第36話 毒はお風呂で治りません
イスネリは武器屋のおじさんにその槍を指差しながら、尋ねた。
「すいませんの。こちらの槍を素振りしてみたいのですけど、素振りできる場所はありますの?」
「うん?だったら、そこの扉から裏庭に出れるから、そこで試し切りとか素振りならできるけど。けど、その槍は嬢ちゃんにはちょっと重過ぎ…」
そう言い終わらないうちにイスネリは壁に立て掛けてあったその槍を片手でヒョイと持ち、
「こちらの扉でよろしいんですの?」
「あ、ああ。大丈夫そうだな…」
イスネリと私達は裏庭に通じる扉から裏庭に出て行った。
裏庭は壁に囲まれていて、人型に組まれた丸太や弓を試し撃ちする為の的などがあった。
イスネリは持ってきた槍を構えると、ビュンビュンと大きな音を立てて回し、感触を確かめるように何度か素振りした。
その鮮やかな槍さばきに私とクウネは思わず、おーっと歓声を上げ、拍手した。
「すごいね!イスネリ!槍は得意なの?」
「以前に村で生活していた時に村の人に教えてもらいましたの。久しぶりでしたけど、これなら扱えそうですの」
「カッコいいね!イスネリ!」
クウネにそう言われて、イスネリは少し照れていた。
そしてその槍を購入して、武器屋さんでの用事を終えた私達は冒険者ギルドに向かう事にした。
「この槍のお代と家賃分の働きは必ずしますので、よろしくお願いしますの」
イスネリはかなり気合いが入っていた。
ギルドに到着して、すぐにイスネリの登録を済ませた。
特に問題なく無事に登録出来たので、ホッとした。
ひょっとしたら、ワイバーンだから出来ないかもと思っていたが、すんなり済ませる事ができた。
そして私達はクエストボードの前に行って、貼り出されているクエストを見てみた。
前に来た時と違って、他の冒険者は全然いなかったので、ゆっくりと貼り出されているクエストを見ていく。
すると、受付のお姉さんが私達の所にやって来て、話し掛けてきた。
「あの、ラフィーネさん。少しよろしいですか?」
「はい?何でしょう?」
「実はこちらのクエストなんですけど…」
そう言ってお姉さんは困り顔でボードに貼られた一枚のクエスト用紙を指差した。
「こちらのクエストを受注していただける冒険者の方がいなくて、ギルドとしても少し困っておりまして…。ラフィーネさん達がよろしければ、是非お願いしたいと思っているのですが…」
そのクエストは害獣駆除と書かれており、被害拡大中の為、早急の受注求む。とあった。
「害獣駆除ですか…」
「ええ、ここから近い村なんですが、その村の近くでポイズンリザードが巣を作ったようでして、家畜が襲われる被害が出ています。その駆除の依頼が出たのですが…」
「受けてくれる人がいないんですね」
「そうなんです。ポイズンリザードはその名の通り毒を吐く大きなトカゲのモンスターで、目撃者の話では牛ぐらいの大きさだったとの事です。その駆除となると、かなり危険ではあるのですが、今ギルドの冒険者では剣士タイプの冒険者ばかりで、こういうタイプのモンスターと相性の良い弓使いなどの冒険者の方が少なくて…。何とかお願いできませんでしょうか?」
うーん。毒を吐く大きなトカゲかぁ。
確かに私のスキルなら距離をとって戦えるから、他の冒険者と比べると、相性は悪くなさそうだな。
「どうかな?アイシャ?私のスキルなら有利に戦えそうだから、いけると思うんだけど」
「そうですね。このクエストであればお嬢様に丸投げして、私とクウネはラクできそうですね」
言い方っ!
もうちょっと何か違う言い回しとかあるでしょっ!
でも何より、村の人達が困っているんだから、早く行ってあげないと、という気持ちになり、
「分かりました。このクエストは私達が受けます」
「ありがとうございます!では早速、クエストの説明をさせていただきますので、こちらへどうぞ」
そう言って受付カウンターに案内され、私達はこのクエストの説明を受けた。
その村はモーネサウラから馬車で数時間ほどで行ける近くの村で、村のすぐそばの森林地帯からポイズンリザードが現れるらしい。
ポイズンリザードは森の中の洞窟などに巣を作る習性があるので、その森林地帯の中に巣があるのは間違いないとの事だった。
今回のクエストは、その巣となっている洞窟内のポイズンリザードすべての駆除となっている。
洞窟の中に入る事になると、灯りになる物が必要となるので、今日はこの帰りに道具店に寄って必要な物を買い揃えて、明日の朝一番に出発する事に決めた。
その帰り道、クウネが私に聞いてきた。
「じゃあ、今回のクエストはクウネはいっぱい殴れないのかな?」
「そうだねー。近付いて、もし毒を浴びたりしたら、大変だし、今回はあんまり殴れないかな」
「えー!毒浴びても、お風呂じゃ取れない?」
お風呂じゃ、無理かな……。
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