする方へ駆け出した。
すると二匹の大きなトカゲが柵の中に入り、二匹とも家畜の豚を口で咥えているのが見えた。
私は走りながら、矢と三日月をそのトカゲに向かって放った。
二匹いるので、一匹は仕留めるつもりで首を狙って三日月を、もう一匹は尻尾の辺りを矢で狙った。
ヒュンッヒュンッヒュンッ……。
ザクッゥ!ブスッ!ブスッ!…
狙い通り、手前にいるポイズンリザードの首に数枚の三日月が深々と刺さり、そいつはその場で崩れ落ちた。
もう一匹の尻尾にも数本の矢が刺さり、咥えていた豚がドサリと落ちる。
仲間が倒れたのを見て、矢が刺さった方のポイズンリザードは体を翻し、森の方へ走り出した。
走る速度はそんなに速くない。
それを見てアイシャが走りながら、私達に言う。
「クウネ!追いかけますよ!他にも隠れているかもしれないので、周りに気をつけて慎重に追いかけますよ!お嬢様とイスネリも周りには充分注意して付いて来てください!」
私はアイシャに向かって答える。
「分かった!出来るだけ離されないように付いて行くから、アイシャも気をつけて!」
アイシャとクウネはポイズンリザードを追いかけて、森の中に入って行った。
私とイスネリはその後ろを付いて行った。
ポイズンリザードの移動速度が遅いのもあって、私達は作戦通りにポイズンリザードと一定の距離を保ったまま、尾行する事ができた。
すると、前を走るポイズンリザードの先に洞窟の入り口がポッカリと口を開けているのが見えた。
あれが巣穴か。
ポイズンリザードはその穴に向かって一直線に走って行く。
穴まであと少しといった所で……。
ゴゴゴッーーー!
その洞窟から轟音と共に炎が吹き出てきた。
何が起きたか理解できないポイズンリザードはその場で立ち止まる。
私達も思わず立ち止まった。
…イスネリは私の隣にいるからイスネリの火炎ブレスじゃないよな。
イスネリも私の隣でキョトンとしている。
「お嬢様!どうしますか?」
「えっ?ええー…。どうしよ?」
私の少し前で立ち止まったアイシャが振り返って私に聞いてきたが、私も何が起きているのか分からないので、答えられなかった。
そうしている間にポイズンリザードは巣穴の方へゆっくりと近付いて、巣穴の様子を見に行ったようだ。
「ん?一匹残っているじゃないか。仕留め損なったか?」
巣穴の中から剣を持った一人の男が、そう言いながらゆっくり歩いて出てきた。
その男は目元と鼻を覆った、赤い仮面を着けていた。
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