第2話・計画始動?
「遅れる!!」
昨夜、目覚まし時計をセットし忘れていた東城風はカップラーメンのかやくと粉末スープを口にくわえ、肝心のカップラーメンは水で浸され、蓋はいちよして刹那高校へ急いで足を踏み出した。
「あっ。背脂忘れた……」
風が突然止まると丁度十字路だったため、横から人とぶつかってしまった。
「すいません。怪我なかったですか?」
「……」
ぶつかった相手は同じ刹那高校で同じくらいの年齢らしい男子だった。
「あの……大丈夫ですか?」「……」
「あの……」
男子は無言で刹那高校の方へと歩いていった。
「なんなのよ!……いや待てよ……これって恋の」
「始まりじゃな―い」
「うわぁぁ!!」
風が変な事を考えているとまた別の男子生徒が耳元で叫んできた。
「うるせぇ。豊海!」
「おっす。師匠!」
「誰があんたの師匠だ!」
そう絡んできたのは豊海瑠璃だった。風の幼なじみだ。
「僕に恋心抱いてもいいんだよ。」
「セクハラ」
「いいじゃん。いちよ幼なじみじゃん」
「幼なじみだけどお前はない。」「口悪いよ。師匠~」
「だからあんたの師匠……ってもうすぐチャイム鳴る時間!!」
二人は急いで刹那高校へ向かうのだった。
「なんとか間に合った。」
「瑠璃は?」
「豊海は……ってなんで知ってるの?」
「roin来た。」
roinはスマホのメールアプリだ。「そんな暇あったのかよ。」
「瑠璃の時だけ口悪いね……」
そう風と三毛弥生が教室で話しているとチャイムが鳴り、風たちの担任である鳴子遠が教室に入ってきた。
「静かにしろ。お前ら。今日は転校生がいる。」
周りは静かになるどころか、五月蝿くなった。
「五月蝿いです。静かにして下さい」
そう言ったのはクラス会長の瀬戸瀬麗奈だった。真面目な性格かつ男子生徒のみならず女子生徒も認める美人だった。
「静かにします。瀬戸さん!」「分かりました~」
男子生徒中心に直ぐに静かになり、担任鳴子は話を続けた。
「みんな仲良くしてやれよ。教室に入って来ていいぞ。算学!」
そう呼ばれると一人の男子生徒が入ってきた。
「あっ。無言野郎!」
入ってきた男子生徒はさっき、風とぶつかった男子生徒だった。「算学数(さんがくすうです。宜しくお願いします。)」
見た目はイケメンとは言えず、左目の下に黒子が付いていた。
「みんな仲良くしてやってやれ。」
この出会いが普通の恋愛小説とは違う恋愛小説いや、恋愛物語いや、れ……
「何ブツブツ言ってるの?」
「えっ?」
風は気付かぬうちに声に出してしまい、弥生に注意されてしまった。
「算学は校庭側一列目最後な。」「いや、そこは主人公の私の隣やろ!」
「だから何言ってるの?」
また風は弥生に注意された。風の席は廊下側より二列目の四番目だった。弥生はその後ろだった。転校生の紹介と初めの挨拶は終わり、十分の休み時間に入った。
「名前変わってるね!」
「算数やっぱ得意なの?」
「好きなものとかある?」
「今日の昼飯俺と一緒な」
早速算学の周りにはクラスの生徒のみならず、隣のクラスの生徒たちにより質問攻めになっていた。「ねぇ。風。無言野郎って言ってたけど、知ってるの算学君のこと?」
「自分が遅刻なりそうで走っていた時、ぶつかったの。しかも、ぶつかった時に無言で逃げたの!」「逃げては無いと思うけど……」
チラッと算学の方を見ると普通に会話していた。
「なんで私の時無言だったのよ……」
算学は思っていた。
「あの子……ついに……久しぶり。またせたね。」
「あっ。カップラーメン忘れてた……」
「カップラーメンいいですねぇ~」
風がカップラーメンのことを思い出した時、瑠璃が絡んできた。「豊海。お前……」
瑠璃に風がイラつきをぶつけようとした時、急に教室の扉を開け、二人の女子生徒の姿があった。そのウチ、小さい方の女子生徒が口を開いた。
「あの……東城さん!」
「えっ?!私?!」
「その……豊海さんのこと……私に下さい!!」
「はい?!」
どうやら風の恋愛計画は上手くいかないようです……。