八雲紫
破月のピアノ演奏を聴きながらこれを書いています
もし知らない人がいたら聞いてみてください
「相変わらずザ・和風建築だな、ここは」
三年ぶりにマヨヒガに来てみても全然変わってなかった
日本庭園のような庭も
和室も、調理場も
何も変わっていなかった
まるで、ここだけ時間が止まっているように
廊下を歩きながらそんなことを呟くと藍が
「ちゃんと風月の部屋も残してあるから久しぶり行ってみたらどうだ?」
「本当か?律儀に残してくれてたのか。ありがとな、藍」
すると藍は手を振りながら
「いや、管理してたのは紫様だ。掃除なども全部してたんだぞ?私が『代わりにやりましょうか?』って言っても頑なに役目を譲ろうとしなかった。『もし、帰ってきたときのために私がやらなきゃいけないの。如何わしい本とかあったらあいつがかわいそうじゃない?』って言って毎日掃除してたんだ」
意外だな、紫がやってやのか
第一、部屋が残ってたのも驚きだが、それを管理してたのが紫だったことにも驚いた
..............最後、要らん気遣いがあったが
断じて俺はいかがわしい本など持っていない
「じゃあ久しぶりに行ってみるか、先に亜科と充は居間に行っていてくれ」
俺はそう二人に言い残した後、元自室に向かって行った
「相変わらず、変わらないな。風月は」
〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜
意外と三年も前なのにも関わらず場所は覚えていた
まるで、吸い込まれるように元自室に向かっていく
そしてそこには懐かしいネームプレートが扉に立てかけてあった
小綺麗な、でも手書き感が残っている字で
『一風月』と書かれていた
元とはいえ自分の部屋なのに久しぶりでドアを開けるのに少し躊躇ってしまう
誰もいないのにノックをして入ろうとした時
「ーーどうぞ、お入りください」
聞き覚えがある、悪友の声が誰もいないはずの自分の部屋からはっきりと聞こえた
ドアを開けた先には少し小さくなった机の椅子に腰掛けている、八雲紫の姿があった
〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜
「で、なんで俺の部屋にお前は居たんだ?」
まさかの出会いの後、俺はなぜ紫がここにいたのかを問いただした
が、
「あら、ここの部屋を管理している人がこの部屋にいることはそんなにおかしいことかしら?」
相変わらずのむかつく微笑でのらりくらりと回答するだけだった
こいつがこれを仕出すと何がなんでも本当のことを喋らないため、俺はため息を吐き、紫がなぜここにいたかを聞くことを諦めた
だが、ちょうどいい
今、この部屋にいるのは俺と紫だけだ
ならこの場でなぜ俺たちをこの世界に呼んだのかを心置きなく問いただせる
「なあ、紫」
「なんですか?風月」
俺はスゥッと息を吸い込み
「なんで俺、俺たちをこの世界に呼んだんだ?」