その8 律、食事改善する。
「はい、あーんしてください。」
ミニトマトとレタスぽい生野菜をフォークに突き刺して陛下の口の前に食べやすいように出してみました。
「り、律?」
戸惑っているようです。
私、この国、生野菜とか、煮野菜とか、ゆで野菜ないとおもってたよ、あったんだね、魚があんまり出てこないのはデフォルトらしいけど(泣)
「陛下はほっておくと、野菜を召し上がらないので苦肉の作で揚げたり、炒めたり、肉に詰めたりしてたんです、律、合わないときは言わないといけませんよ。」
スザナお母様に言われました...今朝の食卓にもばっちり、生野菜のサラダが並んでいます、ドレッシングはヨーグルト系で変わってますが美味しいです。
「陛下は、偏食だったのか。」
美容と健康のために食べさせないとな...そのくらいの恩は感じるし...料理出来ないんだよね。
「律が食べさせて上げれば食べるんじゃない?」
クー兄ちゃんがニコニコしながら言いました、今日は日勤なのだそうです...食事介助か...中学生の時、特別養護老人ホーム幸福館でデキルンジャーの職場体験の時少ししたけど難しかったな。
「でも、やってみようかな。」
サラダを食べながら思いました、結構一緒に食事する機会があるんです、なるべく減らしたいよ...ハア、ジャスミナ様でも呼んでやれよ。
で数日後夕食にお呼ばれしたので、やって見ました、王宮料理人もぐるです、ダメ元ですからドキドキしてるようです。
「健康と美容にいいですよ。」
私は、さらに奨めました、女王陛下だって若い女性です、美容の言葉には弱いはずです、美人がさらに煌めきますよ。
「.....美容は、別にいいが...。」
見つめあっています..........あ、口を空けた、はい、どうぞ、おお、若いとむせないんだね。
「モグモグしてくださいね。」
うん、噛んでるな、不味そうだけど。
「じゃ、次は自分で食べてくださいね、野菜。」
2~3回、陛下の口に入れたあと言ったら。
「律が食べさせてくれなければ、野菜は食べん。」
と陛下が言いやがりました、アンタは子ども~?食事介助の必要なお年寄りじゃないだろう~。
「自分で食べくださいね、陛下。」
ウンザリして言うと、女王陛下は妙に嬉しそうに言った。
「律に食べさせてもらいたい。」
何でなんだどこがそんなに嬉しいんだ、女王陛下。
「先輩、オレ、何か、もう見てられません。」
警護の人が珍しく私語言ってるよ。
「...耐えろ、もっと、いたたまれない場面もあるぞ。」
...先輩警護官さん、いたたまれない場面なの?今してるの?
「...わかりました、ちゃんと食べるんですよ。」
何、その凄く嬉しそうな笑み、野菜苦手でしょう?あ、王宮料理人さんがばんざいしてる、苦労してるんだね。
「ああ、わかった。」
本当に嬉しそうだな...そして、いつも思うけど、美人だな、胸ないけど、身長高いし、ま、この国の女性は身長平均的に高いけどね。
「律も食べろ。」
...私にそのラム肉のハーブあぶりやき、食事介助してくれなくていいです、それより、珍しく出てる、ムール貝のチーズ焼きトマトソースがけがいいな。
「...そっちのムール貝にしてください。」
どうせ、しょっぱいでしょうけど。
「いいだろう。」
ムール貝をフォークに突き刺してやっぱり食事介助の体勢です、仕返ししたいのなら、あんなに嬉しそうじゃないしな...。
「ありがとうございます。」
やっぱり、しょっぱいけど美味しいな...食事介助されるのは何か恥ずかしいね...悪かったよ、女王陛下。
「そう言えば、ジャスミナ様とは何か進展ありました?」
あんだけアピールされてるんだもん、スザナお母様も何とかするっていってたし。
「何故、ヒフィゼ嬢の話が出てくる。」
女王陛下はちょっと、いつもより低い声で言った、もともと、低め美声だよね。
「ジャスミナ様、美人だし、半端なく色気あるし、陛下の事、好きらしいからいいんじゃないかな。」
ジャスミナ様に夢中になってくれれば、きっと解放してくれるよね。
「...律、私を煽っているのか?そうか、そんなに、押し倒されたいならすぐにしてやる。」
...何か、怒ってる?
