Lv3:隠れ家にしちゃおうかな?
第3話です。
今回は戦闘はありません。
ではどうぞ。
サイさんのお店はどこか隠れた名店のような雰囲気で夜には居酒屋が出来そうな感じだった。
俺はみんながいろいろと相談しているのを尻目にカウンターの椅子に座ってサイさんに話しかける。
「はじめましてサナといいます。サイさんもオープンからですか?」
「あぁ、そういう君は見ない顔だね。正式版からかい?」
「はい。こいつらに誘われまして」
俺はカウンターの向かいにいるサイさんに挨拶をしてみる。
やはりお店を持っているのだから当たり前か、とか思ったがサイさんもそれなりに儲けていたのだろう。
サイさんは俺のことを聞いてきたので、後ろでワイワイ楽しんでいる仲間をちらっと見て言う。
そうかい、と言うとサイさんはオレンジジュースをサービスしてくださった。
「今はこんなものしか出せないけど、いろんな果実とか持ってきてくれれば料理も作ったげるよ」
「本当ですか? じゃ、頑張っちゃおうかな。」
サイさんは優しく微笑んで頷く。なんてやさしい人なんだろうか、これは本当に隠れた名店だ。
俺は手を前で握って頑張ろうと意気込みを見せた。
「あ、もちろんお金も貰うよ? 商売だからね。ま、材料を買い取るから安くなると思うよ」
「そ、そうですか。この店って隠れた名店って雰囲気がするのですが、目指してたりしますか?」
「お、わかってくれる?隠れた名店ってなんか憧れるだろ?それにここはなぜか落ち着くんだ。みんなが戦いで疲れて帰ってきた時とかに、ここで休んでくれるのを想像すると、もう嬉しくなっちゃって」
サイさんは子供のように笑って夢を話す。言っていることはよくわかる。
「俺もここ大好きですよ。夜には居酒屋というかそんなのもいいですよね」
「あぁ、その予定だ。あ、サナちゃんはお酒ダメだぞ?」
「えー、ゲームなのに……わかりました。あと、男ですからちゃんは遠慮願いたいかと」
サイさんは居酒屋としても運営するつもりのようで、頷いて様子でも想像しているのだろうか嬉しそうに笑っている。
このゲームは未成年でもお酒が飲めるので、まぁ実際アルコールは入ってなくて、酔ったりするだけであるが、自分は飲もうとしていたところサイさんに止められた。
口を尖らして文句を言ったがスッと俺のことを真っ直ぐに見ているサイさんの目にやられて渋々そうすることにした。
あと、ちゃんと呼ばれたので男であることを伝えるとサイさんは驚いてしばらく瞬きをして固まったが、何を納得したのかは分からないが、笑顔で『わかった』と言った。これからは君にしてくれるそうだ。
「それにしても、大変だね。ここは廃人しか今のところいないから。みんなと一緒に冒険する気かい?」
「ええ、まぁ。でも、俺は俺なりにやっていくので、まぁ、簡単には負けるつもりじゃないですけど」
サイさんは大丈夫かと心配して言ってくださったようだが、俺の笑顔で安心したようだ。
それに俺だってやろうと思えばトップを狙えるつもりなのでこのメンバーみんなでトップを取りたいと思っている。
このあともしばらくサイさんと話をしていた。
このゲームには空腹度という機能もあって、お腹がすくのだ。今はNPCから材料を買って料理のセンスを上げているそうだ。
サイさんはそろそろお昼にしようかと言って、カウンターの向こうで準備を始めた。
俺は今更ながら、ステータスを確認しとこうと思ってメニューを開いていた。
そういえばチュートリアルも終わっているので自分のレベルも上がっていた。
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NAME:サナ ヒューマン 男 【Lv2】
【HP:140/140】
【MP:150/150】
称号:
武器 メイン:初期の弓
サ ブ:初期のツインソード
サ ブ:初期の杖
装備 頭 部:
外 着:
内 着:初期のシャツ
下 着:初期のインナー
腕 部:
胴 部:
腰 部:初心者のズボン
脚 部:
靴 :初心者の靴
アクセサリー
1:
2:
3:
スキル 所持SP:0
【弓使いLv3】【双剣Lv1】【連射Lv2】【アクロバティックLv1】【魔力Lv1】
【魔法使いLv1】【風Lv1】【オリジナルLv1】【発見LV2】【付加Lv1】
ステータス
STR 13
SPD 12
VIT 10
INT 11
MIN 13
ATK 13
