竜姫と王様の一方的な駆け引き・共通①
その世界には、剣と火薬とを扱う人間・魔法と薬学を行使する竜人族がいた。
互いに干渉しなかった二つの世界は、神の悪戯で、隔たりを解かれた。
今この時、二つの世界は合わさり、争いは始まる――――。
伝説とされてきた竜族達は、突如として人間の世界にあらわれた。
軍勢をなした黒き羽のヒトガタ。
バサり、バサりと翼を羽ばたかせ、上空から人々を見下ろす。
軍勢は、次々、地へ降りた。
翼を除き、人と変わらない姿。
しかし生きたように動く翼、それは人間の恐怖を煽る。
そして、中心に、狂気と可憐さをあわせ持つ竜族の少女がいた。
彼女はハルプロッドに、強い視線を送る。
若き王ハルプロッドは、その怯みなき堂々たる姿に、言葉では表現しえない感情を抱いた。
「貴殿等は何者だ」
「妾は竜魔族の皇女‘ドラセルナ’
父たる皇帝ドラグラドの命により…この世界を奪いに参った」
「では、こちらも名乗ろう。
余はハルプロッド…人間界の王だ」
「人間の王、我等・竜魔王帝国に降伏するがよいぞ」
好戦的な竜魔王は人間の国を乗っ取ろうとしている。
圧倒的な戦力の違い。
人間達に勝ち目はなかった。
「否、我等はいかなる者が、立ちはだかろうとも抗う!」
「脆弱な人間が…面白い!ならば妾を殺してみよ!!」
いがみ合った双方だが、当然人間の軍は疲弊した。
◆◆◆◆竜の娘は我が伴侶
人間などいつでも滅ぼせるので、一時的に休戦することになった。
「おつかれ様です王女、人間がびびってましたよ!!」
「怖かったああああ!!」
私は先程から張っていた気を抜いて、弱音をはく。
「情けないそれでもドラゴンのプリンセスか!」
「おお……お兄様!!」
泣きつこうとしたら軽く避けられあやうく転びかけた。
「触るな」
実は私は竜と人間の中間、ハーフドラゴン族の姫なのに、私は火が吹けないし、魔力があってもうまく扱えない。
というわけで兄の強すぎる魔力が私には悪い影響があるらしい。
―――でもきっと人間嫌いのお兄様だから私が嫌なんだわ。
私達はお互いの筆頭と補佐官で顔をあわせた。
父は身体が不自由でとてもここに来られる状態ではない為、私が代表をやる。
「よく来られた。プリンセス・ドラセルナ」
「……」
「ドグラルマだ」
私は兄を、ハルプロッド王は黒髪の男をつれている。
「そちらは?」
「彼は私の弟ラトニラル」
「なんだ人間の男、何故わらわを見ておる」
王弟が私をじろじろと見ていた。
「好きです!!」
出会ったその日に人間の王の弟に求婚されてしまった。
◆◆◆◆
あれから結婚してやればどうだと兄からは冷やかされた。
「私は彼の花嫁にはならないから!」
今日は休戦手続きなどでつかれた。
無駄に悪者のような黒のいかにも悪女みたいなアーマー。
『フンこの俺様が見立てたんだ。間違いなどあるものか』
なんて言われて流れで進撃までしてしまった。
あれから城へ来るたび、人間の女達にやっかみの視線をあびる。
間違いなく王弟の嫁の座を狙っている者等だろう
「困ったなあ……」
―――王子様の趣味はおかしい。