詩 コンビニに寄ると、ナンパされる
下校途中、コンビニに寄ると、彼が
「トイレに行く」
と言うので、私はうなずく。
「1人で大丈夫か?」
「大丈夫よ。すぐ戻ってくるんでしょう?」
「おう。行ってくる」
彼が行ってしまったので、アイスを眺める。
チョコレートもいいし、バニラもいいし、さてどうしようかなと迷っていると、人の気配を感じる。
「あ、来…あれ?」
側に来たのは20代くらいだろうか。
スーツを着た男の人だった。
香水をどれだけつけているのか知らないが、匂いが強すぎる。
コンビニの商品が全部まずくなるような、そんな強烈な香りだった。
「1人?」
話しかけられて、私は首を横に振る。
何の用だろうと身構えていると、スマホを取り出してくる。
「連絡先、交換しない?」
「…は?」
私は固まり、男を見つめる。
これは…ナンパというものだろうか。
初めて遭遇したので、どうしていいか分からず、首を横に振り続ける。
「スマホくらい持っているでしょう? 交換しよう、ね?」
男はしつこく、私はトイレの方角を眺める。
すると彼が出て来て、顔を明るくする。
彼も何かの勘で気づいたのか、怖い顔で側にやって来る。
「何の用ですか?」
急に怖い声で話しかけられ、びっくりしたのか、男が彼を振り返る。体格の良い彼を前に、急におどおどし始める。
「もしかして…彼氏?」
さっきまでの余裕などなく、気弱な口調となる。
私はかっこいいと彼を見つめ、少し元気を取り戻す。
「そうですけど、何の用ですか?」
彼がもう一度、地をはるような低い声を出すと、男は「ははは」と弱々しく笑い、去っていく。
彼はコンビニを出るまで、男を睨み続ける。
私は助かったと思い、彼の胸に抱きつく。
「怖かった…」
声を震わすと、彼が優しい顔つきとなり、背中を叩いてくる。
「だから言ったのに。1人で大丈夫かって」
「うん。こめん…。ナンパされるなんて、初めてだったから」
「そうなのか? とにかく無事で良かった」
頭を撫でられ、私は安堵の息を吐き出す。
彼の言うことはちゃんと聞こうと、今度から気をつけるつもりだった。
「大丈夫、大丈夫。俺がいるから、な?」
甘くてとろけるような声。
私を安心させるためだけの声に、身体が落ち着いてくる。
「ありがとう。もう大丈夫」
そう言って、彼から身体を離したのだが、心配なのか手を繋いでくる。
私もまだ彼の温もりが欲しくて、指を絡める。
「それよりも何を買う?」
「そうだな…。アイスかジュースか」
私はようやく笑顔を浮かべ、彼と商品を見始める。
守ってくれて、ありがとうね。




