その10 律、陛下に抱き込まれる
目を覚ますと...綺麗な陛下の顔があった...っていつの間にか抱き込まれてるじゃん。
「...私、多分、椅子で居眠りしたよね。」
陛下の綺麗な顔見ながら...なんで、しっかりベッドの上でしかも陛下の長い手足に抱き込まれてる?動けないよ~。
「律?目が覚めたのか。」
優しい声で陛下がささやいた。
「うん......おかしいな、椅子で居眠りしたのに、何でベッドにいるんだろう。」
ぼそぼそいってると陛下が微笑んだ。
「朝方、目が覚めたら、律がベッドに突っ伏して寝ていたから隣に寝かした、心配させたようだな。」
うん、心配したよ、みんなね。
「別に寝かさなくても良かったのに。」
と、言うか、どうして手足が絡まってるんだろう、まだ、不安なのかな?
「若いころ、傭兵業務でアキュア聖王国にいった時、夜襲に備えて、座ったまま寝たら、次の日辛かった覚えがある、無理はしない方がよい。」
傭兵?夜襲?...この世界、戦いがあるんだね、しかも女王陛下も出るんだ、若いころだから、もしかしたら即位前で王女様だったのかな?
「あのさ、陛下、離してほしいんですけど。」
この態勢きついです。
「嫌だ、離さない。」
獣系続行中なのかな?抱え込み?
「ねぇ、私、別にどこも行かないですよ、陛下。」
少なくとも、誘拐犯のいる国には絶対にいかない。
「そうか...律、名前で呼んでくれ、陛下でなく。」
離す気ないんだね...名前...はてなんだっけ?
「.....え~と、う、何とかだったような。」
うが最初で....すが最後だった気がする。
「覚えてないか、ウェティウスだ、律。」
....うわーかみそうな名前~。
「...うぇ、...うえ?...上様じゃダメだよね...。」
上様、時代劇かい!
「言いづらいか?律。」
うん、とっても。
「ウェティウス様...言えた、言えたよ。」
感動が心に走りました、また、言えるかは知らないけど。
「ウェティウスだ、律、敬称は必要時以外いらん。」
必要時がわかんないし、距離間は保たないといけないから、絶対に様付けしよう、ウェティウス様、ウェティウス様、よし、覚えた、多分。
「カータシキ魔法塔国って言う、私達を誘拐した国が引き渡し要求したそうですね。」
絶対にそんな国いかない。
「律は渡さない。」
心なしか余計抱き込まれたような。
「イシカワさんもですよ、私も召喚した誘拐犯の国、何て行きたくありません。」
あ、安心した?ちょっと緩んだ。
「律が、帰るためにどうしても行くと言ったら、この腕の中から出せないと思っていた。」
部屋どころか腕の中かい、どんだけ不安なんだ。
「そう言う誘い文句なんですね、召喚失敗してる癖に、帰せるわけないです。」
だって、そのカータシキ魔法塔国に落ちてないし。
「そう言う考えかたか...律、帰りたいか?」
しっかりと私を抱き込んで...うぇ、ウェティウス様が言った。
「親とか祖父母とかには、死ぬまでに会えればいいなって思いますけど...別に帰れなくてもいいです、平穏無事なら。」
意外と残りたい感、満載だった、ほだされてるな、元の世界でこんなに深いつきあいした人いないし。
「そうか、私は、律にずっといてもらいたい。」
そう言うとへ、いや、うぇ.......今日一回目のキスですか?
「陛下、律は、嫁入り前の娘です。」
スザナお母様がおこしにきて言った。
「何を今更。」
へ、いや、ウェティウス様はしっかり私を抱え込んだまま答えた...本当に宝物かかえる子どもだよ。
「...例えそうでも節度をわきまえていただきたいものです。」
それ、そう思うよ。
「...出来るようならな。」
出来ないっていってるのも同然じゃん。
「...............とりあえず、お着替えを入浴の準備も出来ております。」
陛下、ウェティウス様、昨日入浴しないで寝たからね。
「一緒に入るか?」
何、満面の笑み?
