授業
「さて。授業にしましょうか。」
何事もなかったような爽やか笑顔でメガネを装着して、
教師モードになるギル。
YESロリータNOタッチって何だっけ?
彼の手を出す年齢にはまだ達していない、
それだけが心の糧です。
身体強化しても敵わず捕えられた私は、
縛りの呪文で動けなくされてから、ただひたすら
匂いを嗅がれてました。なにこの恥辱。
それ以外何もされてないんですが、心のダメージが
大きすぎる。
おばさんの精神にはキツイんですが・・・
授業の日は基本昼の鐘までは座学で、昼食後は
術発動の魔力操作実践。
座学では割ときちんと授業の形をとる。
問題は昼食後だ。
ギルの激が飛ぶ。
「もっと魔力を練るんだ!
そう、流れを意識して・・・!
すーー、はー・・・!くんかくんか!」
魔力操作実践は、20歳くらいまで術の発動を体で
覚える為に師となるものが通常は手などに触れ、
子どもの魔力コントロールを行う。
魔力感応に長けたギルならば、同室内で触れずに
魔力操作するなど造作ないことのはずなのだ。
しかし、シーヤの師となったギルは、授業を
始めたその日から、
『わざわざ後ろから抱っこして膝にのせて』
椅子に座って行っている。
これも本来は魔力操作をはじめたばかりの
子供に行うやり方で、親が子供に教えるとき
よくやるものだ。
確かに早く覚えやすいのだか、見た目13歳で
中身は大人のシーヤにはなかなかの苦行だ。
ちなみに耳元でささやくように指示を出す。耳ツブの実践とかなんとか。
集 中 で き る か!!
怒りを抑えつつギルの魔力に合わせ手のひらに
集まるまで練ってゆく。
このままギルにぶつけたいが、くっついている為
自爆しかねない。我慢するしかないのだが・・・
あと匂いを嗅がれるのは本当に嫌なのだが、
抱き締めた腹部以外には触れようとしないだけ
マシと我慢する。
時々わきわきと何かに耐える様に指が動くが、
気付かなかった事にする。全部拒否したときの
反動から逃げ切れる自信がないからだ。
「ねえ、シーヤ。今日ザカスのじじいに会った?」
ふと思い出したようにギルが聞いてきた。
ザカスとはこの塔の上階にいる、高齢のエルフだ。
見た目は老人、という程ではないが、人間でいうと50前後に見える。
父も言っていたじじい、のうちの1人だ。
彼は今までにエルフの伴侶を2人もらったことがある。
いずれも伴侶と死別した女エルフで彼より
年上だったそうだが、女エルフが別の運命と
暮らしていた頃からつきまとい、共鳴により
寿命を延ばしたといわれる男だ。
粘着質だが、女の手管はかなりのものらしい。
証拠はないが、運命を手にいれるために相手に
何かしたのでは、とも噂されたこともあるらしい。
見た目よりずっと老いているはずの彼の年齢は5000歳を超えている。エルフの運命を迎えたとしても
通常よりさらに長生きだ。
今は伴侶はおらず、私が産まれた頃里に戻って
きたらしい。
彼も感応力が強いそうだが、父はかなり警戒し、
ギル(へんたい)の方がマシと思ったようだ。
時々塔で見かけると視線が追ってきて怖い。
「あいつには気をつけるんだよ。私のシーヤたんを狙ってるんだ!
あんなジジイに絶対渡さない!」
人の耳元で息巻いてるが、おじであるギルも
私にとっては範疇外だ。
私には、目標もあるし。
ギルは勝手に自分の物宣言してるけど、運命とは
限らないのに・・・
あ、この人運命じゃなくても手を出す危険物だ・・・
守護石を何度か投げようとしたが今日もことごとく阻止。
父さま!変態をなんとかして!
突然ドアがバターンと勢いよく開いた。願いが通じたか父が迎えに来たようだ。
「シーヤ!迎えに来たよ!美味しそうなブルピグを
狩れたから、今日はお肉だよ!」
父にさっと抱き上げられ、さっさと塔をあとにした。