俺がキスで堕としてやる
実際にありそうでなさそうな、恋愛ものです。
恋愛にしつつ、少しシリアスさを出しています。
また、キスが少し多め&微エロ?です。
女の人が男の人にキスばかりされる理由、一緒に考えながら読みませんか?
「お前は俺に、愛されていればいいんだ」
「んぅっ…ぁ…」
私は口を塞がれている。というより、キスをされている。普通のとは違う、とても濃厚な、甘いキス。
何故私はキスをされているのか。それは10日前に遡る。
「あー…また帰るの遅くなっちゃった」
そう言いながら、自分の家へと続く道を歩いている。時刻は20時40分。普通なら中学生は家でご飯だのお風呂だの、あるいは勉強だのテレビだの、自分がしたいことを自由気ままにやっているだろう。しかし私は、未だに家に着いていない。何故か。ただ単に補習を受けていたからである。
実を言うと、私は頭が悪い。この間の中間テストの合計点数は325点だった。え?それくらい採れれば悪くないって?、確かにそうかもしれない。普通の学校なら。
私の通っている学校は、何故か頭の良い人達が集まっている。別に名門校というわけではない。それなのに、頭が良い。学校全体のテストの平均点は、いつも430点から460点をキープしている。平均点と比べたら、私の点数なんてダメダメというわけだ。
まぁとにかく、なんだかんだで補習を受けてきたわけだが、いくらなんでも暗い時間になるまでやらせるのもどうかと思う。
先生の頭はいったいどうなっているのか、確かめてみたいものだ。
と思いながらも少し早足で帰る。と、ふと後ろから視線を感じた。
…誰かに、つけられてる?
いや、あり得ん。よりによってこんな私があとをつけられるとか絶対にない。
そう思い、歩くスピードを速めた。すると、後ろから早足で歩いてくる足音が聞こえてくる。
…マジでつけられてる…
確かに私は一応女子だが、つけられたことなんて一度も無い。何故なら、見た目が男っぽいから。あと、口調も少し男っぽいから余計かもしれない。けれど、今私はあとをつけられている。この私がだぞ。
今の服装は確かに制服だ。学校の制服、スカートは特に女子らしい。だからか?
私は危険を察知して走り出した。これでも足は速い方だ。後ろからつけてきた人から距離を置いていく、はずだった。
私をつけていた人も、足が速い。いや、私よりも速い。
ヤバい、追いつかれる…
そう思った瞬間、私は腕を強く掴まれた。
「ちょっと、逃げないでよ」
痛い。掴む力が強すぎる。つまり、男の人か。
「…なんの用ですか、私は忙しいんです。んじゃ」
私は相手の手を振りはら…えず、血が止まってしまうくらい強く掴まれた。
「帰らせるわけないでしょ。俺のターゲットさんよぉ」
そう言われ、私は人が通らない路地へと連れてこられた。
「ちょっ、離しt…んぐっ!」
突然、口を手で塞がれてしまった。
「ちょっと黙っててもらおうか」
しまった、これじゃぁ助けを求められない。しかも、男の手には…刃物が握られている。
もぅ、逃げられない…
「お前、俺の女になにしてんの?」
え…誰?
男は私の口を塞いでいた手を離し、突然現れた男に寄っていく。
私の意識は、そこで途切れた。
「…い。おい。大丈夫か?」
意識が戻ると、目の前に男がいた。
「えっちょっ、え?」
あのあとどうなったのか。私は思い出せずにいたら男が、説明してくれた。
「まぁ、ありがと…ん!?」
一瞬、なにが起こったのか分からなかった。
…私、キスされてる?
そう思ったときには、舌を入れられていた。
「んっ…はぁ…や、め…」
私は必死に抵抗した。酸欠になりそうなところでやっと離してくれた。肩で息をしていると、男が突然おかしなことを言い出した。
「お前、俺と付き合え。俺のそばにいろ」
…え?
「き、急に何を言い出すんですか。」
さすがに理解できないぞ。
「だから、俺の女になれって言ってるんだ、わかんねーのか低脳野郎」
…おい、さすがにキレるぞ?知らない人だけど蹴りとばすぞ?
「あぁあと、俺の名前はアズマ。一応、お前と同じクラスなんだけど」
「…え」
そんなやついたっけ…思い出せない。
「まぁいいや、今日からお前は俺の女。住むところも俺ん家な。あと…」
な、なんか、話が進んでる。私は許可を出していないというのに。というか、許可を出すわけ無いでしょ。
「おい、聞いてる?」
はいはい、聞いてますよー。聞いてないと怒られそうだしね。他になにを言い出すのやら、さっさと言ってほしい…
「お前、これから学校行かなくていい。」
…え?
