もう一つの始まり
ある家に少女が一人いた
一人で、すなわちその家には少女以外いないのだ
他の家族は外に出かけてるわけではない
もういないのだ、いない少女の家族は死んでしまったのだ
だから、少女は一人この家にただ一人なのだ
少女の家族には両親のほかに兄が一人いた歳の離れた兄だった
少女の両親と兄は国の専属魔術師だった
そしてあるとき新しい大がかりな魔術開発の話が流れたその魔術が開発されるとこの国はさらなる発展を遂げて生活にも役立つという話だった
専属魔術師であった少女の両親と兄もその話に賛同し、新魔術開発グループのメンバーに選ばれた
そして、開発が始まった
その開発は大きなミスも問題もなく順調に進んでいった
遂に新魔術の開発はほとんど終わりあとは発動だけとなった
新魔術のため、安全の確認には余念なくとても厳しく行われた
新魔術を発動できるぎりぎりまでにさげて何度も何度も試験発動をした
試験発動のなかでも問題は起きず20回連続で問題が起きなかったのでこれで大丈夫と全員が思いようやく新魔術の発動にくりだした
そして、新魔術の発動は成功し開発されこの国がさらなる発展を遂げるはずだった
しかし、実験は失敗した開発グループの全員を道ずれにして
どうして実験が失敗したのか、それともこの結果が開発グループにしてみれば成功なのか誰にも分からなかった
もちろん少女にもわからない、ただ一つ少女にわかることがあると言えばこの実験によって家族を失ったことだけだ
このとき少女は8才だった
それから4年がたち少女は12歳になった
少女は一人だけの家のなかのある部屋である本を探していた
部屋とは父の書斎だ、少女は父の書斎にいた
父には書斎には12歳になるまで入ってはいけないと少女は言われていた
だからこれまで、その言いつけを守り書斎には一度も入ったことはなかったのだ
探し物というのは召喚魔法についての魔術書だ
少女は「もう・・・1人は嫌だよ・・・」とつぶやきながら本を探していた
三時間ほど探してもみつからなかったので今日はあきらめようとしたとき父の机の下に何かが隠されていることに気付いた、それは隠し扉だった
鍵を開けて扉を開き中に入ると、そのさきには地下室があったそこには書斎よりも多くの本が置いてあった
そして、その中に少女が探していた召喚魔法についての魔術書があった
少女は魔術書を手に取り読んで行った
その魔術書の中には一枚の紙がはさまれていて、その紙には召喚魔法に必要なアイテムとそのアイテムの手に入れ方が書いてあった
少女は「やった・・・これで・・・」と喜んだ、アイテムに関しては昔両親と兄が手に入れたものが倉庫の中に入っているからだ
少女は本を閉じるとすぐに倉庫を目指して走って行った
倉庫から目的のアイテムを探し出して本とともに魔術で出したアイテムボックスの中に入れアイテムボックスを消し両親と兄が魔術の実験に使っていた近くの森の中の実験場を目指して走って行った
向かう途中に何人か知り合いに「そんなに急いでどうしたんだ?」など言われたが少女は「なんでもないよ」といい走り去っていった
そして、実験場に着いた時には日が傾き始めてきたころだった
少女はすぐに召喚魔術の準備にとりかかった、だが大人にはそこまで時間がかからない簡単なことであっても12歳の少女にとっては難しいものであって準備が終わったのは日はとうに沈んで二つの月が輝いている頃だった
そして少女は魔術の発動の取りかかった魔術の発動には魔力を込めながら願いを唱える、つまり呪文を詠唱をする必要がある
少女は何度も本を読み直し呪文を覚え息を整え詠唱を開始した
『星に願い 天に願う 我の魔力を糧にして聞き入れろ』
『外の世界よりこの地に我らに近しき命を召喚せよ! サモン・テルマ!』
少女の詠唱が終わると同時に辺りが輝き始めすぐに光で埋め尽くされてしまった、だんだんと光が薄れてくるとのその中に青年の姿があった
そしてこれから少女・・・クロエ=ジュワールと青年・・・水瀬優理の新たな人生が始まる