仲間
「………………」
無言で身を起こす。
そこは地獄ではなく、宿の一室だった。
部屋には仲間が全員集結しており、俺が寝ていたベッドの周辺にはリ-ダーと僧侶がいた。
リ-ダーは左隣に、僧侶は右隣に立っており、僧侶は何故か俺が着けていた腕輪を持っていた。
何故か少し呆然としている仲間たちに、俺はとりあえず声をかける。
「おはよう」
そう言うと、やっと反応した。
「……あぁ、おはよう…じゃない!!お前何時まで眠ってたん……」
「大丈夫?ロイ。さっきまで微動たりともしてなかったけど」
「俺が殺気出しても全く反応が無いときはかなり驚いたぞ」
「遮るなよ!」
そのやりとりを見て、少し実感がうまれる。
ここは現実だ。
「ん。心配かけてごめんよ、皆」
そのやりとりを見て少し口元を緩め、そう全員に向けて話しかける。
そう言うと、仲間は皆、気にするなというようなことを言った。
どうやら、俺の仲間は思ったよりも薄情ではなかったようだ。
そんなことを考えていると、僧侶が話しかけてきた。
「ロイ」
「何?僧侶」
「お前……馬鹿か?」
馬鹿にされた。
「遺書、読んだぞ。はっきり言うが、呪いの腕輪の可能性がわかってて嵌めるのは完全なる馬鹿の行為だ」
御尤もだ。何も言い返せない。
「ごめん。あの時はどうかしてた」
「だろうな…この指輪にはお前が遺書で述べた推測どおり、呪いが掛かっていた。一つは、着用した人間の体と魂を分離させる呪い。二つは、着用したものの頭を悪くする呪い。三つは、この腕輪を見たものが腕輪を着けたくなる呪いで、これは一般的には魅了と言われている」
「それのせいか……面倒な呪いだな」
「心配しなくても、もう呪いは祓った。これはもう、ただのお前が拾った腕輪だ」
「そっか。よかったね」
そこまで説明されると、リーダーはようやくこちらの話していることに気付いたようで、声をあげる。
「おい、ちょっと待て!それ調べたの俺だぞ!?俺に説明させ……」
「はっ!」←剣士の攻撃。
「くらえ…っと!」←魔術師の攻撃(杖で殴る)。
「よっ…はっと……え、何?」←例の如く受け流す。
「……いや…もういい」
「そっか。ねぇ、僧侶」
「なんだ?」
「それ頂戴」
「それ?もしかしてこの腕輪か?」
「そう」
「……お前、絶対馬鹿だろ」
「呪い祓ってるなら大丈夫」
そう断言すると、僧侶は呆れたような顔で見てきた。
まぁ、普通は先ほどまで自らを蝕んだ腕輪をまた着けようとする輩なんていないのだろうが。
ちなみにリーダーは剣士に襲われてそれどころでは無くなっており、魔術師はそれを見て笑っている。
「……ほらよ」
「ん。ありがとう」
腕輪を僧侶から受け取り、左手首に着ける。
呪いを祓ってあったおかげで体に異常は起きなかった。
「…うん。大丈夫そうだね」
「あ、ちょ、ロイ!何でまた着けてるんだよ!」
「防具として使うため」
「馬鹿だろお前!!」
「どうとでも。それより、飯食わない?俺、腹減った」
「いいね。俺も腹減った」
「そうだな。食いに行くか」
「そうだな。あと、ロイ」
「何?」
「もうじき、村を出ることになってる。出発は今日の夕刻だ」
「ん。じゃ、行こうか」
「「「わかった」」」
そのやりとりを終え、部屋から出る。
向かうのは食堂だ。
「…だから、無視するなーー!!!」
退出した部屋から、そんなリ-ダーの叫び声が聞こえた。