龍王と人・共通①
ここはとある小さな村、かつて純粋な人と純粋な竜が共存し、長きに渡り竜と人の混血で繁栄してきた。
しかし今では完全な人は村には居なくなってしまったのだ。
そしてこの国は龍の血を濃く継ぐ龍人がいる。彼等は代々王となり、私達の国を管理するのがならわし。
そして代々龍王に仕える役目のある家に生まれた私は、龍王を支えるより先に、幼い頃から長い間しっかりと修行して、数年で側仕えになった。
竜と人の混血は人より倍の数、長生きをする。
そんなただの人間から逸脱した私たちにとって同じ村の竜人と結婚し人生のパートナーを得る事はステータスであり むしろ未婚がめずらしいのだが――――――
「いつ結婚するの?」
「しない」
私はそんな親をつっぱねて、龍王に使え続けた。
竜王の花嫁がくるというので今日はいつもの数倍張り切っていた。
「今朝、竜王が亡くなられたらしい!」
竜王の次の次くらいに偉い人が、慌てながらそう言った。
なんということでしょう、竜王が死んでしまってはつかえる事が出来ない!
つまりこれからはフリーダム、というわけか!
「君が竜王の甥を連れてきてくれ」
先輩が冷静に言った。ああ、つまり新しい主をお連れしろというわけですか。
いいですよもうこれ以上の出世なんて期待なんて全然してなかったしいきおくれたから荷物纏めて村から出ようとか思ってたけど
「現在、次期竜王は別の国に住まれている。数年前、龍竜帝王の卵は人の国に落とされた」
「と言いますと、人間に擬態なされていた場合、区別がつかない可能性がありますね」
「長い刻、龍竜を見て来た我々ならばわかるはずだ」
私が連れてくるということはつまり、旅行にはいけるということですか先輩?
竜がいない国…わくわく。
◆◆◆◆
「先輩もいくんですか」
「当たり前だろう。というかなんだその荷物は旅行気分では困る」
「新婚旅行、なんつって」
「まったく冗談はやめろ」
そういえば龍王につかえるのは未婚に限るわけだから先輩も独身なのよね。
せっかくの美形なのに、もったいない。
まあ竜人の村には美形しかいないので普通レベルだが、私の兄には負けるだろう。
「先輩は竜人の中でも格好いいです。兄には負けますけど」
「だまれブラコンが」
兄は外交をしているので今は人間の国にいる頃だろう。
「ゲートだ。いくぞ」
「はい」
―――私たちは領域をこえた。