第六話:自分で素材を取ってくればタダだよね
メルティの案内で俺たちは霧の立ち込める渓谷にやってきた。
「なんだか不吉なのじゃ……」
「ここの霧には毒はないから大丈夫よ~」
「視界が遮られそうだな。触覚でカバーするか。メルティ、ここにミスリルがあるんだな」
「そうよ~。放棄されたのがもったいないくらいの量があるから、バッチリハサミが作れると思うわ~」
グオゴゴゴ……。
「へ、変な音が聞こえるのじゃ!行きたくないのじゃ~」
「あら~?じゃあドラゴンちゃんはここで待ってる?」
「い、行くのじゃ!テッペイを案内するのは妾なのじゃ!」
意を決したドラミナを先頭に俺たちは渓谷に入っていった。
カサカサ。
「な、なんじゃ!?」
霧の中から数匹の獣が現れた。
「オオカミのようで少し違うな。俺の触覚によると4匹ほどいると感じる」
《さっきから言ってますけど、あなたに触覚なんてないですからね!》
「魔の霧で変異した魔物ね~」
「毒はないってさっき言ってたのじゃ!」
「毒じゃないわよ~魔力は濃度が高いと生物の変異を促すものなのよ~」
「どのみち囲まれているようだから排除しないとな」
「任せるのじゃ!」
目にはっきり見えるものは怖くないらしいドラミナは変異狼をおもむろに殴り飛ばした。
グシャ!
次々と変異狼たちはミンチになっていった。
「大分脆い生き物なんだな」
「ドラゴンちゃんの腕力が凄すぎるだけだと思うわよ~地面も抉れてるし~」
「あ、一匹そっちに行ってしまったのじゃ!」
ガブリ。
変異狼に俺は噛みつかれた。
「む!腕をやられたか、自切!」
ブチッ!
俺は腕を切り離し変異狼の嚙みつきから逃れた。
「えっ!?」
メルティは突然腕を切り離した俺に驚愕していた。
「テッペイの腕はすぐ生えてくるから大丈夫じゃ~」
「はい?」
ズルッ!
「ああ、少し腹が減るがな」
俺は素早く腕を再生させると、変異狼の次の動きを警戒する。
しかし変異狼は口から泡を吹き始め痙攣して、絶命した。
「体に溜まっていた毒が効いたようだな」
「これは面白いわー!血液サンプルを取っとかなきゃ~」
メルティはウキウキしながら毒で死んだ変異狼の血を瓶詰にし始めた。
「しかしこの程度の生き物が跋扈してるからと採掘を放棄するものだろうか?」
「あら?鋭いわね~。もう少し進めば原因が分かるから見てのお楽しみよ~」
「さっきの唸り声が原因だって誰でもわかるのじゃ……」
グオゴゴゴゴゴゴ!!
しばらく進むと入り口で聞いた時よりも巨大な唸り声が響いた。
一瞬霧が晴れそこには緑がかった銀色の巨竜が鎮座していた。
「ミスリルドラゴンよ~」
「この世界のミスリルは鉱石じゃなくて生き物の外皮だったのか」
「普通は鉱山で採掘するのじゃ~!」
「鉱山より純度も量も一気にとれるわよ~」
「危険度が段違いなのじゃ~!」
「羨ましい外骨格だ……」
俺はミスリルドラゴンの硬そうな外皮に羨望の眼差しを向けた。
「先手必勝じゃ!」
ドラミナは大きく息を吸い込み、ブレスの準備をし始めた
「まて!ドラミナ!」
「なんでじゃ?」
「今消し炭にしようとしてないか?」
「そうじゃが?」
「ミスリルは消し炭にしてもつかえるのか?」
「無理じゃな」
「俺たちは何をしに来た?」
「ミスリルを取りに来たのじゃ」
「じゃあ消し炭はだめだな?」
「わ、わかったのじゃ」
ドラミナはブレスをあきらめミスリルドラゴンに殴り掛かりに行った。
ドゴォ!