「ジャスミナ様を押し倒すんだよね。」
ジャスミナ様の話だし。
「......律に決まってるだろう!」
何でさ?何で私なのさ?それに何で怒られるのさ?
「せ、先輩、オレ限界です。」
何か、さっきの警護官さん言ってるよ。
「....落ちとけ、誰だ、新人配置したやつは。」
新人なんだ...って何のんきなこと思ってるんだろう。
「ごめんなさい。」
陛下も好みがあるよね、ジャスミナ様じゃダメなのか。
「...すまなかった、大きい声を出して、そなたがヒフィゼ嬢の一派にいじめられているのを知りながら...。」
別になんともないんだよ、陛下、あれくらい、会社での職員同士の関係に比べれば、へでもないよ。
「ごめんなさい、食事の場での話題じゃないよね。」
陛下もゆっくりしたいだろうし。
「...律、また、食べさせてくれるか?」
いいけど...たまには好きなもの食べさせてやるか...そう思ってラム肉のハーブあぶりやきをさして差し出すと嬉しそうに食べてくれたよかった、機嫌直って。
「せ、先輩、オレもうダメです。」
あれ?新人さん別に食事介助しあいしてるだけですよ。
「...お前、基礎から鍛え直してやる、明日、第3修練場にこい。」
先輩、鍛え直すんだ、修練場って五十嵐道場みたいなのかな、一度行って見たいな。
「私が相手をしよう、明日夕方、王族用の修練場に来るが良い。」
あれ?陛下、ちょっと怒ってる?
あ、誰か、急ぎ足で入って来たよ、警護官の服来てるって...サルティーアス兄ちゃんじゃない...。
「慎んで、お受しなさい、オブディア警護官。」
.......あー、サルティーアス兄ちゃん、ティー兄ちゃんの隊だったのか、呼び出されたわけね、新人さんのせいで。
「は、はい。」
グーレラーシャの獅子に殺されるんだオレって遠い目をしていってるよ、陛下の二つ名ってそう言うんだ。
「陛下、お手数お掛けしいたします。」
ティー兄ちゃんがビシッと礼をした...格好いいけどしょせん陛下至上主義者のくせに、心酔してるんだそうだ。
「たまにはいいだろう、そなたの隊の新人の実力も図れるし。」
今は落ち着いてるみたいだね陛下。
「律、しっかり陛下にお仕えしているか?」
さあ、ティー兄ちゃん、私に何、期待しているわけ?
「サルティーアス、律なら大丈夫だ。」
陛下にかばわれたよ。
「......では、引き続き警護任務につきます。」
ティー兄ちゃん、今日、休みじゃ無かったっけ?
「サルティーアス、休みであろう、休むがよい。」
陛下、部下の休みまで把握してるんだね、すごいや。
「.......部下の不始末は、上司である私の不始末、警護任務をさせていただきます。」
ティー兄ちゃんが言うと陛下はため息をついて好きにせよと言った。
あのさ、女王陛下にどうにお仕えすれば、サルティーアス兄ちゃんは満足なのさ...。
「帰るぞ、律。」
あ、陛下、帰るんですね...陛下がさあ、抱き上げたりするからティー兄ちゃんが誤解するんじゃない......ま、これがなければ、陛下じゃないか...やっぱりキスするんですね...もう諦めたよ。
「うわー、もう無理です。」
「懲りないやつだな。」
新人さん、ごめんなさい、全部エロエロ陛下が悪いんです...やっぱり、私の事押し倒したいんだ...言動に気を付けよう...いつまでもたっても、捕食者と獲物の関係なのかな...寂しいな。
御愛読ありがとうございます、来年もまだ、続きます、お引き立てをよろしくお願い致します。
皆さま、良いお年をお迎えくださいませ。
阿野根の作者