守るために
エリーは沈んだ様子で部屋に戻るシーヤを見送った。
アードは考え込んでいる様子だ。
「アード・・・
魔力封じのローブか何かでシーヤを隠して転移して、
あなたの住んでいた森で暮らすとかできないかしら。」
「エリー、無理だ。よほどの事情がない限り
里にいた方が安全だ。
考えたくないが、攫われても里からなら魔力の
痕跡を辿りやすい。
それに長に、申し入れてきた。
『エリーはギルだけを伴侶にする』と。
今後伴侶を増やすかどうかは、成人の儀までは
私とギルの承諾がなければできないようにも
してきた。
披露目も決まったのに割り込むバカがいたら
そいつは一生伴侶の候補になれない。
それに、掟を破って捕縛なんてのは
立場に固執するなら避けるだろうが・・・
披露目まで日にちを取ったのは、我慢できずに
おしかけてくる奴を釣るためだ。
ザカスは無理だろうが、その他のジジイは焦って
ひっかかってくれるかもしれん。」
「そんなに簡単にひっかかるかしら?」
「今夜、ギルは帰ったふりしておそらく家の周辺に
潜んで待つだろう。
寝ると共鳴が起きること自体はまだ知れていないが、
昼間共鳴を感じたものはなんとか近づけないか
夜の闇にまぎれてやってくるかもしれん。
せいぜいギルには仮の伴侶として役立ってもらおう。」
アードは、老エルフ達に効果があるか分からないが
結界を重ねてシーヤの部屋の守りを強化した。
「今日はエリーも同じ部屋で寝てほしい。
明日からはあの馬鹿がうちに来るが
今日襲撃がないとは限らない。側で守っていてくれ。」
「わかったわ。」
家の外にも結界を張る為に、家の中心部の魔力石に
めいっぱい魔力を注ぎ込む。
この家の結界はカルバの防壁に近い守りでかなり
強力なものだ。さらに強化できるように
追加の魔力石をはめ込めるようにもなっている。
産まれてくる子供が女の子とわかった時、
里で暮らす家は自分の実家しかないと思った。
エルフの母を守るために父が強化した結界。
里の中なのにこれほど強い結界になったのは
ザカスに対するためだ。
シーヤには話していないが我が家には
過去にザカスと因縁があるのだ。
だてに長く生きていないあの老エルフ。
見た目は精悍な人間の五十代だが、見た目と
裏腹に中身はしつこく、蛇のような男だ。
とうとう恐れていたことが起こった。
全てを詳しく知るわけではないが、今までにも
血筋に女の子が産まれるたび狙われていたと聞く。
因縁の切っ掛けとなった女性以来、幸いにも
運命の者はいなかった。
ああいった行動をとって、まともに伴侶に
選ばれるはずがなかろうに・・・
己によほどの自信があるのだろうか。
なにせ、切っ掛けと思われる女性が亡くなった後、
我が家の若い血筋を娶る為だけに、寿命を延ばそうと、
世界中を旅して運命のエルフを探し、共鳴のために
つきまとったという。
寿命を延ばす理由が、我が家を含む血筋。
今更ながらその固執に、強い嫌悪と恐怖を感じた。
シーヤを何としても守らなければ。




