幕間 猛剣の現状(サルティーアス・ドーリュム)
陛下、不覚をとりました。
サルティーアス・ドーリュム、
生きて帰れないかも知れません。
「メレニス様、私きっとオーヨ王国を復活させて見せますわ。」
あの女がなにか呟いてる。
頭が重い...。
意識が沼の底に引き込まれて行くようだ。
陛下!
ウェティウス・グーレラーシャ国王陛下!
陛下がしっかりせよと言ってる気がした。
「......陛下....。」
身動きがとれない。
なにかに絡まっているようだ。
沢山の人の気配を感じる。
「.....ここ......どこだ。」
意識が戻りつつあるようだ。
身動きはとれないが。
目を開けるとあの女がいた。
ハセフィヤ女官とかだったな。
「サルティーアス様、ご気分はいかがですか?」
医者らしき男が顔を出した。
脈をとっているようだ。
「.....誰だ?」
意識がまだ、戻りきらない。
「声までメレニス様ににてますね。」
メレニスとは誰だ?
父上の父上様だったか?
「私は、誘拐されたらしいな。」
枷でベッドに拘束されているようだ。
体力は温存しておこう。
「私のお話を受け入れてくださればこのようなことは致しませんでしたわ。」
あの女が妖しく微笑んだ。
「グーレラーシャの利益にならない事は指一本動かすつもりはない。」
私はそういって睨みつけた。
「指一本動かずともけっこうです。」
他の男が言った。
ああ、人形扱いする予定か。
私をなめるな。
王室管理官長の母をもつドーリュムの男だぞ。
ま、戦う方が得意だが。
クーシャルーカならもっといい対応をする。
律ならやり込めるな。
ああ、律は真の妹ではなかった。
...あの賢い義理の妹は、母上とにている。
容姿でなく中身がな。
「あかつきの瞳をお持ちの方が存在する、それだけでオーヨの民は立ち上がれる。」
たかだかオレンジ色の瞳ごときでたいそうな事だ。
「父上はオーヨのご出身なのか?」
ヌツオヨ大陸ご出身とはおっしゃっていた。
孤児で先先代国王ベルティウス様に
戦場でさ迷っているところを拾われたとか。
ドーリュム家の婿に入る時、孤児ゆえのひと悶着があったとか。
「メレニス様のご側室のご子息です。」
なるほど、先代オーヨの国王か先先代国王の側室のお子だったのか、父上は。
それがわかればご苦労は...。
あえていわぬと言うことは余程酷い目にあったらしいな。
「ライエス様はいつのまにか行方不明になられたらしいですわ。」
なるほど、追い出されたか?
ろくでもないな。
父上は12才くらいだったはずだ。
「そうか、私も役にたたん、解放しろ。」
父上を迎えに来ない国など知らん。
「セラシナ様とお子をつくり新生オーヨの祖となっていただきますわ。」
あの女がいい放った。
ヒステリーか?
「後宮の同志との連絡が取れなかったのが痛いわね。」
後宮にも仲間がいるのか?
ろくでもないな。
後宮はヌーツ帝国の後継者をうみだす
大事なところであろう。
ま、グーレラーシャの男は
王族だろう貴族だろうとと庶民だろうと
愛しい女に求愛するときは、
抱え込むからな。
後宮などいらぬが。
「なんとか、後宮に戻れないか?」
戻るつもりか、なんとか枷さえ外れれば。
...天鉱合金か...さすがに無理だな。
「当分無理ね、賄賂で抱き込んだ門番が連休なのよ。」
あの女は言った。
「...セラシナ様さえ連れ出せたら、新生オーヨ王国の復活に近づくのに。」
医師らしき男が言った。
セラシナ...どこかで聞いた事がある。
「ともかく、サルティーアス様は絶対に逃さない、セラシナ様とのあいだにお子をつくって頂かないと。」
お前らのいいようにはさせん。
グーレラーシャの不利益になるようならば、
国王陛下の不利益になるようならば、
私はこの命など惜しくはない。
髪の中身の小太刀すら奪われたが
...いざとなれば、なんとかして見せよう。
猛剣、サルティーアス・ドーリュムの名にかけて!
陛下、なるべく、戻ります。
でも、帰れない時は律をよろしくお願いいたします。
ハセフィヤ女官視点のものを
幽霊側室は今日も不在の本日分で投稿します。
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