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第七話:練り歩くミスリルの山

 先日のことだ、俺は街の警護でありながら一人の不審者を取り逃した。


 体をシダと苔で覆っていた男でこの仕事に着いて3年ほどが経つがあれほど奇怪な男は初めてだった。


 結論を言えばその男は特に街に害を及ぼすことはなかった。噂によるとギルドの壁を破壊したらしいが、それはギルドがきっちり落とし前を付けるだろう。


 なぜこんな物思いに耽っているかというと、目の前の光景に眩暈を覚えたからだ。


 巨大なミスリル鉱石の山が前進してきている。先頭には見覚えのある腰布一枚の蛮族がおり、こちらに近づいてきている。


 関わり合いになりたくなどなかったが、これも門番の仕事、仕方なく応対することにした。


 ――――――――――――――――――――――


「止まれ!」


 俺たちは門番に呼び止められた。


「怪しいものではない。通してくれ」


「どう見ても怪しいだろ!なんだその鉱石の山は」


「ああ、霧の渓谷で採掘してきたミスリルだ」


「ミスリル?霧の渓谷?いやあそこにはドラゴンしかいないはず」


「毒殺したのよ~」


 メルティが門番にウキウキで試験管を見せた。様々な色に反射する紫色の液体が入っている。


「毒!?そんな危険なもの街に入れられるわけないだろ!そもそもいつ出ていったんだあんたら!」


「そういえば行きは門を使わなかったな。帰りもそうすればよかったな」


「うちの裏口からだと鉱石の山が通れないわよ~」


「なるほどだから正面から来たのか」


 俺は納得し門番に向き直り言った。


「そういうわけだから通してくれ」


「いや、人の話を聞け!変質者に猛毒、街に入れるわけないだろ!」


「テッペイ~流石に重いのじゃ~」


「荷物持ちもこう言っている、早く通してやってくれ」


「めんどくさいから、毒をかけてもいいかしら~?」


「いやメルティ、そんなことをしては信頼を損なう、きちんと説明すればわかってくれるだろう」


「あら、残念ね~」


「門番、俺はただこのミスリルを使って外骨格とハサミを作りたいだけなのだ、そのために危険なミスリルドラゴンを討伐してきた。

 あれほどの凶悪な魔物、実は街の方でも迷惑していたのではないか?」


「は?……外骨格?ハサミ?……確かに霧の渓谷にミスリルドラゴンが生息してから交通網が何年も潰されてきてるらしいが……そもそも本当に退治したのか?」


「ドラミナ記念の頭を出してくれ」


「わかったのじゃ」


 ドスン!ガサガサ。


 一度鉱石塊を置きそこからミスリルドラゴンの頭(血抜き済み)を出した。


「妾達で倒したのじゃ!」


「こ、これは本当にミスリルドラゴンの頭なのか?実物を見たことがないが、だがこの存在感。偽物とも思えない」


「社会貢献してるはずだ、通してくれ」


「ギルドで確認してもらわないとわからないな……仕方がない。通してやるがまずはギルドで認定を受けてきてくれ。できるな?」


「了解した。よしドラミナもう少し運んでくれ」


「わかったのじゃ!」


 こうして俺たちはひと悶着あったものの街に帰還することができた。


「言われた通りギルドを目指すぞ。臨時収入があるかもしれんしな」


「借金を返せるといいのじゃ!」


 俺たちが大通りを進んでいく中、人通りは俺たちを避けるように左右に分かれていった。


「今日の街の人間は随分通行に協力的だな」


《ドラゴンの頭付きの鉱石の山と一緒に練り歩いてたら誰だって避けますからね!》


「なんか、王様になった気分なのじゃ!」


「悪い気はしないわね~」


 そんなこんなで俺たちはすんなりとギルドに着いた。


「あ!テッペイさん!また腰布一枚になってる!」


 個人的にもう馴染みといっていいギルドの職員がやってきた。ギルドには担当とかのシステムがあるのだろうか?