「その分、俺が勉強を教える。あと…」
そこまで言い、アズマは私の耳元で
「…俺の、相手をしろ。」
と言い、またキスをしてきた。
「んんっ…はぁ…ぁ…」
またキスをされた。勿論、抵抗しようと心掛けるが、抵抗できない。いや、抵抗する気力がない。
…気持ちいい…。
少し長めにキスをすると、アズマは口を離し、私の耳元でそっと言った。
「俺が、守るから」
とまぁ、10日前にこんなことがあったのだが、何故かキスばかりされている。理由を聞いてみても、口を塞がれてしまうから、聞き出せない。
「んぅっ…も、やめっ…はぁ…」
最近、私が私じゃなくなっている気がするが、そこは気にしないでおきたい。
それより、この声、誰かに聞かれたりしていないだろうか。
「っ…もっと、舌を絡ませろ…」
「そ、そんなこと言ったっt…んんっ…」
このキスをすると、頭が朦朧としていく。そして何故か、アズマのことしか考えられなくなってしまう。なんでだろぅ…
「っお前、キス上手くなってるな」
アズマは満面の笑みを浮かべた。アズマは学校では無表情で、家にいてもあまり笑わないが、キスをしたあとだと、必ず笑ってくれる。その笑顔が、可愛いと思ってしまう。
「んじゃ、今日はこれで終わりな。おやすみ」
「お、おやすみ」
けど、ある意味体力消耗する。疲れたぁ。
『お前なんか死んじゃえよ』
『生きてる資格なんかないんだよ』
『消えちゃえ、この世からいなくなれ』
…これは、なに?
『やめて…やめてよぉ~…』
あぁ…小さい時の私だ…
『しゃべるなっ気持ち悪い』
『早く死んじゃえ!』
『うぅ…ぅ…』
私は…虐められていたんだっけな…
『おいっやめろよ!』
あれ…?この男の子、みたことある
『あ、ありがとぉ…~~君』
この男の子は…誰…?
「っ!!」
…夢、か…。
ははっ、夢なのに…涙が止まらないな。今はもう、辛くないのに。辛いのが嫌だから、私は見た目も性格も変えたんでしょう?なにも、怖がること無い人になったんでしょう?
なのに…やっぱり、怖いんだ…。
私は、弱虫だなぁ…。
「…おい。」
「っ…いつの間にっ」
私は急いで涙を拭いて作り笑いをした。泣いていたのをバレないように。
「お前…泣いてたのか?」
っ…やっぱり、バレちゃってたかぁ。
「なんで、泣いてた?なにがあった?」
もう…すべて話しちゃおうかな…。
「あの、ね…私、小さい頃虐められてたんだ。」
アズマは、私が話し始めると、黙って聞いてくれていた。
「色々暴言言われてね。酷いときは暴力を振るわれてたんだ。そのときは、本当に辛くて…」
私は、笑顔で話せているだろうか。アズマに心配かけないよう必死に笑顔を作りながら話す。
「何回か、自殺しようって思ったときあったの。だけど、ある男の子が私を助けてくれたんだぁ…」
そこまで言うと、アズマは優しく抱き締めてきた。
「それでね、強くなろうって思ったの。だから、私の見た目も性格も、男っぽいでしょ?」
「…あのさ、」
アズマは真剣な顔をしていた。
「…実はさ、その…お前を助けたの、俺、なんだ」
「…え?」
『ありがとぉ…アズマ君』
…思い出した。あのときの男の子は、アズマだった。
「アズマ…」
「…俺が、なんでキスばっかりしてるか、知ってるか?」
そんなの知らない。理由を聞いても教えてくれなかったんだから。
「お前、前に口の中に砂とか泥水とか、変なもの入れられただろ?」
…確かにそうだった。暴力を振るわれるとき、何故だか知らないけど飲まされたり入れられたりしてた。
「たまに、顔面殴られて血がでてたりとかさ…あれ見てて、痛々しくて…助けたかったけど、そのときの俺の力じゃ到底敵わなくて…」
アズマは、一つ一つの言葉を丁寧に言っていく。それだけでも、私は涙が溢れそうだった。
「だから、俺は今、その傷を癒そうと思ってキスしてる。勿論、話しとかも聞くし、なにかあったらすぐに助ける。だけど…」
そこまで言うと、私を強く抱き締めて頬にキスをした。
「ちょっ…」
「今、すぐにできること。俺の…俺のものにするにはキスすることしか思い浮かばなくて」
アズマの言葉はすべて、私のために言ってくれているのだと思うと、嬉しくて涙が止まらなかった。
「な、泣くなよ…」
「だって…嬉しくて…」
私の涙を、アズマが拭ってくれる。
「アズマが…私を助けてくれて…私のために色々してくれて…本当に、嬉しいんだ」
私は、笑顔でそう答えた。さっきまでの作り笑いは、もうしていない。心の底からの笑顔をアズマに見せる。
「…あの、さ…俺、これからも守るから。お前のこと……
愛しても、いい?」
「うん、勿論だよ」
私が答えると、キスをしてきた。いつも以上に、甘いキスを。
「もぅ、キスしなくても、アイツの心はつかめるな」
大好きだよ…
うん、私も大好き…
どうでしたか?
楽しんで読んでくださったら、幸いです。