第33話 庭に居た理由
ワイバーンはその体を丸めて、すやすやと眠っている。
暗がりではあるが、ハッキリと分かるぐらい、その体は鮮やかなグリーンだ。
アイシャは懐から短剣を出し、私も護身用の三日月を出した。
クウネは武器を携帯していないので、私とアイシャの後ろに控える。
ちょっとずつ、ワイバーンとの距離を詰めていく。
「あれって、さっきバスクさんが話してた神竜…かな?」
「もし神竜なら、私達は多分ひとたまりもありませんね…」
ごくり。私は思わず息を飲んでしまう。
ガサッ。
ワイバーンの体が動いた。
その頭がゆっくりと持ち上がり、その双眼がこちらを捉える。
私は三日月を宙に浮かせ、臨戦態勢を取る。
私達を認識したワイバーンの双眼が大きく見開く。
アイシャが身を低く構え、攻撃に備えた。
ワイバーンの眼がキョロキョロと動いた。
「あ、あれっ?」
ワイバーンは自分の体を見て、驚きの声を上げた。
「あれ?何で戻ってしまってるの?」
ワイバーンが喋ったー!
私達は驚いていると、ワイバーンはまたこっちを見て、私達に話し掛けた。
「ご、ごめんなさい!ちょ、ちょっとお待ちくださいですの!」
ワイバーンはそう言うと、ぼんっ!という音とともに辺りに煙が舞った。
煙が晴れると、そこには鮮やかなグリーンの服を着た少女が立っていて、ワイバーンの姿は消えていた。
「驚かせて申し訳ございませんの。勝手に敷地に入って休んでいた事はお詫び致しますの」
少女はそう言って、私達に頭を下げた。
えっ?状況の整理がつかないんですけど……。
私はキョトンとして、その少女を見た。
するとアイシャがその少女に話し掛ける。
「貴女はさっきのワイバーンなのですか?」
「はい。申し遅れましたの。わたくし、イスネリと申しますの。お察しの通り、先ほどのワイバーンでございますの」
ワイバーンが人間になったーっ!
えっ?えっ?よく分からないんですけどっ?
「そうですか。一度お話をお伺いしたいので、家の中へ入られますか?」
「まあ!お招きいただけるのですか?」
「もちろん、イスネリさんがよろしければですが…」
「光栄でございますの。それではお言葉に甘えさせていただきますの」
冷静っ!アイシャ、冷静すぎるよっ!
私とクウネはあんぐりと口を開けながら、アイシャとそのイスネリと名乗った少女の後に付いて、家の中に入って行った。
アイシャがお茶を入れに行っている間、私とクウネは向かい側に座るイスネリさんの事をチラチラと見ていた。
そこへアイシャが四人分のお茶を持って、部屋に戻って来た。
「これは、これは。ご丁寧にありがとうございますの。遠慮なく、頂戴致しますの」
そう言ってイスネリさんは、出されたお茶を一口飲んだ。
「あー、美味しいですの。本当にありがとうございますの」
イスネリさんはカップを置くと、私達に話し出した。
「改めて、あなた方の敷地内に勝手にお邪魔して本当に申し訳ございませんでしたの」
頭を下げるイスネリさんに、私は尋ねる。
「いえ、それはもう大丈夫なのですが、イスネリさんはワイバーン…しかも神竜…ですよね?」
「はい。人間にはそのように言われておりますの」
イスネリさんはここから遥か離れた山岳地帯に住むワイバーンだそうだ。
モーネサウラの方まで飛んで来て、疲れたので人間の姿になってウチの庭で一眠りしたのだが、いつの間にかワイバーンの姿に戻っていて、目覚めたら私達が目の前にいたという事らしい。
「皆様のような優しい方のお家の庭で、幸運でしたの」
そう言ってイスネリさんはニッコリと微笑んだ。
私は戸惑いながら、イスネリさんに聞いてみた。
「神竜って、みんな人間の姿になれるんですか?」
「いえ、これはそういう恩恵でございますので、ドラゴンが皆、人間の姿になれる訳ではございませんの」
「スキルですか。でも、どうしてこんな所まで一人で来たんですか?」
そう尋ねると、イスネリさんは少し暗い顔になって、答えてくれた。
「実はお父様と喧嘩して、群れを飛び出してしまったのですの…」
出たっ!
はいっ!家出です!この娘も家出だそうですっ!
アイシャが驚きの顔の後、残念そうな視線を私に向けた。
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