異世界では国語の教師は魔法の教師にあたるのですか?
この物語は、現実の様々な研究成果を異世界の教育で使うためにはどうすればいいのかを大真面目に考える物語です。そのため、人だけではなく、魔人やエルフに教育したり、はたまた魔法を人に教えたりするといった物語です。筆者の専門である領域を簡単な小説を通して楽しみながら読んで欲しいと思って、研究の息抜き程度に筆者が書いているものです。そして、研究の合間なので、一週間に2本くらいのペースになると思います。以上のことを踏まえた上で、どうぞご覧ください!
「とうとう、ぼくも卒業生を出すことになるとはなぁ」
初めての卒業生を見送った後の教室を、国立業平は教室前から眺めていた。
業平は今年度、初めて高校3年生の担任となり、国語(現代文)の先生として、受験生の進路指導や卒業式などの準備を行なっていた。業平は自分の受け持ったクラスの生徒全員を卒業させることができて、言い知れぬ充実感を感じていた。いつまでも、教室前に立っているわけにもいかないので、職員室に戻ることにした。
職員室に入り、自分のデスクに向かうと、同僚の獅童利休が声をかけてきた。
「おい、業平、初めて自分の卒業生を送り出した気分はどうよ?」
利休とは大学からの同期である。大学卒業後は、二人とも大学院に進学し、利休は修士課程まで、業平は博士課程まで進学していた。そして、その後利休からの勧めもあり、同じ私立の高校で勤務している。利休は筋肉質な体つきと強面の風貌もあって生徒指導を担当しており、生徒から「鬼獅童」と呼ばれている。そのような見た目をしているが、専門科目は数学で、趣味は家庭菜園という意外な一面も持っている。
業平「まぁ、わるくないよ。なんていうのかな、達成感みたいなものはあるよ。それにようやく一人前の教師になったような気がする。」
利休「そうだよな、俺も初めての卒業生を出した時の晩なんて、焼酎片手に一人騒いだもんだ。どうだ、今晩お祝いがてら呑みに行かないか?」
「それなら私も呑みに行きたいです!」
業平のデスクの前にいる池本小町が反応した。小町は小柄なボディとその可愛らしい見た目で、主に一部の男子生徒からは絶大な人気を得ている情報の教師である。この3人のメンバーは来年度新入生を担当することになっている。
小町「来年度は、先生たちと同じで新入生担当ですし、仲良くなっておきたいなぁと思いまして、、、」
利休「お、いいじゃないですか!じゃあ、蒲原先生も呼ばないと。それでいいですよね?」
業平と小町がうなずいた。蒲原清盛は社会の先生で、主に倫理を教えている。学生時代は哲学を専攻していたようで、いつもぶつぶつと何かを唱えている。そのような話をしていると、ちょうど、清盛が職員室に入ってきた。
利休「清盛先生、今晩呑みに行かないですか、ここにいるメンバーと一緒に!その、卒業式のお祝いと来年度一緒に新入生を教えることになっているわけですし、その打ち合わせもかねて。」
そういって、利休は業平と小町を指差していた。
清盛「そういうことでしたら、ぜひ参加したいと思います。」
利休「じゃあ、仕事終わりにみんなで呑みに行きましょうか。」
業平「すまん、ちょっとだけ、やり残した作業あるから、みなさんは先に行っててくれないですか?」
利休「遅れるって言っても業平ならすぐ終わるでしょ?それならみんなで待っているよ。それでいいですよね?」
小町「いいですよ〜」
清盛「特に問題ないです。」
業平「ありがとうございます。それでは、できるだけ早めに終わらせますね。」
業平の作業が終わる頃には、4人を除く全ての先生が帰宅していた。
利休「終わった?それならそろそろ移動しようか。今日は呑むぞ〜!」
業平「ほどほどにしないと、前みたいに保護者からクレームが来るぞ。すこし前に、お前のせいで俺まで怒られたの忘れるなよ?」
小町「居酒屋で馬鹿騒ぎして、クレームがきていた先生ってお二人のことだったんですか?」
利休「つい、騒いでいたら、保護者が働いているお店だったもので。保護者が働いているのだったら先に言わんかい、とか思うよな、業平?」
業平「いや、、、それは無理だろ」
そう言ってみんなで話しながら、そろそろ職員室を出ようとしている時に、ガラスの割れる音が聞こえた。
清盛「どこかのガラス割れましたよね?」
清盛が体をびくつかせながら言った。
利休「なにかが倒れたのかもしれない。確認しに行こう。」
それにみなが同意して、4人は音の鳴った方向へ向かって行った。ガラスが割れたと思われるのは体育館に渡り廊下を歩いて行った。すると体育館の中央には奇妙なバスケットボールくらいの球体が4つ落ちていた。
利休「こんなボール卒業式で使ったか?」
業平「使ってないだろ。誰かの悪戯か?すぐそこの窓ガラス割れているし、、、」
利休「何はともあれボールを拾って、窓を修理して呑みに行こうか。業平はホウキとってきてよ。ガラスの破片は捨てておかないと。」
そう言って、業平はホウキを取りに体育館の用語倉庫に向かった。用語倉庫でホウキをとって、体育館に戻るとそこに3人の姿はなかった。しかし、そこにはボールが一個だけ残されていた。
「みんなボール3つ持っていってどこに行ったんだ。ゴミ袋でも取りに行ったのかな。」
そう思いながら、残されたボールを業平はまじまじとみていた。
「それにしても不思議なボールだな。」
そう思い、手にとってみると、突然ボールが光り、業平の体が吸い込まれ始めた。業平は抵抗もできずにそのままスルスルと吸い込まれてしまった。すると、次の瞬間、じゃぶんと水の中に体が入っていた。
「ここはどこだ???苦しい、、、」
そう思い、業平はもがいていると、光りが指している水面が見えたので、そこに向かって泳いで行った。水面に顔を出すとそこは一面緑に囲まれた森の中であった。
「どゆこと?」
業平は状況が飲み込めず、水面に浮かんだまま立ち尽くしてしまった。