第34話 期待通りのお誘い
イスネリさんは暗い表情のまま、私達にここまで来たいきさつを話してくれた。
「実はわたくしのお父様は群れの族長でありまして、わたくしを含む、数十頭のワイバーンと共に極地にて、生活をしておりますの」
神竜が群れを作るっていうのは本当だったんだ。
「人間の間では、わたくし達ドラゴン族、特に神竜と呼ばれる、わたくし達は天災や厄災の象徴とされ、人間に忌み嫌われる事もあったのですが…」
そこまで話すとイスネリさんはちょっと言葉に詰まった。
そして意を決したように話を続けた。
「わたくしは数十年前に、この人間の姿になれる恩恵を授かり、時々、人間として人間達と交流を持つようになったのですの」
私達はイスネリさんの話を無言で頷きながら、聞いていた。
更にイスネリさんは続ける。
「わたくしのお父様は、ハッキリ言うと、人間を好ましく思っておりませんの。ですので、わたくしがこのスキルを授かり、人間の姿で人間と交流を持つなど…、父として、群れの族長として…」
また言葉に詰まったが、私達三人の顔を見て、イスネリさんは更に続けた。
「認めないと…。時々とはいえ、ドラゴン族が人間と生活を共にするなど、絶対に認めないと…」
ん?どっかで聞いたような話だな?
ふと横を見ると、アイシャが少し苦笑いしながら、私を残念そうに見ていた。
その様子を見たイスネリさんがアイシャに尋ねる。
「どうかされましたの?何かお気に障る事でも?」
「いえ、すいません。失礼致しました。似たような話を最近聞いた事がありましたので…。どうぞ、続けていただけますか?」
うん。私も聞いた事あるよ。アイシャ。
イスネリさんは不思議そうな顔をしていたが、話を続けてくれた。
「承知致しましたの。それでもわたくしは交流する人間の優しさや、人間としての楽しさに触れたくて、時々群れを抜けていたのですが、とうとうお父様とその事で言い合いになってしまい、群れを飛び出してしまったのですの」
イスネリさんはそこまで話すと、お茶を一口飲んだ。
私はイスネリさんに尋ねる。
「それでイスネリさんはどこへ行くつもりだったんですか?」
「以前に村人として暮らした村に向かったのですが、わたくしがいた頃からもう数十年経っていて、もう知ってる人間も居なくなっていたので、あてもなく飛んでいたら、この大きな街を見つけたという次第でございますの」
「それじゃあ、行く所が無いんですか?」
「そうですの。ですが、わたくしもワイバーンの端くれ。何処なりとも生活する術はございますので、ご心配なく」
イスネリさんがそこまで話した所で、私はアイシャとクウネと目が合った。
アイシャは軽くタメ息をつく。
クウネは期待に満ちた目でこっちを見て、尻尾を振っている。
よし!その期待に答えましょうっ!
「イスネリさん。良かったらウチで暮らしませんか?」
私がそう言うと、イスネリさんは唖然とした表情で私を見て、
「え?よろしいんですの?わたくし、ワイバーンですけど…」
「でも、見た目は全然人間じゃないですか」
「今はスキルを使ってますので、確かに人間の姿をしてますけど…。迷惑じゃありませんの?」
「実を言うと、私も、ここにいる獣人のクウネも家出してきて、最近この家で暮らし始めた所なんですよ」
「ええ?貴女方も家出を?」
「はい、お恥ずかしながら…」
私達は私達とクウネの家出の経緯をイスネリさんに話した。
「これはなんという神のお導きなのでしょう!わたくしと似た境遇の方にお会いできるなんて!」
んー、なんかえらく感動されてしまった…。
「貴女方が良ろしければ、是非、滞在させてくださいまし!雑用でも何でもさせていただきますの!」
「いや、そんなに…。部屋ならまだ全然余ってますし」
「路頭に迷ったこんなワイバーンを拾ってくださるなんて…」
「大丈夫ですよ。寝泊まりする所を探すのも大変でしょ?」
「本当にありがとうございますの!このご恩は必ずお返し致しますの!不束者ですが、よろしくお願い申し上げますの!」
「こちらこそ、よろしくね。私はラフィーネっていうの。こちらがアイシャで、こっちがクウネ」
「ラフィーネ様、アイシャ様、クウネ様ですね。わたくしの事はイスネリとお呼びくださいまし」
「そんな、様なんていらないよ。私もラフィーネでいいよ、ね。アイシャ、クウネ」
「ええ、気兼ねなくお呼びください」
「クウネもクウネでいいよ!」
「ありがとうございますの!」
すると、クウネは立ち上がり、
「じゃあ、ラフィーネ!準備してきていい?」
「えっ?何の準備?」
「お風呂!みんなで一緒に入ろっ!」
クウネ以外の三人は絶句した。
…え?初対面のワイバーンと一緒にお風呂入るの?
こうして我が家に新しい同居人が増えました。
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