AGI 10
DEX 15
MAT 12
MDF 12
LUK 55
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レベルが一つ上がっていた。クエストが終わった時に丁度上がったので、全員レベル2以上だろう。
これはたぶん運営がレベルアップとか初心者でもちゃんとしていけるように工夫したのだろう。
さて、レベル1の時にステータスなどを確認してなかったため、どういった変化があるのかはわからないが、たぶんHPとかMPとかが上昇したのだろう。
このゲームはレベルがあがっても直接ステータスには関係がないのである。
ステータスは行動によって少しずつ上がっていくのだ。ダッシュをしまくればSPDとAGIが上がりやすい。
というふうにである。
HP,MPはレベルが上がるごとに増えていく。
ほかにもHPはVITが上がれば増えたりする、またスキルも影響する。
MPはMINが同じように影響する。スキルも同じである。
STRは力を表している。最初は基本的に10なのですでに3も増えたことになる。
たぶん弓で攻撃をしていたからであろう。弓はそれなりに弦を引くのに力がいるのだ。
そのためSTRが高くなったのだろう。
SPDはスピード、速さを表している。走る速さという認識でもいい。移動していた時の歩行距離と弓の連射のおかげで2増えているのだと思う。走ればすぐに成長する。
VITは頑丈さを表している。物理防御力と考えて良いとこのゲームの説明ページには書いてあった。
攻撃を受けていなかったりするので低いのだろう。
装備による補正が多いところで自分は遊撃だが避ける派なので育ちにくいだろう。
INTは知能を表している。これは何かを作るときに難しいものでも作れたりするのに影響する。
武器などを作るときに形状を考えたりするときに表現出来る範囲がINTによって決まるのだ。
オリジナルのスキルを使いこなすには必要だ。1増えているのはスキルのおかげだろう。
MINは魔力の値である。MPの数値を変動させたりする。
魔法使いには知らぬ間に上がるステータスだ。
ATKは物理攻撃力を表す。STRとは違って、相手に与えるダメージに影響するステータスである。
STRが高いと一緒に高くなる。弓もATKに依存する武器である。
AGIは俊敏性を表している。SPDとは違いこちらは一瞬の速さである。
接近戦などで回避行動をとる際はこちらに依存する。
SPDが上がってくるとこっちも影響される。
DEXは器用さを表す。15となっているのは弓の影響だろう。弓の命中率はDEXに依存するのだろう。
魔法の命中率もDEXに依存している。また、生産するときはDEXに少なからず影響される。
アクセサリーが一番影響されると思われている。
MATは魔法攻撃力を表している。その名の通り、魔法で攻撃する時の相手へのダメージに影響する。
これが高いほど相手にダメージが入る。魔法攻撃する事に上がっていくのだろう。
MDFは魔法防御力である。これは相手のモンスターの属性攻撃。魔法攻撃に対する防御力である。
高いほどダメージを受けにくい。ダメージを受けることで上がる。また、魔法を使うことでも上がる。
また前衛もそれなりに必要なので、特訓したりする。
最後のLUKは運を表している。これは平均が50でいいことをしたりすると上がってくる。
50が平均なので自分が高いと誰かが低くなっているということだ。これは犯罪やPKをしたりすると著しく低下する。また、NPCに対しての対応でも変わると言われている。
高くても90ぐらいが限界で下は0もある。
全体的に見たステータスとしてはまぁ、最初はこんなもんだろう。また装備による補正もまだないので仕方がない。
とりあえずこれからは魔法も使っていこう。
魔法は基本的に属性スキルについてくる技でしか攻撃できずレベル一だとそれ単体の攻撃になる。
火なら火の玉をぶつける程度である。威力は低いがディレイタイムが短く連続して使えるのが特徴だ。
しかし、俺はオリジナルを持っているので最初から威力の弱い範囲攻撃などができる。
その瞬間にでも思いついたものは表現するのもいいし、練りに練った魔法もいい。ただし、MPの消費量も多く最初の方は簡単なやつしかできない。
俺はあれやこれやと目を瞑り、魔法を考える。風の魔法といえば鎌鼬なども考えられるが、とりあえずは切り裂く一つのナイフのような風を起こしてみたいと思った。