「ああ、諸事情で外骨格を失ってしまってな。新しい外骨格を作るための材料を取ってきたんだ。

 その材料というのがミスリルドラゴンだったわけだが、ギルドの方で討伐認定をしてほしい」


「えっ?霧の谷のミスリルドラゴンですか?」


「そうだ、ギルドの外に頭とミスリルの山が置いてあるから鑑定してほしい」


「わ、わかりました。買取カウンターのミゲルさんに言ってきますね」


 暫くすると買取カウンターでお馴染みの屈強な男がやってきた。ミゲルという名前だったのか。


「おう、苔兄ちゃん。今度はミスリルドラゴンを狩って来たんだって?飽きさせないねえ」


 ミゲルも俺のことを覚えていたらしく、気さくな態度でミスリルの山を見始めた。


「こりゃあ、本物のミスリルドラゴンの首だなあ、ところで外皮と頭以外の死骸はどうした?」


「要らんので置いてきた。俺に必要なのは外骨格用のミスリルだけだからな」


「おい、そりゃとんでもなくもったいねえぞ!全部合わせたら1000万ゴルドは下らねえぞ!まあいらないというならギルドの回収隊に取りに行かせてもらうがいいな?」


「今から戻るのも手間だからな、討伐賞金みたいなのがもらえるならそれだけでいい」


「テッペイさん!ミスリルドラゴン討伐は30万ゴルドですよ!壁代を抜いて27万ゴルドでいいですよね?」


 ギルド職員がにこやかに問いかけてくる。


「ああ、それで構わないそれと頭はいらないから売れるか?」


「あん?牙とか目とかは高く買い取れるぞ」


「目は毒でダメになってるかもしれん」


「ん?なんでだ?」


「毒殺したからだ」


「ドラゴンを?毒で?」


「そうよ~テッペイの中で合成された新種の毒は凄いんだから~見る~?」


 門番の時のようにウキウキでメルティは試験管を見せていた。


「そんなやべー毒をこっちに向けるな!まあ、そういうことならなんていうかちょっと割安買取だな」


「血抜きはしてあるから毒自体はもう頭には残ってないはずだ」


「そいつは助かるな。そんな得体のしれない毒抜きからだったらむしろ手数料取ってたかもしれねえ」


 俺たちはドラゴンの頭代3万ゴルドを追加で受け取り、ギルドを後にした。


「お金持ちなのじゃ~」


 ドラミナは30万ゴルドに上機嫌だった。


「借金も返せたしな。これでしがらみはなくなった。メルティ防具屋に行くぞ!」


「ハサミづくりね~。テッペイには沢山楽しませてもらったし、頑張るわよ~」


「わ、妾も鉱石運び、がんばるのじゃ!」


「たのも~」


 俺たちは防具屋の暖簾をくぐった。


「おう、腰布のテッペイじゃねえか……ってゲッ!なんで毒妖精がいるんだ!」


「あら、テッペイの新しい装備を作るために私を紹介したのはグスタフさんあなたでしょ~?」


「たしかにテッペイの要求に俺じゃ応えれねえからってあんたを紹介したけど穴倉から出てくると思わなかったんだよ!」


「今は研究室にいるより、テッペイと一緒の方がよっぽど成果があるのよ~」


「それはなんというかテッペイお前には同情するぜ」


「俺に毒は効かん気にするな」


《そういうことじゃないと思うんだけどなぁ》


「お、おうそうか、それでミスリルで全身鎧作るんだったよな?300万ゴルドぐらいかかるが大丈夫か?」


「ミスリルは山ほど採ってきたから素材代を抜いてくれないか」


「あ、どれどれ。なんだこの量は!?ていうか店先にこんな塊置くな邪魔だろ!」


「なに今から使うから問題ないだろう」


「今からって俺にも他の仕事があったりしてだなあ」


「高純度ミスリル加工なんてこんな田舎じゃなかなかできないんじゃな~い?」


「いやまあ確かにそうなんだが、ん~まあ毒妖精が居るし錬金術も使えるならあっという間か」


「そうよ~あっという間よ~」


「では、まず俺の外骨格だが、丸みを帯びたデザインで可動域を多めに確保しつつ関節の強度を保ち、顔部分はフェイスガードが魔力で開閉するようにして……」


「いや注文おおいな!!」


「次にハサミだがこちらの方が大切で、まずここにミスリルをふんだんに使い重さは気にせず、厚みを持って作ってほしく、また一度掴んだ相手を放さないための返しを付けて……」


《ああ、カニのことになるとなんて迷惑なの……申し訳ない》


「やることないから暇なのじゃ~」


 ドラミナだけは何も話についていけていなかった。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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