すさまじい打撃音とともに少しミスリルドラゴンは後ろにずれた。
「かったいのじゃ~」
「ぜーんぜん効いてないのね~」
グギャアア!
「怒らせることはできたみたいだぞ」
「それはいらないのじゃ!」
ミスリルドラゴンの強力な尾撃が放たれた。
「あぶないのじゃ!」
ドラミナは寸前で避けた。
メルティはそもそも戦闘範囲外にいた。
グシャア!
俺は尾に叩かれて壁のシミになりそうになった。
「テッペイ!大丈夫なのじゃ!?」
「全身の骨が砕けた気がしたがもう治ってるから気にするな。それにしても尾だけで凄まじい硬さだ。今の俺のハサミで傷をつける事が出来そうもないな」
「妾の攻撃も対して効いてないのじゃ~。炎を使わせてほしいのじゃ~」
「それはだめだ!メルティ!今ある強力な毒をありったけ俺に飲ませろ!」
「え~いいの~?どうなってもしらないわよ~」
口ではそんなことを言っていたメルティだったが、巨大な注射器をどこからともなく取り出し、俺に躊躇なく突き刺してきた。
「むう、これは神経毒と腐食毒と腐敗毒と出血毒」
「よくわかるわね~テッペイも毒好きなのかしら~!」
《どうして毒のテイスティングができるの……そんな能力与えてないわよ!》
「よし!ドラミナ!口を開けさせるんだ!」
「わかったのじゃ!」
ドラミナが空を飛びミスリルドラゴンの頭に飛びつく。
「グギギギ」
ミスリルドラゴンも本能で危険を察知してか口を開かまいと抵抗をする。
「いい加減開けるのじゃ~!」
ガバッ!
遂にミスリルドラゴンの口をこじ開けた。
「よくやった!」
俺は二本の歩脚に力を込め、ミスリルドラゴンの口に飛び込む。
ガチン!
その瞬間ドラミナがミスリルドラゴンの顎から力を抜き俺の歩脚は飲み込まれた。
ボトリ。
歩脚が無くなって受け身をとれない俺はその場に落ちた。
「どうだ?毒は効いたか?」
俺は歩脚を再生しながらミスリルドラゴンの様子を窺かった。
「どうかしら~元から緑がかってるからわからないわね~」
「でもさっきからピクリとも動いとらんのじゃ」
徐々にミスリルドラゴンの顔が紫色を帯び口の端から泡と血を流し始めた。
グオゴ、ガフッ!
最後は血涙を流しながらミスリルドラゴンは倒れた。
「わお!ドラゴンも殺せる毒なんてすごいわ~。採集!採集!」
メルティは嬉々としてミスリルドラゴンの死体から流れ出る液体という液体を採取していた。
「でもこんな毒まみれじゃミスリル剝ぐのも危ないのじゃ!」
「メルティなんかいい道具はないのか」
「テッペイは毒が平気なんだからこのつるはしで掘ればいいと思うわよ~」
メルティはおもむろに大ぶりのつるはしを取り出した。
「空間魔法は便利じゃな~」
「でもミスリルドラゴンの死体は入らないからミスリルはドラゴンちゃんが運んで頂戴ね~」
「ふん!ふん!」
俺はつるはしを握りしめミスリルドラゴンの外皮からミスリルを掘削を始める。
作業できるのが俺しかいないため外皮を剝がし終えるころには日が暮れていた。
「テッペイお疲れ様~」
「運搬は妾がやるからテッペイは手ぶらで帰るのじゃ!」
「ふ、これでついに俺にハサミが装着されるな……」
《徹頭徹尾ハサミのことしか考えてないわね……》
こうして俺たちはミスリルドラゴンを討伐し帰路に就いたのであった。
帰り道の渓谷はもう霧に覆われていなかった。
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