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フィーカスのショートショートストーリー

謝罪に行く部下

作者: フィーカス

 ある薬品メーカーF社で、A社に納入していた薬品に関してクレームが発生した。

 その薬品の入れ物がいつものものと違っており、薬品の性質上、入れ物の材質と反応してしまい、使い物にならなくなったそうだ。

 製造課の課長はすぐさま代品送付の約束をしてA社からの電話を終わらせると、即座に担当の部下を呼びつけた。


「お前の作った商品にクレームが出た。すぐさま代品と菓子折りをもって先方に謝りに行ってこい!」

「え、僕一人でですか?」

 部下は突然の出張命令に驚いた。

「しかし課長、僕まだ作業中ですし、もう終業のベルが鳴る時間ですよ。せめて明日にしませんか?」

「ここからバス一本だから近いだろ。時間外つけてもいいし、終わったら報告してそのまま帰っていいから」

「でも僕、あまりお金が……」

「今日すぐに使うわけじゃないだろ。足りないなら貸すし、明日もらった領収書を出金伝票につけて提出すればいい話だ」

 作業中だった部下は、なんとか今日中にやっている作業を終わらせたいと思い、あれこれと課長に申し出たが、すべてあっさり返されてしまった。

 結局部下は荷物片手に、クレームを出したA社に向かうことになった。


 次の日。

 昨夜、「原因や是正などについては追って連絡いたします、と代品を納入し、謝罪してきました」と報告を受けた課長は、早朝からA社への報告書をあれこれ考えていた。

「課長、おはようございます。昨日はすみませんでした」

「ああ、今回のクレームの是正は考えておけよ」

 始業十分ほど前に部下が出勤し、課長に挨拶すると、さっそく領収書をつけた出金伝票を手渡した。

 課長はそれを受け取り領収書を見ると、突然部下を呼び戻した。

「え、課長、何でしょう?」

「お前、ちゃんと昨日作った商品、渡してきたんだよな」

「はい。先方から返却されたクレーム品もここにありますが……」

 部下は回収してきたクレーム品を課長に渡した。

「いや、それはいいが、一体なんだこの領収書は? 先方で飲み会でもやってきたのか?」

 ぱんぱん、と領収書をたたきながら部下に見せつけた。

「だって……」

 部下は委縮しながらも理由を述べた。



「課長が、ダイキリとカシオレをもって先方に謝りに行ってこいっていうから、途中の酒屋さんでわざわざ買ってきたんですよ」


 その部下は即座にクビになったそうだが、A社からは「昨日の飲み会、楽しかったです」と電話がかかってきたそうだ。

 部下一人で行かせるからこうなるんですよ(←

 ちなみに容器入れ間違えると、薬品によっては容器を腐食させるものもあるので注意が必要なのです。

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