やってみないと威力も分からないが楽しみである。
これはできるだけ早くに他の属性も使えるようになったほうが良さそうだ。
自分の中で一つ考えが纏まったところで声がかかった。
「おーい、そこの銀髪の嬢ちゃん。あとは嬢ちゃんだけだぜ」
リューさんがそう話しかけてきた。どうやら他のメンバーはもう相談が終わったようなので、相談している机の方にいく。
みんなはウキウキしているようでなんか浮ついている。
とりあえず俺も気に入った装備を作ってもらえるようにちゃんと相談しよう。
「どうもサナです。あと男なので嬢ちゃんではありません」
「おう、嬢ちゃんは男の娘なのか。まぁ、気にしないからさ。可愛いから嬢ちゃんってことで」
男なことを伝えると、笑ってちゃんとわかってくれた。しかし、嬢ちゃんと言うらしい。なんというか、この人の人柄がわかってきた気がする。なんか会話が通じなさそうである。でも悪い人ではないのがわかる。ちょっと豪快なだけだと思うことにしよう。
「さて、まずは鎧か普通の服かってところからだが、お前はどうする?」
「まぁ、回避重視の遊撃になるつもりなので服でしょうね」
「おう、了解したぜ。じゃ、まずは採寸な」
そう言ってリューさんは俺に近づいてきてメジャーで測り出す。
リューさんは俺が男ということも気にせず、どんどん測っていく。
もしかしたら嬢ちゃんと思っているかもだけど。
リューさんはいろんなところを採寸していく。どうやら全身を測るようだ。
フル装備をセットで作るつもりだろう。ほかの人も何も言わないので全員分作るのだろう。大変だな。
アホなことを考えて勝手に同情したが、それが生産職の人の役割だと考えると、尊敬する。
そんなことを考えていると、ウエストのあたりを触られて少し反応する。
リューさんは真剣な表情でなにかを測って居るようだが、俺としては恥ずかしいので、ちょっと顔が赤くなる。
「あっ、サナお姉ちゃん赤くなったぁ~!」
「っ!? な、なってないぞ。というかお姉ちゃんじゃない!」
シノがいきなり変なことを言い出すのでつい、反応して否定するが、どうもニヤニヤしている。バレたのだろう。
そしてゲームを始めてからなぜかお姉ちゃんと呼ばれていることに反論する。
シノはニヤニヤしている。お姉ちゃんじゃないはスルーのようだ。クソッ。
そのあともしばらくリューさんは採寸をしていた。
そしてどういった装備にするかの相談に入った。
「まずメインになる色だけど。なに色がいい?髪の毛が銀だからそれに合わして白でもいいけど」
「いや、わざと黒がいいです。そのほうが銀髪が目立つと思うので」
自分はとりあえず装備は黒色にしてもらうことにした。
黒色は万能でよっぽどでない限りは似合わないことはないのである。
「じゃーとりあえず装備の感じを聞くけど、頭部に何か着ける?」
「うーん、帽子とか、フード系が欲しいです」
「なるほど、フードとなると外着はまぁ、コートになるけどそれでいい?」
「はい。あと、キャップを別に一つ作ってもらってもいいですか?ファッションとして」
相談は順調に進んでいく。リューさんは装備を決めながらデザインを考えていく。
そして相談も終了し、一旦みんな昼食になった。
サイさんが料理を作ってくださったのでそれをみんなで食べる。
料理はNPCの店で売っている、野菜と魚を使ったサラダで、ドレッシングがかかっていた。
このゲームは食事系は最初から充実していて、レストランもある。
ただし、NPCのレストランなので味は普通である。
そこで料理人の出番らしい。サイさんの料理は美味しくてさすがだった。
それからみんなは一旦、サイさんの店で落ちてご飯やらトイレやらを済ますことになった。
街の中は全域安全エリアで攻撃もできずダメージも入らない。
なので安心して落ちることができる。体は残るので宿屋や自宅、建物の中で落ちるのが基本だ。
俺もカウンターに座ってログアウトする。
ゲーム内で眠りに襲われたように視界がブラックアウトし、次の瞬間には目の前には自室の天井があった。
俺はヘッド・ギアを外して。トイレに行き、昼食を軽く取った。
葵姉や紫乃とすれ違うが話はしない。すぐにまたゲームに戻るからである。
そして20分後またログインした。
読んで下さり有難うございます。
次回は防具が出来るまでの間にレベリングをしたり、お金稼ぎをしたりします。