笑みを浮かべて
都内の大規模なパーティー会場。
出入り口近くの看板には、「小説家になろうユーザー交流会 会場」と書かれたポスターが貼られていた。
私はそのポスターを横目に見ながら会場のドアを開け中に足を踏み入れる。
ロビーと会場を隔てる扉の前に机が並べられスーツ姿の男女が数人屯していた。
私はそこへ歩み寄り声をかける。
「受け付けは此方で宜しいのですか?」
スーツ姿の男性の1人が返事を返してきた。
「はい、そうです。
ユーザーの方ですか?」
「はい」
「では、ID番号をお願いします」
私はスマホでID番号を確認し伝える。
パソコンに私のID番号が打ち込まれた。
「ようこそいらっしました。
〇〇〇〇〇〇様」
そう言いながら男性は「〇〇〇〇〇〇」と書かれた名札を手渡して来る。
名札を受け取り胸の前に付けた私はロビーと会場を隔てている扉を開け周りを見渡し、旧知のユーザーを見つけて顔に笑みを浮かべ歩み寄って行く。
ある街の区画整理のため取り壊しが始まった空き家の取り壊しが、作業が始まった直後に中断される。
空き家の押し入れの中からホームレスらしい老人の遺体が見つかったからだ。
老人は寒さを凌ごうとしたのか薄汚れた毛布と新聞紙に包まっていたが、死ぬ間際に何か良い夢でも見ることができたのか、両手に握った壊れたスマホを見ながら顔に笑みを浮かべていた。