第30話 ジーノさんからお誘い
グレイベア討伐のクエストから三日後、私達の家にお客さんが来た。
ジーノさんが果物の差し入れを持って、私達の様子を見に来てくれた。
「ラフィーネ嬢。アイシャさんとクウネちゃんの具合はどうですか?」
「ありがとうございます。アイシャはもう大丈夫ですし、クウネもまだ少し腕にアザが残ってますけど、痛みはないみたいで、順調です」
「そうですか、それは良かった。そうそう、作業員のドワーフ達からすごく感謝されてましたよ」
「こちらこそ本当にありがとうございます。ジーノさんが私達をクエストに参加させてくれたお陰です」
私達三人とジーノさんは家の居間で、お茶を飲みながら話をしていたが、ジーノさんは本題の話を切り出した。
「それで、今日僕がここに来たのは、明日の事なんです」
「明日?何かあるんですか?」
「実は皆さんが守ってくれた採掘現場はその後、グレイベアも出現せず、作業が無事に終了しましたので、ささやかですが、ウチで打ち上げ会をする事になったので、是非お三方に来ていただきたく、お誘いに来たんです」
「作業、終わったんですね。打ち上げ会ですか?」
「ええ、普段はあまりこういう事はしないんですが、今回の採掘は我が商会において、非常に重要な案件でしたので」
「そうだったんですね。何を採掘してたか、聞いてもいいですか?」
「そう言えば、まだ話してませんでしたね。一応、企業秘密でしたから。あの採掘場は転移ゲートを作る為の魔鉱石を採掘してたんです」
「魔鉱石?転移ゲートを作る?新しい転移ゲートを作るんですか?」
「ええ、実はもう何年も前から着手している案件で、ここモーネサウラから港町プルメイを繋ぐ転移ゲートを作る予定なんです」
後で説明してもらったのだが、港町プルメイは馬車で五日ほどかかる漁業や海産物が有名な町だそうだ。
転移ゲートを作るには王国から許可を取らないといけないし、魔鉱石も大量に必要となる。
更に転移師と呼ばれる転移に関する恩恵を持った人じゃないと作れない。
以前ジーノさんの商会で見た転移ゲートは人が一人やっと通れる大きさだった。
しかし今回は馬車がそのまま通れる大きさのゲートを作る予定なので、魔鉱石はとんでもない量が要るし、転移師も数人がかりで作らないと出来ないそうだ。
そこでアイシャが話に入ってきた。
「その大きさの転移ゲートの許可がよく取れましたね」
「その許可ってそんなに難しいの?アイシャ?」
「ええ、転移ゲートは使いようによって、物流の流れが大きく変わり、物の価値や経済の仕組みが大きく変わってしまう可能性がありますから、ゲートの管理体制や社会的信用などがしっかりしていないと、なかなか許可が出ないと聞いた事があります」
ジーノさんはそこで少しドヤ顔になって答えた。
「そうなんですよ。アイシャさん。よくご存知で。数年がかりでいろんな方面の方の協力や許可を取り付けて、やっと実現させたんですよ。トサレタ商会においての一大事業だったんです」
これが完成すれば、大幅な時間短縮ができ、プルメイの新鮮な海産物をモーネサウラで販売する事ができるようになる。
クウネがその話題に食い付く。
「お魚?魚がいっぱい町で食べれるようになるの?」
「そうなんだよ!クウネちゃん!モーネサウラは色んな物が集まる大都市なんだけど、海から遠いってのが、難点だったんだけど、この転移ゲートが完成すれば、新鮮な魚がいっぱい持って来れるようになるんだよ!」
クウネの目が輝いている。
すごい尻尾、振ってる…。
でも、私も楽しみだな。
獲れたての魚は生でも食べれるって聞いた事あるし、一回食べてみたいな。
するとジーノさんはまた私の方に向き直ると
「すいません。ちょっと本題から外れてしまいましたが、どうでしょうか?明日のご都合は?」
「ええ、是非お祝いさせてください」
「ありがとうございます。では、明日の夕方に迎えの者を寄越しますので、よろしくお願いいたします」
「え?迎えに来てくれるんですか?」
「もちろんです。公式なパーティーではないとはいえ、ラフィーネ嬢はグレリオン家のご令嬢です。迎えぐらいは用意させてください」
「そ、そうですか。わかりました。では、よろしくお願いいたします」
なんか久しぶりに令嬢とか言われて、照れ臭くなってしまった。
隣でアイシャが少し笑いを堪えているのが見えた。
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