運命
何ゆえに過保護とするか。
それは、エルフの子どもが生まれにくいからだ。
エルフは、地球の想像上の物語のごとく、長命だ。
魔力も強い。
生まれてから20年ほどで人のように成長するが、
そこからはゆっくりとしか年を取らない。
そして、2~4千年ほど生きる。
時々とんでもなく長生きな者もいるが。
エルフが子どもを得るには、魔力の相性が不可欠
である。魔力が強い為、寿命も長いので
子供が生まれにくく、産まれても、なぜか男の方が
多く生まれる。
その相性が合った相手を「運命」と呼ぶ。
運命と出逢うと、エルフは魔力共鳴が起きる。
そして、その相手は同じエルフとは限らない。
エルフでない場合のほうが多い。
エルフでない場合、運命だったとしても子供が
授かりにくい。
また、相性がよかったとしても相手の魔力が
強いとは限らない。
伴侶となった人間の魔力が強ければよいが、
お腹の子よりはるかに弱いことも多々ある。
エルフの子は胎児の頃すでに人より魔力が強く、
何もしなければ母体が影響を受け、母子ともに
亡くなってしまう割合が高い。
人間の妻が妊娠するとエルフの夫は、お腹の子供の
魔力をコントロールして母体を守る。
そしてそれは、とてつもなく繊細で難しい。
あまりないことだが、逆にエルフの妻が人間の
夫を持つと、お腹の子に自分の魔力がゆっくり
馴染むよう妊娠中は魔力を抑えねばならず、
やはりコントロールを要する。
なので、生まれてから100歳までは里でひたすら
コントロールその他を学び、成人の儀をクリアした
後に里の外で運命を見つける旅に出るのだ。
100歳までは子供扱いで、里の周辺の森までしか出ることは叶わない。
エルフの運命として伴侶になった人間は寿命が
延びるが、エルフのようには長くない。
せいぜい200年ほどだ。
だから何人もエルフ以外の運命を迎える者もいる。
そして子供ができると、子供が旅に出るまでは
里へ戻って暮らすのだ。
子どもが旅に出ても里に残るものも多い。
そして人間の伴侶が寿命を迎えると、
再び旅に出るのだ。