∃~存在する~
試しに手首を切ってみた。
微かな痛みが広がり微かに血が出る。マンガのように一気にあふれだすこともなくじわじわと出てきて気持ちが良かった。まっかな血は少し鉄の味がしておいしくなくてでもハマった。
∃
手は微かに震えていた。それでもゆっくりとカッターナイフを押し付ける。すっと痛みが走り血が出る。
たりない。
そう思ってもう一度、今度は深くすばやく切る。鮮血があふれ一筋伝う。この時強く死を望み布団に倒れこんだ。そして眠りに就く。
次に起きたのは朝だった。
時間が時間で焦り制服に着替える。手首には赤く線が残りしかしもう痛みはない。焦りながらも家を出ていつも通り大通りを歩いていく。車や人があふれまっすぐとこちらへ向かってくる。それをかき分けよけながら校門をくぐり教室へ向かう。賑やかな教室。
きこえるのは自分の陰口だった。
逃げるように校舎裏に走りそこで見たのはキスシーンだった。自分の好きなやつの。
どんなに呼びかけても返答はなくそこで気付かされる。
自分は今透明なんだと。
世界から消されるほどいらないんだと痛感させられ学校を走り去る。
頭痛がして繰り返される言葉。
嫌い嫌い嫌い嫌い。
歩いていても誰もよけてくれることはなくぶつかっても誰も気がつかない。
人ごみの真ん中で足を止めただ、泣きたかった。
∃
朝、いつもと同じように学校へ行ってみる。誰もこちらに気付くことなく楽しそうに話をしていた。
友達だと思ってもどうやら一方通行だったらしく自分がいないことにすら気がついてくれていない。
もしかしたらいない方が当たり前だったのかもしれない。
ただ、教室をでて昨日と同じように交差点をまっすぐと歩く。
正面をサラリーマンがすたすたと急ぎ足で向かってくる。
サラリーマンはすれ違いざま微かに半身になった。