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第二話 パーティのハーレム化だけは避けたい

「さて、改めて紹介させていただこう!この老人がお主の召喚儀式を執


王の言葉で、神官服の老人が一歩前へと歩み出る。


「以後、お見知り置きを」


ローランドは丁寧にお辞儀をした。


「そして、このわしこそが!ゲンナイオン王国第18代国王!アルフレッド18世である!」


玉座から立ち上がった王は、昨日のそれとは比べものにならないハイテンションでそう言った。


「は、はあ…」


こちらは早朝5時30分に叩き起こされ、すこぶるローテンションの俺が答える。



結局あの後、俺は城内の来賓用の部屋に一泊することとなった。


この世界で一夜を明かして気づいたのは、1時間は60分、1日は24時間、1ヶ月はおよそ30日…といった具合に、時間の概念が元の世界と共通していること。また、発声言語は日本語のそれに準拠しているが、文字については全く異なるものが使われていることである。だが不思議なことに、俺にはそれらを読むことが出来、また日本語を記述しようとすると勝手にその言語へと変換されてしまうのである。召喚時に会得した能力なのかもしれないが、見たこともないはずの文字を読み書きできるというのは、なんとも奇妙な感覚であった。



「…では早速だが、本題に入ろうと思う。お主が勇者になるに際してつけた条件の一つ目についてじゃが、相応しい仲間が見つかった。では、入ってよいぞ」


王が声をかけると、玉座の右側のドアが開き、三人の人物が入ってくる。



年齢は俺と同じくらいだろうか。ブロンドの髪を短く切りそろえ、いかにも重そうな鎧を身につけている。槍と盾を手にしたその姿は、遠目から見ると男と見まごうほどだが、

大きく吸い込まれる様な大きな瞳の収まった顔立ちは、明らかに可憐な少女のそれだった。



その右隣には、黒を基調としたローブに身を包み、大きめのとんがり帽子を被った、黒魔道士と思われる少女が立っていた。艶やかな黒髪を腰のあたりまで伸ばし、眠たげな半開きの瞳と両手杖を抱きかかえる様にして持ったその姿からは、幼さを感じさせる。



最上手には、黒魔道士の少女とは対照的な白のローブに身を纏った女性がいた。冬兎の様に真っ白な肌と髪、切れ長の瞳とスッと通った鼻筋、そして何よりも特徴的な長く尖った耳が、彼女がエルフ族の血統を引くものであることを示している。その豊かな胸の膨らみとボディラインから、三人の中で最も女性的な雰囲気を醸し出していた。




「王様…話が、違うっすよ…」


その明らかにハーレム化確定のパーティ編成に、俺はがっくりと膝をつく。


「まだ何かあるのか?全くもう、最近の若いモンは面倒臭いのぉ〜」


「王様も十分面倒臭い方だと思いますが…」


ローランドがボソリと呟く。


「ローランド、何か言ったか?」


「いいえ、何も?」


「…兎も角、見た目に惑わされてはならんぞ。彼女たちは、確かな実力を持った王国騎士団随一の優秀な戦士たちじゃ。何も心配することはない。お主は安心して…」


「そういうことじゃないでしょおおおお!」


俺は王に向かって叫び声を上げる。


「じゃあなんじゃ!他に何があるというのじゃ」


王が俺に尋ねる。



「王様、考えてもみてください!野郎ならまだしも、可愛い女の子たちが必死に戦っている中、自分だけが守られる勇気があなたにありますか!?なんか逆に守ってあげなきゃいけなくなるじゃないですか!」



「まあそこはさあ、ほら勇者だし、多少は、ね?」



「俺は自分のことを守ってくれる仲間を要求したんです!守ってあげなきゃいけない仲間じゃないでしょうが!何度も言いますが、俺はもう死にたくないんです!」



「でももう連れて来ちゃったし…まあ適当に頑張ってねー!明日出発式だから、よろしくー!」



昨日の惨劇を思い出したのか、王は逃げる様にして出ていく。


「失礼致します、勇者様」


ローランドもそれに続いた。



女性陣は理解が追いついていないといった様子で口を開けていたが、しばらくすると鎧を着た少女がこちらにつかつかと歩いてくる。


「勇者様、先程の言葉はどう言うことですか!?私たちは王に忠誠を誓った誇り高き騎士です!女子供と一緒にはしないでいただきたい!」


少女は、怒り心頭といった様子で俺に言う。


「いや別に、俺が言ったのはそう言うことじゃなくて…」


俺が対応に困っていると、彼女の背後からエルフ族の女性が小走りで近づいてきた。


「アリシア、別にこの人は貴方を貶めるつもりで言った訳ではないわよ」


「…ですが…」


「とにかく、一旦落ち着いて!」


エルフ族の女性に言われて、鎧を着た少女は黙り込む。



「なんか…色々すいません」


俺はエルフ族の女性に頭を下げる。



「いや、いいのいいの。あ、えっと…じゃあまず自己紹介しましょうか。私はリリーナ。白魔道士よ」


エルフ族の女性は、ぎこちない笑顔でそう言った。



「カミラ、黒魔道士」


黒魔道士の少女は半開きの瞳のまま言う。



「…槍騎士のアリシアです。勇者様、以後お見知り置きを」


鎧を着た少女は、不服そうな顔で言った。



「…今回勇者をやらせていただきます、堂本玲です。不甲斐ないところもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」


俺は三人に再び深々と腰を折った。


「こちらこそよろしく」


リリーナがにこやかな表情で言う。


「よろしく頼む」


と、こちらはカミラ。


「よろしくお願い致します」


アリシアはまだ少し不満げである。



「さて、レイよ、自己紹介も終わったことだ。そろそろお開きにしよう。私はもう眠りたい」


カミラが一つあくびをする。


「カミラ様、まだ朝の7時です。そんな状態では魔王討伐の旅など耐えられませんよ」


アリシアが呆れ果てた顔で言った。


「私は夜行性だ。昼間の活動は性に合わん」


「そんなの、ただの言い訳にしかなりません!日頃から修練を怠っているからその様な怠けた体質になるのです!」



「あの〜、これって…」


「あ、これ?こんなのいっつもよ、貴方もしばらくの間は行動を共にするんだから覚悟しといた方がいいわよ」


リリーナは笑いながらそう言った。


「そういえば貴方、こっちに召喚されてから城を出たことないのよね?」


「はい、まだですね…」


「城下町を案内してあげるわ。ついて来て」


そう言うと、彼女は腕を引っ張るようにして俺を城外へと連れ出すのであった。

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