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森の、中。  作者: ゆらゆらさん
第1章 エルフの故郷(さと)
6/19

親ばか

シーヤは倉庫からコルの実をかごいっぱいに持って

飼育小屋へ向かう。

コルとは麦のような植物だ。ほぼ麦。

大麦か小麦かなどは知識がないのでわからない。


飼育小屋の扉を開けると、隅にある巣箱の

藁の上にはこんもりと卵がある。


家で飼っているクェイルは2組のつがいだけだ。

クェイルは一度に6~8個卵を産むが、

白いダミーの中に、薄く色がついている1~2個の

有精卵がある。

ダミーの中身ははずれと言わんばかりの黄身なしだ。


シーヤはコルを餌箱に入れ、空になったかごに

卵を入れた。巣箱の中には1個だけ色つき卵を

残した。


たくさん卵を産むクェイルは、卵を温めている間は

卵を産まなくなる。

卵は数日で孵り、雛は肉用のクェイルを育てる家に

持って行くのだ。

卵と雛をクェイルの肉と交換してくれる。


この世界のエルフはベジタリアンではない。

里の外では貨幣があるが、里の中は基本的には

物々交換が主だ。


クェイルは綺麗好きで風魔法で住処を綺麗にする

習性があるので掃除は不要だ。

水の桶を水場で洗い、水桶を小屋に戻したら

世話は終了だ。


卵の入ったかごを持って鼻歌を歌いながら

家に戻った。


裏口から入ってキッチンにいる母に卵を渡す。

リビングに父親の姿が見える。


おはよう、と声を掛ける間もなく気付くと父の

腕の中にいた。

「いつもながらなんてかわいいんだシーヤは!

ああ、お前は100歳になっても旅に出したく

ない位だ!」


ちなみに毎朝こうである。親ばかにも程がある。

前世の自分より若い外見の父に抱きしめられ、

かなりキツイが慣れた。


そして、母が父の頭をべしっとひっぱたく。


「アード!いいかげん毎朝同じことしないの!

シーヤはもうすぐ年頃なのよ!

人間だったら『オヤジうぜえ』って反抗期よ!

シーヤが何も言わないからって!嫌がってるの

察しなさい!」


父にも長ったらしい名前があるが、覚えていない。

母は父をアードと呼ぶ。母は人間だ。


母の言葉にエメラルドのような瞳をウルウルさせ、


「エリーひどいよ~。シーヤ、嫌なの?」


と聞かれ、無言で首を横に振る。それしかできない。


記憶が戻ってすぐの頃嫌がったら、超絶美形が

目も当てられない位やつれて泣き続けた。

果てしなくうざいあの状況は二度とごめんだ。


花のような笑顔でごきげんになった父は私を

ダイニングへ運び、膝にのせようとしたので

それは拒否させていただいた。

私じゃなく母でも乗せてくれ。


ちなみにこのやりとりは毎朝ほぼセットです・・・


コルの実の粉から作ったクレープのようなものと、

フルーツ、スープ、スクランブルエッグ(ほぼ白身)。


右手を胸に当て、この世界の神に目を閉じ祈りを

捧げ、朝食を取った。



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