ニューゲーム
「なんとなく........かしら」
「............は?」
コイツ、なんとなくで神隠しをしているのか?
「おい、冗談じゃないぞ。お前の気分で呼び出された俺たちの気持ちもちょっとは考えろよ」
すると紫は「あら、そうかしら」と定番の胡散臭い笑みをこちらに向けながら
「木頭充って子、結構この世界に、この幻想郷に来れたことをかなり喜んでいるわよ」
「はあ!?.........ってそういえばあいつの『幻想入り』に付き合ったら本当にこっちの世界に来れたんだったな」
はあ、と俺はため息を吐く
「今頃、藍に鼻の下伸ばしながら話してんじゃないの?」
「いや、それはない」
俺は紫の予想を速攻で否定した
「あいつ、好きな人とかに散々『会いたい、会いたい』言ってんのにいざ会うと緊張でガチガチに固まって一言も喋れなくなるからな、今頃気まずい雰囲気でも醸し出してるか、亜科がここの事でも聞いてんじゃねえの?」
俺がそんなことを苦笑気味言ってやると
「意外と木頭さんって初心なのね」
「めっちゃ初心だよ」
っていかんいかん
話が脱線してしまっていた
「それで、話は脱線したが俺はもうここを去りたいんだが」
「本当にそれでいいの?」
「は?」
どういうことだ?
そんな視線を紫に向けるとそれを感じ取ったのか
「だって木頭さん、すごくここ来たがってたから多分すぐには帰りたがらないわよ?それに仮に貴方の帰るためのお金はあっても木頭さんや斉藤さんの帰るためのお金がないじゃない」
「それなら問題ない、俺が前ここに来たときに貯めたお金全部使って俺らは帰る」
無駄にお金貯めておいてよかった
前ここに来たときはどんなことがあるかわからないと思ってたくさん金は貯めていた
それが功をなすとは思っていなかった
やっぱり貯金って大事だな
「てことで、俺たちはもう帰らせていただく。じゃあな、紫」
「お金ならもう私たちが全部つかちゃったのだけれど」
「...........はい!?」
こいつ今なんて言いやがった!?
「俺の金全部使ったのか?!」
「ええ、もういらないだろうから、どうせならつかちゃったほうがお金たちも幸せじゃないかと思って」
「なんだよそれ!霊夢じゃないんだから!」
まあ、まあ、と紫が激昂する風月を宥めながら
「でもまあ、使っちゃったものはしょうがないじゃない。それより今はお金集めに勤しんだらどうなの?」
「自分で使っておいて.............!」
だがもう、こんなことでいちいち腹を立ててたらこいつの場合キリがない
「あああ!くそ!わかったよ、集めりゃいいんだろ!?じゃあ今から行ってくるよ!」
ズカズカと部屋から出ていく風月を見ながら紫は
「ーーーいってらしゃい、風月」
と、誰も聞こえないような小さな声でポツリと呟いた