巫女殺めの神 共通①
「今日も快晴ね……」
早朝にやる素振りは日課であり、欠かしたことはない。
このエルジプス王国は近代化の為に女性兵士を増やしている。
不謹慎ながら戦の極限の中で恋が芽生えると話題らしい。
私の場合は婚活ではなく、むかし命を救ってくれた人がいて、騎士という存在に憧れたから。
騎士をしていればいつか彼に再開する機会もあるだろう。
そんな不純な理由なので婚活目当ての子女達を馬鹿にできない。
私が女騎士を名乗るのも気が引ける。
「アイハ様!!」
乳母のケイトが慌ただしく庭へ走ってきた。
「どうしたの、いつも‘はしたない’等と言う貴女がそんなに息をきらせて走るなんて」
「神殿から……神官長様がいらしているんです!」
このエルジプス王国の神官長は国王と対等とされる女傑であり、この国影の支配者とも囁かれている。
「このような不躾な格好で申し訳ありません。フェルータ家・長女アーリッファでございます」
急ぎらしくドレスを着る時間はないので騎士の格好のままでいいだろう。
「気になさらないでください。お噂はかねがね……」
神官長補佐の女が私の機嫌をとろうとする。
「単刀直入に言います」
「どうぞ」
「貴女は神託により神殿巫女に選ばれました」
氷のように冷たく鉄のように硬そうな顔をした神官長が淡々とのべた。
「私が巫女ですか!?」
「そうです」
神殿巫女は100年に一度、一人だけ選ばれる。
神の妻に選ばれると同じであり、エルジプス王国の女であれば王の妻より誉れ高い。