雨の日の求愛
空を見上げてナリディアがため息をついた。
雨の15日がきた。
「雨が今日もふってるね、セリックさん。」
ナリディアが窓辺に椅子をおいて空を見ながら微笑んだ、思わず近づくと甘い香りがして抱きしめたくなった。
「ナリディア。」
初めての発情期だ…ナリディアしか考えられない。
後ろから抱きしめるとナリディアが両手を前に組んだ。
なんて気持ちのいい身体なんだ…ああ、早くオレだけのものにしたい。
首もとの雫に手をやる、すぐにこれを口にあの色っぽい唇に入れたい…。
「寒くないですよ。」
羽毛百パーセントですね~。
とかナリディアはのんきなことを言った。
「オレの番になってくれ。」
首筋に口づける。
「………本気で異世界の生き物に求愛するんですか?」
ナリディアが静かにいった。
「異世界の生き物って…ナリディアじゃなきゃオレはいやだ。」
オレはナリディアを抱き込んだ。
「私は…戦場で修羅場をくぐってます。」
ナリディアが真剣な眼差しでおれを見つめた。
血まみれなんですよ、私の手は…と手をオレに見せた。
「ナリディア…オレも生きていくために生き物の命をもらっている、いつかタリム様のもとにかえって行くんだ、身体は自然の流れに朽ち果てて行く、次のだいを繋ぐために…。」
オレはきれいなナリディアの髪を撫でながら言った。
「私の相手は人です…傭兵ですから…。」
ナリディアがそういいながら気持ち良さそうに目を瞑った。
人…か、この可愛い女性が戦場とやらにたつなんて信じられない。
「オレはそんなこときにしない。」
そういいながら抱き締める力を強めた。
「私は気にします…それにグーレラーシャ人の恋は激しいんですよ、セリックさんがこまるくらい抱上げて欲しいっていいだすに決まってます。」
ナリディアがそういいながらもオレの手にほほを寄せた。
「いつでもいいぜ、すきだけだきあげてやるよ。」
オレは雫を無意識にいじった。
抱き上げるということは将来の伴侶をもらうということだろう?
「…ずっとですよ。」
ナリディアが上目遣いでいってあまりのかわいさに限界が来た。
「ずっとだ。」
そういってオレはナリディアにキスをした。
抱上げてナリディアをベッドには運んで押し倒す。
そのまま深いキスを繰り返して…。
ナリディアに雫を口移しで飲ませた。
ところで目が覚めた。
階下では何かいい匂いがしている。
降りていくとナリディアが料理していた。
「セリックさん、おはようございます。」
ニコニコとナリディアがフライパンのパンケーキを取り出しながら言った。
「お、おお。」
あれは夢なのか?
首もとに雫がない。
「あの…これ。」
雨降る薄暗い部屋に花が咲いたみたいだ。
「ん?」
オレは無意識に受け取った。
雫が手のひらにのっていた。
「すみません、昨日は途中で投げ飛ばしてしまって…やっぱり戦場が染み付いてますね。」
てへっと笑いながらナリディアが頬を掻いた。
オモイダシタ…いざ服を脱がせようとしたら…投げ飛ばされたんだ!
「オレのことそんなに嫌いなのかよ。」
オレは不機嫌を隠さず言った。
「…嫌いじゃないですよ、むしろ好きです…私も乙女なのでああいう事は結婚式をしてからしたいです。」
ナリディアがニコニコいいながらパンケーキを置いた。
そういえばまだだめですとか言ってるの聞いた気がするんだよな。
結婚って雫を含んで飲み込ませて事をおよんだら成立じゃないんかよ…雨がもどかしい。
晴れなら、ミカ姉ちゃんにただびとの結婚式とか聞けるのに!
あの二人も隠ってるに決まってる。
オレもナリディアと隠りたい。
「これはナリディアのものだ。」
せめて雫を飲ませたい。
オレはナリディアに雫を差し出した。
「……ありがとうございます。」
ナリディアは雫を受け取って眺めたあと嬉しそうに胸元のポケットにしまった。
そ、それじゃだめなんだ、飲んでくれ~。
ただびとの番になるのはやっぱり前途多難なのか?
これほど雨がもどかしい事はないぞ。
早く晴れてくれ~。
ただびとの特性も聞きたいしな。
それにしても…。
「いい匂いだな。」
オレは呟いた。
「そうですか?」
野戦料理ですけどねいいながらスープをナリディアがよそった。
そっちもいい匂いだがもっといい匂いなのはナリディアだ。
オレの望みが叶う日が来るのか…。
心配になってきた…。
ナリディア…本当に強すぎるぜ。