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盗人の日々  作者: 神崎錐
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憂鬱


転々と雲が浮かぶ、青い空。

水平線が広がる海。


綺麗だな。

そんなことを考えながら、ぼんやりと海面を眺める。

青い海面は所々白く泡立ち、時折魚が飛び跳ねる。


生きた魚を見るのは何時振りだったろうか。

死んだ魚自体は父親が生きていた頃に焼いて食べていた記憶があるが、あれは確か父親の策略で匂いしかわからず、その姿を窺うことも叶わなかった。

だとすると、この世界で魚を見るのは実質初めてということだろうか。

生態系自体はあまりあちらの世界と変わりないようではあるが、少しばかり気になる。


魚は長らく食していない。

出来れば近いうちに食べる機会があればと思っている。

魚は好物の一つだったから、かなり恋しく感じてしまう。

米や大豆製品は諦めているが、魚は流石に諦められない。

住居の近所に川が無かったのが今でも不思議ではあるが。

(水は基本的に雨水、泥水、井戸水の三択。主人公の場合は初めの二つが主流)


時折地平線の彼方に見える角が生えた生物を見なかったことにしながら、意味も無いことを考える。

ここまでのんびりするのも何年ぶりだろうか。

少なくとも、この世界に来てから同じ場所で生理現象以外でじっとしていた記憶が無い。

まぁ、ある意味では俺は同じ場所にいると言うわけではないのだが。



「おい、ボーっとするな!きりきり働け!!」



その声と共に、頭に衝撃が来る。殴られたらしい。痛みは後からじりじりとやってきた。

こういう痛みを感じるのが嫌なので本当は避けたかったのだが、避けると状況が悪化する。

故に、暴力を甘んじて受けることしか出来ない。

その衝撃で倒れた身を起こし、殴った相手に向き直る。



「すみませんでした」



「わかったら甲板の掃除でもしとけ!次サボってたら海に放り投げてやる!」



そう言うと、殴った男は気が納まったようで船内に戻っていった。

さて。もうわかったと思うが、俺は今船の上にいる。ちなみに仲間はいない。

何で自分はこんな所にいるのだろうか。自問自答しても、答えはさっぱり見えてこない。

口から漏れるのは溜息ばかりだった。












俺がこういう状況になったそもそもの始まりは、俺にも実の所は今もよく分かっていない。

唯、俺がかなりの偶然でここにいるのだということは確かだった。

もっとも、その偶然は良い方ではなく、おそらく限りなく悪い方の偶然だったのだろうが。


俺はあの後、無事に仲間全員と合流することが出来た。

あの勇者一行を見たというと、仲間全員が一致団結するのは当然の結果だったのだろう。

次の旅の準備は数分程度で終わり、船も何とかなった。(リーダーに仕事を押し付けた人が貸してくれた)


そして、出航の時。

貸してもらった船が結構年季の入った漁船だと知った時はかなり驚いた。(魔術師が魔法で強化するといったときにはもっと驚いた。魔法の万能さに。実際はそこまで万能でもないらしいのだが)


俺が船に乗り込む前、俺は旅の荷を揃えるとき仲間と別れて行動した。

集合場所は借りた船の上。

今思えば、それがいけなかったのだろう。

俺は時折自分自身でも忘れるが、中身は成人していても見た目は子供だ。

その時、俺はその事をすっかり失念していた。


俺は港に着いてからとある大きな船の前を通り過ぎようとした時、背後から忍び寄ってきた何かが敵意を持っていたことに気付かなかった。

そして頭に衝撃が来て、目の前が暗くなった。

気が付いたらあの船で海水を頭から被せられて強制的に働かされることになっていた。

かなりの重労働だ。辛いとは思うが、とりあえず大陸に着くまでの辛抱だと自分に言い聞かせている。

それまでにこの体が持つかどうかが甚だ疑問ではあるが。


胡散臭い船員が言うに、この船は売買が目的の公的な船だという。少しばかり寄り道はするらしいが。

そして、寄り道の途中で俺が目的とする大陸にも少しだけ寄るのだという。(盗み聞き)

そのタイミングを見計らって、ここから抜け出す予定だ。そのほうが面倒も少ない。

色々と彼らの言動に不審な点もあるが、今の所はそれ以外に選択肢は無いだろう。


しかし、俺はこの船の商売が公的に認められているのは嘘ではないかと思っている。

実際に聞いた話ではないが、船員の言う品……ギィルの実やボランの実(効能としては麻薬のような物)は確か風の噂では法律で服用が禁止になったといっていたような気がする。

(まぁ、そんな噂が流れてもスラムでは変わらず存在していたが)。

飽く迄も噂なので定かではないが、どちらにせよ俺自身はここに長居したいとは思っていない。

何せこっそり調べてみるとこの船は実の所は奴隷船。下手したら俺が売られないとも限らないのだ。

恐ろしい限りである。


ブルリと少し身を震わせた後、また掃除を再開する。

俺は単純に言ってしまえば唯の使い捨ての道具だ。

いくらでも替えがきく。

だから、少なくともこうして言われた仕事はちゃんとこなす必要がある。

少なくとも、大陸に着くその日迄は。


そう心中で決め、俺はこれから待つだろう憂鬱な日々に小さく肩を落とした。

青い空を見上げると、どこかで見たような白い鳥が飛んでいた。



主人公は買い物をした。

水が入った瓶×10を購入した。

古びた本を購入した。

1500シス支払った。

水が入った瓶×10を手に入れた。

古びた本を手に入れた。

主人公はうかれた。

注意力が20低下した。

主人公はうかれている。

主人公は港に向かった。

怪しい船員が現れた。

主人公はうかれて気付かない。

怪しい船員の攻撃。

主人公はうかれて気付かない。

クリーンヒット。

主人公は気絶した。

怪しい船員は臨時労働者を手に入れた。

主人公は〔奴隷〕に転職した。




実は手遅れだったり。

まぁ、ちゃんと題名通りに戻ると思います・・・・・・よ?


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