晴れて…倒れる?
キュリアをセリックさんに届けなきゃ。
そして…。
木製の天井が見えた。
そして…心配そうなアルダさん。
知らない男性。
「大丈夫かい?」
アルダさんが私の額に手を当てた。
「……すみません、セリックにキュリアを小袋どこ?…。」
私は必死で差し入れ小袋を探した。
ない、セリックが死んじゃう。
「これですか?」
知らない男性…翼のない金の髪の男性が小袋を差し出した。
震える手で受けとる。
必死であの綺麗な結晶を探しだした。
「セリックに…これを…。」
私はキュリアを差し出した。
「ナリちゃん、あんたそんなにセリックの事が!」
アルダさんがショックといった顔をした。
「セリック君…可哀想に。」
男性が悲しい顔をした。
「セリックに死んでもらいたくないんです。」
私はやっと声を絞り出した。
「ナリちゃんに嫌われちゃ、セリックも死にたいだろうよ。」
アルダさんがそういいながらキュリアを受け取った。
「あんなにいい若者はなかなかいないですよ。」
翼のない男性が言った。
「だから、死なせたくないんです…キュリアがないとセリック死んじゃう…。」
と言ったところでむせこんだ。
口の中に血の味が広がる。
「だ、大丈夫かい?ナリちゃん!」
アルダさんが私を横に向けて背中を撫でてくれた。
「……凄い…ミカ以上に天然だ…」
男性がのんきにいってる声がした。
「ユーグさんなに呑気なこといってるんだい!」
アルダさんがユーグさん?に詰め寄った。
「アルダさん、ナリさんは誤解しているみたいです、キュリアがないとセリック君が死んでしまうと。」
ユーグさんがニヤリとしていった。
「笑い事じゃないよ!…ってええ!そんな誤解してたのかい!?」
アルダさんがユーグさんに詰め寄りながらあぜんとした目で私をみた。
「………あの…。」
なんなんだろう…その珍獣を見るような目は?
「ナリちゃん、セリックはキュリアが無くても大丈夫だよ、これはナリちゃんに必要なものなんだよ。」
アルダさんが私にキュリアを見せた。
「え?どういう…。」
起き上がったとたんクラクラして布団に逆戻りした。
「大丈夫かい!?」
アルダさんが慌てて私の額をさわった。
「うーん、雨の日に落ちたんだよね…なんとか持たせて…さきにキュリアを飲ませれば…。」
ユーグさんがぶつぶつ言ってる。
「ユーグさん!ナリちゃんはうちの可愛い嫁なんだよ!死なしたら容赦しないからね!」
アルダさんが私の額をさわったままユーグさんを睨み付けた。
「…早い話、どうしてこの間の雨の15日に夫婦にならなかったの? その雫を飲んで、セリック君に抱かれれば、この状態は避けられたのに……」
ユーグさんが興味深そうに言った。
…どういう意味なんだろう?
「セリック君の求愛は受け入れたって聞いたよ。そういう関係になるのに抵抗はないんだよね?」
ユーグさんは優しい眼差しでナリディアを見下ろした。
私がよくわからない顔をしているとユーグさんが説明してくれた。
タリムの民の男が生まれつき持っている雫は、つがいと定めた女性にだけ捧げる貴重なものだということ。そして、発情期にそのキュリアを相手に飲ませ結ばれた時点で、結婚が成立し、妊娠が可能になるということを。
雫をともなわない行為もできるけどそれはあくまで行為ということ。
その行為ができるのは雨の日…それも15日以降でないと出来ない。
ただびとはこの世界で伴侶を得ないと遠からず不治の病にかかってしまいはかなくなってしまうとのことだった。
「じゃ…セリックは私をあわれんで…。」
求愛してくれたのかな…。
私は悲しくなって布団に潜り込んだ。
「ナリちゃん、それは違うよ、あれは本気だって!」
アルダさんそうに私のそばにしゃがみこんで言った。
だって…私は異世界の傭兵で求愛相手もいない生き物だもん…セリックは本当はもっと同族の可愛い娘に求愛したいに決まってる。
私、戦場が抜けなくて狂暴だし…。
このままはかなくなってもいいや。
もとの世界にかえったってセリックはいないし…。
戦場にいればいつ死ぬかなんてわからないんだもん、本当は…。
セリックのいない世界なんていたくない。
「セリック君は本気だと思いますよ、それがタリムの民だから。」
ユーグさんが言った。
「そうだよ、ナリちゃん気を強く持つんだよ。」
アルダさんが言って私を覗いた。
そして私にキュリアを握らせた。
これはナリちゃんのものだよって。
嬉しい…私がはかなくなるまで…。
持っててもいいかな?
セリックの本当の伴侶のためのものだけど…。
やっぱりセリックが好き…。
このまま死んじゃっても。
セリックがいい。
死ぬ前にセリックに会いたいよ…。
そんなことを思いながら私意識を失ったみたいだ…。