グーレラーシャの獅子7
律がいない。
律が私の腕の中にいない。
この不安感は何だ。
今朝、律が部屋から出てこなかった。
おかしいと感じたスザナが様子を自らみにいくとベッドに寝た痕跡はあるのに律は居なかった。
律はどこにいった。
私は王室魔法担当官に調査を命じた。
探索系は彼らの専門だからだ。
「律。」
執務室で不安をまぎらわす為に仕事をしている。
律は仕事をないがしろにすることをことのほか嫌っていたから。
「陛下、王宮魔法担当官長がおいでになりました。」
サリュウス秘書官が言った。
律の部屋の調査が終了したようだ。
「入れろ。」
「孫、大丈夫か?」
王宮魔法担当官長の報告を熟考していると祖父上様がやってきた。
「祖父上様、律はやはりカータシキ魔法塔国に拐かされたようです。」
律の部屋にカータシキ魔法塔国特有の魔力の痕跡が残されていたそうだ。
ある意味私はほっとしていた。
律が自ら出ていったわけではないとわかったからだ。
「ラースに連絡をとる...意外と冷静じゃのう。」
祖父上様が言った。
「律なら、落ち着いてときっと言うでしょう。」
あの愛しい黒ウサギは常に
情報収集してからの行動だった。
「律嬢の効果じゃな、孫、ウェティウスよ。」
祖父上様が言った。
「はい?」
私は祖父上様の真剣な顔を見た。
「律嬢は真に得難き女性じゃ、孫よ、グーレラーシャの国王の伴侶を取り戻すせ。」
祖父上様は言った。
はっきりと律を私の伴侶として認めて。
「必ず。」
私は律をこの腕の中に取り戻す。
「ラーガラース烈王国は全面的に協力してくれるそうじゃ、ラースは故郷だった、カータシキの事を嫌っておるからのう。」
祖父上様が言った。
「ありがとうございます。」
ラース様ならカータシキの事をよくご存じだろう。
「政務は今よりわしが代行する、そなたは準備にかかるがよい。」
祖父上様が言った。
「はい、ありがとうございます。」
私は直ぐに執務室を出た。
部屋に帰るとドーリュム家の面々が待っていた。
ドーリュム家は代々王室管理担当官長の家系だから緊急時いてもおかしくないが。
「陛下、私もぜひお供させてください。」
サルティーデスのオレンジ色の瞳が私を見つめた。
「許す。」
『猛剣』のサルティーデスがいれば心強い。
「陛下、我らはグーレラーシャにて警護致しますのでご存分に。」
王宮警護官総隊長のライエス・ドーリュム、
律の義父が息子のクーシャルーカと警護官の礼をした。
「頼む。」
彼らに任せれば安心だ。
「陛下、本来であれば娘ごときに陛下を危険にさらしてはと思うのですが。」
スザナータ・ドーリュム。
...ドーリュム家の当主が泣きそうな顔をしていた。
「スザナ、私は律がいなければ存在できない。」
律がいなければ...。
きっと、遠からずこの世を捨てるであろう。
「陛下、律をお救いください。」
スザナはグーレラーシャの礼をした。
「必ず。」
私の宝物を取り戻す。
律、待っておれ。
必ずそなたの元へいこう。
それまでにそなたが害されていたならば。
きっと、そなたの仇を討とう。
そうなれば、この世に未練はない。
この世でもあの世でも私はそなたと一緒にいたい。
必ず、律をこの腕の中に取り戻す。
取り戻して二度と離さない。




