表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

王子、いつもの朝



王族が生まれるとき、必ずどこかで同じ顔、同じ体型をもつものが生まれる。

それは決して偶然などではなく、偉大なる全能神が王の血を守るために生み出したものらしい。


王族の身代わりとするために。

王家の血に災厄が降りかからぬように。


王族が誕生した日、同じ日に生まれた赤子はすべて王宮に集められ、同じ顔をもつ赤子はその場で王宮に引き取られる。


身代わり人は『ミシュラ』と呼ばれ、親元には『ミシュラ』を作り出したものとして莫大な報奨金が贈られる代わりに、二度とその子どもと会うことは許されない。




そして、『ミシュラ』は王族が死んだ時、共に埋められる。



○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●





「おはようございます」


肩より少し長い金髪、鮮やかな緑眼。

部屋を出た途端、飽きるほどに見慣れた姿があった。


「っ……ラーシュ…お前か…」


声を上げそうになった喉を必死に抑え、落ち着いた声を意識する。


「め、めずらしいじゃないか。お前が僕の寝室までくるなんて」


「毎朝お迎えに参らせていただいております、ラスナ殿下」


「………っ、おおお前は地味すぎて空気のようだからな!気がつかなかったんだ!」


「……………」


ラスナの後ろから続いて出てきた数人のメイドが、顔を見合わせる気配がする。

それも、そうだ。

ラスナの前にいるのは彼の『ミシュラ』。

姿形は瓜二つであり、容姿に関しての暴言はすべて跳ね返ってくる。



「失礼いたしました。殿下の『ミシュラ』が私ごときに務まるものでもありませんが、己の力のなす限りお役に立てればと存じます」


ラスナの身代わり人(ミシュラ)であるラーシュは同じ顔を微笑ませ、もう一度頭を下げた。

その落ち着いた振る舞いは、本物の王子にしか見えない。

本物の王子である、ラスナよりも。



「…………」


「では、本日のご予定ですが――――」


「……っき、聞きたくない!」


「かしこまりました。では、本日のご予定は私が御身の代わりに出席させていただきます」


「ぼ………僕、が行く……」


「かしこまりました。では私はおそばで控えさせていただきます」


「絶対、前には出てくるなよ…!」


「……仰せのままに、殿下」



こうして、いつも通りの朝が始まった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