晴れた日の脱力感。
雨があがって空が晴れた。
ひさしぶりに修練をしないと…。
「どこにいくんだ、ナリディア?」
私の愛しい恋人が怪訝そうに言った。
「鍛練にです。」
私はブーメランを見せて微笑んだ。
「身体は大丈夫なのか?」
心配そうにセリックが言った。
この間からよく聞かれるんだよね…。
たしかに少し身体がダルいんだけど…やっぱり雨で隠ってて筋力がおちたせいかなとも思うんだけど。
ブーメランが青空吸い込まれて戻ってくる。
セリックといたいけど…本当はグーレラーシャに帰りたい。
「ナリディア、しばらく留守にするけど無理するなよ。」
晴れた日からしばらくたった日にセリックに言われた。
タリムの民は狩猟で生計をたてていて男性はグループを組んで何日も出掛けるのだそうだ、セドリスさんはもう出掛けている。
でも…寂しい…セリックと離れたくない。
セリックに近づこうとしてふらつく…おかしい最近本当にダルい。
セリックが私を抱き止めた。
「ナリちゃん大丈夫かい?」
アルダさんがそういってセリックにお弁当を渡した。
「母さん…ナリディアを頼む。」
セリックがそうにいいながら私を抱き締めた。
セドリスさんとセリックが一緒に狩りをしない理由は同じグループで行って血族の全滅を避けるためだ。
理にかなってるよね。
傭兵の方はあんまりそう言う考えじゃなかったからね…。
私以外は宮仕えだしな…。
カザフ家はヒフィゼ家のしたで外務担当官をする家系なんだよね、私はある意味変わり種だしね。
「行ってくる。」
セリックが私にキスを照れ臭そうにした。
羽毛が顔に触れてくすぐったい。
「私もついていきたいな…。」
出掛けていくセリックを眺めながら呟いた。
狩りはしたことないけどセリックさんと離れたくない。
「ナリちゃんは待っておいで危ないからね。」
アルダさんが優しく私のかたをたたいた。
日差しは故郷より弱いのになんでこんなにだるいんだろう?
「何かお手伝いしますよ。」
ダルさを隠してアルダさんに微笑んだ。
「無理するんじゃないよ、それより近所のただびとのミカちゃんのところにでもいっておいで。」
故郷の話がしたいだろう?とアルダさんが微笑んだ。
話を聞く限りミカさんは私と同郷の人じゃない。
明正和次元の日本人の可能性も低そうだけど…。
同じただびとだし…タリムの民ラスさんの奥様だし話してみようかな?
「本当に異世界ってあるんですね。」
しみじみと先に異世界に来ていたはずの可愛らしい女性が言った。
明正和次元人っぽいけど…地球からきたらしい。
「ここも異世界ですよ。」
私は出されたお茶をのみながら言った。
旦那様ラスさんはセリックと狩りに出たらしい。
「うーん、でも魔法と科学がミックスってゲームみたいじゃないですか?」
ミカさんがニコニコといった。
通信機のアプリにたしかにそんなようなゲームがあったけど…妹のセルディアナがやってたような…。
「私にとっては普通の世界ですから。」
殺伐とした戦場が目に浮かぶ、枚散るのは花びらでなくて血潮だ。
こんなに平和なのに…なんで戦場が…。
「セリック君もお嫁さんもらう年になったのね。」
ミカさんが可愛く両頬に手を当てた。
「まだ、お嫁さんになってません。」
セリックは早く抱きたいみたいなこといってたけど…結婚式をあげてからにしたいしね。
「………ちょっとそれ不味い。」
ミカさんが顔をしかめた。
どういう意味なんだろう?
「セリック君、なにやってるのよ、早く結婚して雫を飲ませないといけないのに。」
ミカさんが呟いた。
キュリア?何ですかそれは?
「キュリアって何ですか?」
私は少しボーッとしながら聞いた。
少し頭痛もしてきたみたいだ。
「綺麗な結晶よ、タリムの民の男性が結婚相手に飲ませるんですよ 。」
ミカさんが言った…もしかして…あの綺麗な結晶?
「こ、これですか?」
差し入れ小袋を開けてもらった透明の結晶を出す。
「それがないと死んじゃうですよ。」
ミカさんが言ったとたん私は立ち上がった。
死んじゃうってセリックがこれがないと死んじゃうの?
すぐにかえしにいかなくっちゃ!
キュリアを大事に小袋に入れて駆け出す…ミカさんがなにか叫んだけど…早くセリックのところへいかないと。
今考えると全然つじつま合わないのだけど、その時に私は強烈に思ったんだ。
重い身体がもどかしい。
なんでこんなにだるいんだろうと重いながら私は精一杯かけていった。
どこにセリックがいるかわからないのに…。
あの爽やかな笑顔が失われるなんて嫌だ。
「ナリディアさん!」
ミカさんの声がする。
足にちからが入らない…。
崩れ落ちるようにたおれて意識を失った。
失う寸前に森の木々とぬけるような青空を見た。
動けない…どうしたんだろう…私。
こんなときに…セリック…必ず返しに…。