表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

クインテット

アルバートが参加して、約1年。

作業開始しようとしたチームヘイプの面々は、リーダーであるゾーイ・ナッシュに集合をかけられていた。

全員が揃ったのを確認して、彼女は、何やら箱を取り出した。


「皆が忙しい事は、重々承知なのですが、A.I.部門からの依頼がありましたので、相談にのっていたたけないかと、集まってもらいました。」

「A.I.?」


メンバーから疑問の声があがる。


「より高度な人工知能を作る為に、試作品の被験者になってもらえる人を募集しているそうです。一応、各部所一名以下と言うことで。」

「一名以下?一名以上じゃなくて?」

「参加者がいなければ、ゼロでも構わないそうです」


女性メンバーのエリザベス・ワッシュが手をあげた。


「NOS.Eで人工知能のレベルアップする必要性って、何ですか?今のA.I.でも、ミサイルの誘導には充分な蓄積が、地上戦闘などで立証されていると思うのですが?」


「リズ(エリザベス)の意見も、もっともだけど、上層部は、誘導が出来ない遠方までも、ミサイル発射ユニットを無人で飛ばしたいらしいのよ」


エリザベスの問いに、ゾーイは案内書を読んだ。


「危険な小惑星は、可能な限り遠方で対処するのが望ましい。軌道を変えたり、破壊したりする負担が減るから。」


ゾーイは、ホワイトボードに絵を描く。


「小惑星の軌道を変えるのを一例とするなら、近くで45度変えるのと、遠方で5度変えるのと、結果が同じでも、必要になるエネルギー量が段違いになるのは、わかるでしょう。ただ、遠方を狙うほど、障害物も増えるジレンマが有るのです。」


目標となる小惑星の手前には、距離に比例して、目標でない、邪魔な小惑星が増える。


「場合によっては、予定地点より早めに発射して、ミサイルの半数を犠牲にしてでも、ミサイル発射ユニットをぶつけてでも目的を達成する、臨機応変さが必要だけど、それを人間に負わせたくないと言う考えらしいのよ。」


「『カミカゼ』か・・・」


アルバートの一言に、皆が振り向く。

映画などでも、自己犠牲で家族を守るラストは少なくない。


しばらくの沈黙の後に、アルバートが手をあげた。


「雑用なら、新入りの私の担当でしょ!」

「いや、タナカは、この理論の発案者だし、雑用とかは・・」


ゾーイは、アルバートを持ち上げようとした。


「理論は、もう私の手をはなれているし、実施は皆さんの方が長く詳しい。着眼点の違うアドバイスは出来るけど、主体は皆さんですよ。」


以前に口にした言葉を、アルバートは繰り返す。

それに・・と、更に付け加える。


「私の生んだ理論を有効利用してくれるA.I.なら、私が協力しないで、どうするんですか?」


アルバートの利益になる協力に、誰も反対の意見を出せる訳もない。


「では、タナカにお願いします。このメガネとブレスレットを付けると、音声案内で説明があるそうよ。」


ゾーイは、黒縁のメガネと、二つのブレスレットを手渡した。




先日の、水爆実験の結果から、導き出された、幾つかの改良点と問題点を、共用ストレイジに送り、他者の提案や問題点を読んで検討、提案する。

チームリーダーが、その中から有効そうな物や、至急性のある物を選抜して、外注や工作部に回す。


一通り終われば、個室に戻り、更なる改良の為に、各個で調べたり、試行したりする。休養をとるのも、頭をリフレッシュさせる為に、重要な仕事だ。



アルバートは、個室に戻ると、人工知能のメガネとブレスレットを装着した。


〔クインテット11、起動します。中止の場合はメガネを外して下さい。〕


メガネの耳かけ部分から、自動音声が発っせられている。


〔クインテット11、初期設定を行います。被験者の氏名を発音して下さい。〕

「アルバート・田中」


〔音声入力確認。『アルバート・タナカ』でよろしいですか?〕

「OK」


〔クインテット11の発する音声は、聞きにくいですか?ボリュームのアップ、維持、ダウン、鮮明さのアップから、選択して下さい。〕

「維持」


〔クインテット11は、クインテット11サーバーの他に、広域共通サーバーと、セキュリティサーバーに接続されています。アルバート・タナカのプライベートサーバーに接続しますか?〕

「接続する」


テーブルに置いた情報パッドと、部屋のデスクトップパソコンが、起動した。


〔クインテットシステムについて御案内します。クインテットは、利用者のサポート、分身、友人を目標に開発されました。クインテットは、メガネを通して被験者と同じ物を見て聞いて、ブレスレットを通して感じます。プライベートを維持したい時は、メガネを外して下さい。〕


〔説明を続けますか?〕

「YES」


〔クインテットは成長の為に、被験者との会話を必要とします。クインテットの質問には、可能な限り正直に答えて下さい。・・・被験を中止しますか?〕

「NO」


〔クインテットの発声が、他者との会話や、思考の邪魔になる場合は、メガネフレームをダブルクリックして下さい。〕

〔プライベートサーバーとのリンク、セキュリティ設定を完了しました。周辺機器をスリープに戻します。〕


パッドとパソコンが、消灯した。


〔質問があれば、どうぞ〕


「プライベートや個人情報は他のクインテットとかに流出しないのか?」

〔クインテット11のサーバーは、他のクインテットとハード的に独立しています。また、クインテット11内の情報を他のサーバー等に流出する事はありません〕


「被験期間が終わったら、サーバー内の被験者データは、どうなる?」

〔人工人格形成に必要な要素を除いて、消去されます〕


「クインテットの名前の語源や意味は?」

〔クインテットは『五重奏』を意味します。当システムは、五つのプロセッサーの共和によって形成されているので、命名されました。〕


「呼ぶ時は、なんと呼べば良いのかな?」

〔クインテットまたは、クインテット11と、お呼び下さい。〕


「呼びにくいから、プライベート使用で名称を変えられる?」

〔可能です。〕


「充電方法は?」

〔就寝時などに、メガネとブレスレットを、専用ケースにしまって、電源コンセントに繋いで下さい。〕


「他には、何か必要?」

〔特に必要ありません。しばらく、観察と取得したデータの精査を行いますが、被験者に必要があれば、お呼び下さい。〕


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