面接
「次の方、どうぞ」
「ひゃ、ひゃい」
俺は今、バイトの面接を受けている
まあ、初っ端から下を噛んだのだけど
バイトの面接でもこんなには普通緊張はしない
なのに俺は今、心臓の鼓動が8ビートを刻みまくるほどにガッチガチに緊張している
理由は簡単
ーーここが紅魔館だからだ
〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜
「こ、こここここここって....................!」
俺がとりあえず面接会場に行ってみるとそこのは『屋敷』があった
とても紅い、屋敷が
俺の頭の中は幻想郷を知っているならば一度は行ってみたいであろう『紅魔館』が頭の中に出てくる
だが、少し踏み込むには勇気がいる
俺は憧れの人や好きな人と出会うと極度に緊張してしまう
それが俺にとっての悩みだった
それを治そうと、亜科や風月に手伝ってもらったが治ることはなかった
そのため、俺はこの屋敷が『紅魔館』だった場合、まともに目を見て話せる自信がない
いや、話せるのならばまだマシだ
緊張で言葉が出てこなくなるのかもしれない
それに風月からは
『慎重にここを生きてくための職場や住むところを決めろよ、変なとこ住むと厄介事に巻き込まれるからな、ゆっくり生を謳歌したいのならば人里のバイトでもしてお金を稼ぐことをお勧めする。最後に一つ忠告だ、紅魔館、地底、永遠亭には働きに出ないほうがいい、あそこに行くと常人にはいくら命があっても足りんぞ』
風月が言ってた働くと命がいくつあっても足りない場所の一つに紅魔館があったからだ
もし、俺が紅魔館の主人であるレミリアや、レミリアの妹のフランを怒らせたら生きて帰れる気がしない
紅魔館のメイドの十六夜咲夜も怒らせるとやばい、ていうか紅魔館の人たち全員怒らせると死にかねない
そのため、怒らせないように機嫌を取りつつ、立ち回らねばならない
高校生である俺にはまるで日本の会社のような働き方に胃に穴が開きそうだが、それでも、憧れの紅魔館で働いてみたいという好奇心が勝ってしまい、風月の忠告を無視して紅魔館に来てしまった
「さて、覚悟を決めていくか...........」
俺は緊張と好奇心で震えている体を動かして紅魔館に足を運んだ
〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜
「あなたの特技はなんですか?」
「そ、そ、それは、人をまねることです」
「人を真似ることとは?もう少し詳しくお願いします」
「は、はいぃ、昔から人がしていることを真似るのが得意で、自分がやったことがないことでも人がしてるのを見れば大体できます、料理とか家事とかも全然できます!」
自分の数少ないアピールポイントを少し声を大きめで主張する
極度の緊張の中でも採用されたいという思いでなんとか声をあげた
ていうか............
(なんで面接官が咲夜なの〜!?)
さっきから緊張しっぱなしですよ
「そうですか、物覚えが早い、ということですか?」
「ま、まあそういうことです」
その後も色々と質問されて少ししどろもどろになりながらも質問を返した
面接を終えて紅魔館を出ると一気に緊張から解放されて
「ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜!緊張で胃に穴が開くかと思った............」
こんな調子でもしこの面接に受かったら紅魔館でやって行けるだろうか?
そんな不安を抱えつつ、充は帰路についた
「.............あ!俺家ねぇじゃん!!」
それに気づいたのはもう日が完全に落ち切る前の黄昏時だったが
〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜
「お嬢様、誰か面白そうな方はいらっしゃいましたか?」
紅魔館のメイド長、十六夜咲夜は我が主人であるレミリア・スカーレットに今日の面接の結果を尋ねる
「そうねぇ、あの『木頭充』という男がなかなか面白いそうな運命だったわ、咲夜、その男を新しい使用人にしなさい」
「仰せのままに」
そうして、充は採用された
今、その充はというと..........
〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜
「う〜ん、どうしたもんかね............」
1人、日の沈んだ人里で寝床を探して歩き回っていた