「遠慮します。」
心の準備が必要だよ、そんなの。
「そうか、逃げるなよ。」
それこそ、今更だよ、今、逃げたらカータシキ魔法塔国の人に捕まっちゃうよ、魔法使いだし。
「律、今のうちに部屋に戻りなさい。」
スザナお母様が言った。
「うん、そうするね。」
ウェティウス様には悪いけど、着替えしたいし。
「陛下も困った方です、陛下の言動で律が淫乱女呼ばわりされたりするのに。」
インラン女デスカ...誰だよそれ。
「ねぇ、スザナお母様、私、ウェティウス様の面倒みようか?」
だって、あの人、自己管理苦手そうだし...それにさ。
「何を突然言い出すのですか?」
スザナお母様がびっくりしてるよ。
「私が仕事として、ウェティウス様にお仕えすれば、そう言う話にならないんじゃないかな?」
ま、多分、無理だろうけど、今のニート生活飽きたし、農業系なら役にたつ自信はあるんだよね、異世界人失格だけどね。
「...いいかも知れませんね、陛下といつでも一緒なのは仕事の関係と言い訳が立ちます。」
いつでも一緒はちょっと嫌だな。
「何を話している。」
ウェティウス様が性懲りもなく後ろから抱きついた。
「.....陛下、いつでも、律をそばにおいて置く気はありませんか?」
スザナお母様が言った。
「どう言う事だ。」
ウェティウス様が聞いた。
「律を陛下付の秘書官か何かにしてはいかがですか?」
ひ、秘書官?無理、絶対無理。
「.....異世界の賢い黒ウサギを秘書官にか?」
やめてよ、そのあだ名、ゆるキャラっぽいよ、フフフフってなにさ陛下、じゃないウェティウス様。
「私、賢くないのでお茶汲みでいいです。」
秘書官ってなにするか知らないし、私、現場の人なんです。
「いいだろう、秘書官でもお茶汲みでもなんにでもしてやる。」
ますます、力入れて抱きつくのやーめーて。
「ありがとうございます、ではそのように手配致します。」
で、結局、どっちなのさ。
「朝食に行くか。」
いつもどうり抱えようとされた。
「今日は手をつないで行きましょう。」
昨日倒れた癖に無理するんじゃない。
「それも、いいな♪」
何か喜んでるよ。
「ほどほどにお願いいたします。」
スザナお母様は青筋たってますが、いつもよりエロくないので許してやって下さい。
「律、食べさせてくれ。」
生野菜、食事介助要求来たよ、朝から...ま、頑張ってもらわないとね。
「グーレラーシャの獅子が異世界の賢い黒ウサギに夢中って言ううわさは本当だったんですね。」
明らかに、この国の人間じゃなさそうな人が食堂に来たよ、誰?
「律。」
陛下が私を抱え込んだよ...苦しいよ...。
「カータシキ魔法塔国、バリジナグ外交官、朝食の約束をした覚えはないがなんのようだ。」
陛下が臨戦態勢入ったっぽい...何で誘拐犯の国の人がいるのさ、警護官も臨戦態勢に入った、武器構えたの初めて見たよ。
「あなたが異世界の賢い黒ウサギにあわせてくれないからですよ。」
微笑を浮かべながら誘拐犯の国の人は言った、余裕だなぁ。
「陛下~、出し抜かれました。」
あ、オブディア警護官さん。
「申し訳ありません、陛下。」
ニフィロ警護官さんも。
「魔法封じもご苦労様です、私には効きませんが。」
隠し技持ってるんだ。
「こんな事してただですむと思っているのか。」
普通はすまないよね。
「フフフフ、さてね。」
普通のアニメとか、ドラマとか小説何かだと次回に続くなんだけどな、私的には続いて欲しくないです。
「バリジナグ外交官、律様にお会いになりたいなら、私に言って下さいといいましたよね。」
助けが来たよ、ヒフィゼ外務担当官長さん。
「...わかりました、あなたの顔をたてましょうか。」
バリジナグ外交官はそういって私に目を向けた。
「異世界の賢い黒ウサギ、カータシキ魔法塔国は良いところですよ。」
よくないよ。
「律はいかん。」
へい...ウェティウス様、大丈夫だよ。
「そうですか、では失礼致します。」
綺麗にグーレラーシャの礼をしてヒフィゼ外務担当官長さんに伴われて去って行く姿を見ながら思った、魔法使いに姿見られちゃったよ、大変な事にならないといいな、私は、平穏無事な異世界生活送りたいんですよ...この際、陛下のウェティウス様のそばでもいいです、だから、お願い、腕の力緩めて~、苦しいよ~。