その23 律、囲いこまれる。
ウェティウス様が腕の中から
一瞬たりとも出してくれないよ。
過保護過ぎる。
「ウェティウス様、別に死にそうになってるわけじゃないので運動させてください。」
私は言った。
「先ほど気持ち悪そうだった。」
ウェティウス様が言った。
「つわりです。」
ヨウカン食べたらよくなったよ。
「腕の中から出したくない。」
ウェティウス様が言った。
ああ、囲いこみモード中だった。
困った...気持ち悪いのもいつもあることはあるけど。
「ウェティウス様、トイレくらい一人でいけますから。」
私は言った。
トイレまで送って欲しくないよ。
今、ウェティウス様の執務室にいます。
大型ワンコが仕事放棄すると不味いので
来てます。
膝の上から下ろしてほしい。
は、寝てたよ。
「大丈夫か?」
ウェティウス様が仕事をしながら言った。
最近、寝ても寝ても寝ても眠いんだよね。
妊娠経験者のスザナお母様も
お母さんも
昔だから忘れたって言ってるし。
忘れられるから
女性は妊娠、出産何度でもできるって聞いたことがあるよ。
母は強しかな?
「律、なにか飲むか?」
ウェティウス様が言った。
「うん、飲む。」
喉乾いちゃった。
...また、口移しかい。
「ごめん、気持ち悪い。」
ちょうどいいタイミングで気持ち悪くなった。
「口移しもダメなのか?」
すごく悲しそうにウェティウス様が言った。
「今、ダメなだけだから。」
別に口移しで気持ち悪いわけじゃない。
でも、これをチャンスにしつけようかな?
「律。」
ウェティウス様が優しく抱き締めた。
やればできるんだね。
キスはおまけか...。
「大丈夫だから仕事してください。」
いざとなったら簡易ベッドを持ち込んで
そこで休もうかな?
「わかった。」
ウェティウス様が言った。
私のせいで仕事が滞って
極端かも知れないけど
国が滅んだら困るよ。
「グーちゃん、そんなに頑張らなくても大丈夫ですよ、前より仕事出来てますし、いざというときはなんとかなるようになってるんです、傭兵国ですから。」
サリュウスのお姉さんが言った。
お義祖父ちゃんがウェティウス様が
カータシキ魔法塔国に助けにきてくれた時
代理したって聞いてるけど。
「カータシキ魔法塔国の律様誘拐の時は魔法の痕跡があったので、いざというときの対応策としてベルティウス様が代理をなさったのです。」
ニノミ内務担当官が言った。
「カータシキ魔法塔国といえば、宇水の妖怪師匠が例のマルティウスを弟子にしたって連絡が来てたよ。」
私は言った。
「そうか、カータシキ魔法塔国も大分復興したようだ、バリジナグ外交官から聞いたのだが。」
ウェティウス様が仕事をしながら言った。
「よかったよ、あのまま国が滅んだら後腐れが悪かったから。」
私は言った。
「律は子供と私の事だけを考えていればよい。」
ウェティウス様が言った。
あー、まあ、ワーカホリックだったから
仕事がないと不安なんだよ。
「律。」
ウェティウス様は優しく抱き締めながらキスした。
ねぇ、ウェティウス様。
もしかしたら当分。
ウェティウス様じゃなくて
子供ことだけ考える。
日々がくるかもね。
でも、ウェティウス様の事
嫌いになったわけじゃないからね。




